ヨーロッパ・スクリーン・ミュージック | geezenstacの森

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ヨーロッパ・スクリーン・ミュージック

 

曲目

 

 
 国債情報社/CBS/SONY  SONI-95113
 
 
 1970年台前半に出版されたレコード付きの書籍です。ただ、書籍にも関わらず出版年の記載がないという不思議なものになっています。ただ、収録曲とレコードがSX68soundを謳っていることから1971年ではないかと推察されます。18枚組のボックスセットで販売されたものですが、通販専用商品なので書籍ですが一般書店でも発売されていません。

 

 

 18枚のうちの13枚目となるもので、レコードは一枚ですが、書籍として20ページの読み物がついています。ただ、内容的には非常にレアなものを含んでいて、それを知って捕獲したものです。上の曲目の一覧表には曲目の下に演奏者が表記されていますが、このレコードでサントラはわずか2曲です。CBSはあまりサントラに力を入れていなかったことが分かります。しかし、当時ヒットした映画のサントラもキングのように他のアルバムではほとんど転用して使うことがありませんでした。3曲目の「冬のライオン」もしかりで、小生も好きでジョンバリーのアルバムを何枚か所有していますが、自身のオーケストラで演奏したものはありますが、サントラの音源キーは使われていませんでした。そんなことで、このアルバムでオリジナルの音源で聴くことができるのは貴重というわけです。

 

 

 また、コスタ・ガブラスの1969年の「Z」という作品もサントラ以外に転用されることがありませんでした。この映画ではメイン・テーマと愛のテーマがヒットし、ここではその愛のテーマが収録されています。

ただ、ここで演奏されているのは短いバージョンで、ちょっと残念な結果になっています。

 

 

 さて、A面冒頭は当時は頻繁にイージーリスニング系のアルバムを出していたアンドレ・コステラネッツが演奏した「ロメオとジュリエット」ですが、この当時はアメリカ系のイージー・リスニングはパーシー・フェイスやレイ・コニフなども含めて押しなべてヘンリー・マンシーニの真似をしていてことごとくコーラスを含んだ演奏をしています。ここでも、例にもれずコーラス入りの演奏でつまらないアレンジになっています。思うにこのころヨーロッパ系のイージー・リスニングはポール・モーリアを筆頭に華麗なオーケストラ・サウンドをメインにレコーディングしていましたから、日本ではアメリカ系が廃り、ヨーロッパ系が主流に躍り出たと思います。

 

 

さて、このアルバムではイギリスのイージーリスニング系ビッグバンド、アラン・テュー・オーケストラが登場しています。このオーケストラ、1960年代初期は「パイ」レーベルに盛んに録音してました。のちにデッカのフェイズ4からもアルバムを出していますから、その契約の切り替わりの時代にCBSへ録音したものでしょう。リーダーのアラン・テューはキャット・スティーヴンスやダスティ・スプリングフィールド、ホリーズなどのアレンジャーとしても活躍した人物ですが、本国イギリスではライブラリー・ミュージックの作曲家としても有名でした。ライブラリー・ミュージックとは、映画やテレビやラジオなどで使用することを目的とした著作権フリー音楽のことで、イギリスにはKPMやAmphonicなど幾つものライブラリー・ミュージック専門レーベルが存在し、普通のレコードよりもかなり割高な素材集レコードをコンスタントにリリースしていました。これらのレコードは業界人向けに販売されるため一般には流通せず、購入者は収録されている音楽をフリー素材として自由に使うことが出来た。そんな専門レーベルのひとつ、Themes International Musicの専属コンポーザーとして活躍したのがアラン・テューだったのです。

ここでの演奏も、それを踏まえて聞くと面白い仕掛けがあることが分かります。

 

 

もう一つ、ルチアーノ・モナルディ・オーケストラという聞きなれない名前が登場していますが、これはいわゆるスタジオ・ミュージシャンが臨時で集まって録音する団体の一つで、そのサウンドは安っぽくいかにもお手軽録音であることが分かります。小編成で、ギターやトランペットのソロで主旋律を演奏するスタイルです。多分国内のアーティストで、フィルム・スタジオ・オーケストラやスクリーン・ランド・オーケストラ、モーリス・ルクレール・オーケストラと同一のレベルです。

 

 

 玉石混淆のアルバムですが、珍しい音源が含まれているので中古盤探しは止められません。