サンタのおばさん | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

サンタのおばさん
 

著者:東野圭吾
出版:文藝春秋
 


 今年もイヴが近づき、恒例のサンタクロースの集会が開かれる。新しく加わった女性サンタを認めるかどうかで会は大騒ぎになるが…---データベース---
 

 たまに読む作家の一人が東野圭吾です。その彼の本を探していると棚の中にこの本が差し込まれていました。その時ミステリー作家の東野圭吾って絵本も書くのか!!とびっくりして手に取った一冊です。

 

 そもそもサンタクロースの起源は中世キリスト教の聖人の聖ニコラウスから来ているとか。トナカイのそりに赤い衣装の白いあごヒゲを伸ばしたおじいさんのサンタ像は聖ニコラウスがモデルだからこそなんでしょうね。では、このサンタクロースはおじいさんしかなることができないのか? 女の人はサンタにはなれないのでしょうか?

 

 この絵本はクリスマスを前に世界中のサンタが集まるサンタ協会の席でアメリカ支部のサンタが引退することになり、自分の後任として魅力的な女性を連れてきたことから始まります。紹介された他の国のサンタはびっくり仰天。このサンタ協会、全部で12支部あるのですが、アメリカ、カナダ、フランス、イタリア、イギリス、オランダ、ドイツ、ベルギー、フィンランド、そして日本、で、いきなりオセアニアとアフリカとなっています。イスラム教の中東がないのはわかりますが南アメリカがないのはなんか意図があるんでしょうかねぇ?

 

 本作は、小説ではなく絵本ですから深いツッコミはしません。絵は杉田比呂美さんという方が書かれていて、ストーリーを東野氏が手がけた合作です。60ページほどの絵本の中で深く掘り下げられるわけもなく、女性のサンタの存在意義について各国のサンタがさまざまな意見を出し合います。最近では、さまざまな神事に女性の参加の門戸が開かれつつありますが、横綱審議委員の一人に女性を選んでおいて大相撲の土俵に女性があがることができないとかまだまだ不思議な事象は残っています。

 

 それでも短いストーリー展開の中に、サンタクロースの形を借りて男女同権の考えとその現実、価値観の多様性、人種と文化の違い、家族のあり方の変化など今日的な社会問題がわかりやすく語られているのはさすが東野圭吾、と唸らせます。

 

 ただ、女性の子供がサンタさんに母親がなることを応募したというところから話はちょっと展開が違ってきます。この子供の行動に後押しされて、母親は積極的にサンタになろうとしています。そして、クリスマスの日、母親が国中の子供達にプレゼントを配り終わった後、一つの行動に出ます。まあ、これが単なる絵本と違うところなんでしょうけど、仕組まれた企みに子供たちはどう反応したんでしょうかねぇ。