レコード芸術1974年12月号 2 | geezenstacの森

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レコード芸術

1974年12月号

2

 

   この号の指揮者の特集はシャルル・ミュンシュです。例によって恋石忠雄氏がこの記事を書いています。民主と言う指揮者は、フランスのアルザス地方の出身と言うこともあって、ドイツ国と近く、その地はフランスともドイツともなり得る境界の街だったわけで、ミュンシュはどちらの特性をも持って音楽を体験することができたようです。そのため、ブラームスの交響曲第1番なんかは、素晴らしい骨太の演奏で今も名盤に数えられていますし、洒脱なフランス音楽を振らせても、ミュンシュはそのエスプリの効いた音楽をオーケストラとともに具現化しています。そんな民主の生い立ちと共にボストン交響楽団との長い蜜月の時代を経て、大量の構成に残る名盤を残したのは、時代とオーケストラの相性がマッチしたからでしょう。そういうシャルル・ミュンシュの人となりをここではうまくまとめています。

 

 ミュンシュは早くに亡くなってしまいましたが、小澤征爾が初期に師事したのはこのシャルル・ミュンシュでした。そういう点では、小澤征爾はフランス的なオーケストラの響きとともにボストンと言うオーケストラを得て、重厚なドイツサウンドも具現化できたのではないでしょう。

 

 

 この時代、ビクターレーベルは、新世界レコードに軸足を置き、コロンビアのような世界中の中小レベルを束ねていたレーベルでもありますこのナルシスイベのルバムも、スペインのサフィロというレーベルのボックスです。そして、新世界レーベルからはコンドラシンのショスタコービッチの交響曲全集が着実に発売されていました。

 

 

 ラフマニノフの「晩祷」も、この時代に発売され、話題になったレコードの1枚で何故か記憶に残っています。ペータールーカス・グラーフの一枚も、スイス・イェクリン・レーベルの1枚となっています。

 

 

 ビクターが1番力を入れていたのは、この当時のエテルナと組んだまマズアとげヴァントハウス管のベートーベンの交響曲全集でしょう。ここではCD 4を売り出すのではなく、通常のステレオレコードとして第九と5番をカップリングした2枚組での訴求を表に出しています。下のショルティの第九は長すぎて1曲で2枚組、3,000円でしたから対抗したんですなぁ。

 

 

 このゲヴァントハウス弦楽四重奏団とのベートーベンの弦楽四重奏曲全曲も、東ドイツ・エテルナとの共同企画だったはずです。

 

 

 さて、ページをめくっていくと、キングの広告では、この月アシュケナージの「熱情」がメインとして打ち出されています。このレコードは、この号の裏表紙でも一面で取り上げられているレコードになります。この12月になると、レコードの原料も潤沢に手配できるようになったようで、年末の広告は10ページにわたる打ち出しを行っています。

 

 

 この時代、キングがロンドンレーベルとしてメインでプッシュしていたのはアシュケナージとショルティでした。ショルティについてはオペラも振ることができましたし、オーケストラもシカゴ響を得てレパートリーも充実していました。単発で出していたマーラーの交響曲全集も完成し、この号では「大地の歌」をひっ下げて広告を打ち出しています。

 

 

 その影に隠れて、フィストラーリの「白鳥の湖」の全曲がロンドン響とともに録音したものが発売されています。懐かしい名前ですが、この時代に発売されたんですなぁ。

 

 

 カール・ベームの「ロマンティック」が突如として登場しました。これは大ベストセラーとなるアルバムですが、ベームはドイツグラモフォンとともにデッカにもウィーン・フィルと積極的に録音をしていました。

たらねばですが、デッカのブルックナー全集はいろいろな指揮者でウィーンフィルを使って録音していますが、もしベームでブルックナーの全集が完成していたら、これはこれで素晴らしい後世に残る録音になったのではないでしょうかね。

 

 

 日本ではドラティのハイドンはこのボックスセットの予約販売でしか発売されませんでした。もったいない話です。小生はこんな大金を叩くことはできませんでしたので、ちょうどこの頃始めたイギリスとアメリカからの個人直輸入で5-6枚ずつセットになったものを分配で集めていました。イギリスとアメリカでは仕様が違い、イギリスではハイドン専用のレコード番号を作ってシリーズ化していました。これに対してアメリカではSTSシリーズに紛れ込ませて、こちらも分配と言う形でのセットで発売していました。面白いもので、為替相場によってイギリスものが安かったりアメリカ物が安かったりしたので、小生のコレクションは半々の入り混じった全集になりました。

 

 

 この頃はロンドン・ブラス・アンサンブルシリーズということで、金管合奏のレコードがまとめて発売されていました。

 

 

 ラローチャはRCAの専属だと思っていたのですが、ここではデッカでの録音が来日記念盤として大量に発売されていました。そういえば、デッカには女流ピアニストはこのラローチャしかいなかったような記憶です。

 

 

 この号では、ロンドン不滅の名盤シリーズのMZシリーズが特集され、新譜の発売とともに旧譜もずらっとPRされています。こちらのほうは値上げをしなくてずっと1200円でシリーズ化されていたのがわかります。

 

 また、サイドの記事ですが、ボブ・ジェームズの最初のリーダーアルバムが紹介されています。本来のタイトルは1枚目のアルバムで「ワン」と言うものでしたが、日本では「禿山の一夜」として発売されています。この頃からジャズにはクロスオーバーミュージックが流行し、CTIレーベルが時代に波に乗って大いに売れたものです。

 

 

 そして、年初にエクリプスシリーズを直輸入盤として発売していましたが、好調だと言うことで、ここでもまた直輸入盤を投入し1枚1300円で発売していました。今回のLINEナップを見ると、アンセルメのレコードなどはほぼステレオ録音が投入されており、そういう意味ではかなり目立ったシリーズではなかったでしょうか。ただし、各500枚限定ということで、多分大都市にしか流通しなかったことが窺われます。

 

 

 さて、さて、この月の新父の推薦盤は大量に出現しています。これはレコードの原料事情が改善して発売点数が増えたからとも言えるのでしょう。そんな中で注目は小澤征爾がフィリップスに録音したベートーベンの第九です。この時までに小沢はシカゴ響と第5番しか録音をしていませんでしたから、この第九はうまくいけばベートーベンの全集になったかもしれません。ただ、ベートーベン指揮者としての認識はまだまだだったようで、このレコードは話題にこそなりましたが、セールスにはつながらなかったような気がしています。今では忘れられていますが、ベロフのプロコフィエフのピアノ協奏曲全集、ベートーヴェンのトリプル協奏曲も推薦盤になっています。どちらも式がマズアということが足を引っ張っているのでしょうか。