ヨッフム/ロンドン響の「田園」 | geezenstacの森

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ヨッフム/ロンドン響の「田園」

 

曲目/ベートーベン

交響曲 第6番 ヘ長調「田園

1. Allegro Ma Non Troppo - 田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め    11:06

2. Andante Molto Mosso - 小川のほとりの情景    12:39

3. Allegro - 田舎の人々の楽しい集い    6:01

4. Allegro - 雷雨、嵐    4:03

5. Allegretto - 牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち    9:38

 

指揮/オイゲン・ヨッフム  
演奏/ロンドン交響楽団
 

録音/1977/10/06-7 キングスウェイ・ホール ロンドン

P:クリストファー・ビショップ
E:クリストファー・パーカー

 

東芝EMI   EAC60160

 

 

 これは先日捕獲したヨッフムのベートーヴェン交響曲全集の中の一枚です。そして、これはインナースリープのジャケットのデザインです。このポーズのベートーヴェンはお目にかかったことがありません。残念ながらネットで検索してもこのデザインの肖像画はヒットしませんでした。せっかく凝ったインナースリーヴを採用するなら、出典をきっちり明記してもらいたいものです。ピアノの前に佇むベートーヴェンは30代後半のこの曲の作曲時期を反映しており、いつもながらの口はへの字で、眼光の鋭さは変わりません。手の中にはシワになった楽譜が握りしめられており、まさに作曲家としてのベートーヴェンを凛々しく描いています。この交響曲全集は大木正興氏が全体解説を書いていますが、ほとんど意味のないもので、また、おざなりの曲目解説の門馬直美氏とともに無駄な金を使ったものです。ただ、一つ褒められるのは交響曲第9番は余裕のカッティングになっていて3面にゆったりとカッティングされていて第4楽章を単独で鑑賞することができます。

 

 さて、ヨッフムは生涯に3度セッション録音でベートーヴェンの交響曲全集を完成させています。そのなかで、2度目のヨッフムの田園は下記の記事で紹介しています。

 

 

 DGGはベートーヴェンの交響曲全集を最初にヨッフムに託しました。カラヤンではなかったのですなぁ。まあ、カラヤン/ベルリンフィルがDGで録音を始めるのは1950年代末期からですから当然なんでしょうが、この時代DGには駒が不足していたということなんでしょう。1/5/9番はバイエルン放送o.、他がベルリンpo.。4番はベルリンpo.と2回('54年と'61年)録音。7/9番の1952年モノラル録音に始まり、1959年4月の1番で完結しています。ステレオは1/2/4('61年2回目)/5/8番があり、3/4('55年)/6/7/9番はモノラルのみという変則なものです。この時代、ベームとヨッフムは大きくスタイルが異なりどちらかというと低迷していたベームに対して、スケールが大きく聴かせ所を作るヨッフムの方が売れるとDGGは考えたようです。ただ、日本では反対に地味なベームの方が人気ありました。ヨッフムはその後1970年前後にコンセルトヘボウo.とPHILIPS、1970年代後期にロンドンpo.とEMIに2回の全集録音を残し、通算3回の全集録音を行った数少ない指揮者の一人となったのですが、多分違うレーベルで完成させたのはヨッフムが唯一ではないでしょうか。また、全集ではない単独録音は1951年のモノラル5番がPHILIPSにあります。

 

 この「田園」は1977年のステレオ成熟期の録音です。コンセルトヘボウの演奏でも相当ゆっくりしたテンポで始まる冒頭のテーマにはおどろいたものですが、こういうテンポは実はフルトヴェングラーが得意としていたところです。多分最初の録音はヨッフムのそういう特質をDGが見初めて彼にベートーヴェンを託したのではないでしょうか。

 

 ステレオ時代になったからはカラヤンを代表とする早めのテンポを主体とする颯爽とした演奏が主流を占めていきます。ただ、カラヤン全盛の時代にこのような演奏を耳にした小生はヨッフムに強く惹かれたという部分があります。

 

 「田園」の解釈はその付された副題が干渉の参考になるのでしょうが、小生としてはベートーヴェンの心情に与すると、ヨッフムの解釈に同情します。難聴という命題に疲れ果て田舎に戻ったベートーヴェンが、その中で自然の雄大さに心打たれ讃歌として曲を昇華させるという手法は徴収を強く惹きつけたのではないでしょうか。そういう側面でこの「田園」を捉えると今のベートーヴェンの演奏スタイルではこのヨッフムの解釈を継ぐ指揮者は途絶えてしまっているのが残念でならないところです。

 

 従来の大オーケストラによるどっしりとした1980年代までのスタイルは今後どうなっていくんでしょうなぁ。