第89回市民会館名曲シリーズ  シェレンベルガーのグレイト | geezenstacの森

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第89回市民会館名曲シリーズ  マイ・フェイヴァリッツⅣ

シェレンベルガーのグレイト

 

 

プログラム

▊ モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲ハ長調 K.299[オーボエとハープ版]*
▊ シューベルト:交響曲第8番ハ長調 D 944『グレイト』

 

アンコール

シューマン:月夜(リーダークライス 作品39より第5曲)[オーボエとハープ版]

 

ハンスイェルク・シェレンベルガー(指揮,オーボエ*)

マルギット=アナ・シュース(ハープ)*

演奏/名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

 

 近年では指揮者としても大活躍のシェレンベルガー氏と名フィルによるシューベルトの傑作、グレイト。歌曲王として名を馳せたシューベルトでしたが、この大曲により人々の認識を覆しました。そして、今回はオーボエとハープに編曲されたモーツァルトの協奏曲も他では聴けない必聴物です。シュレンベルガー夫妻の共演ということでも興味がありました。シュレンベルガーはメイフィルの白川ホールシリーズでは登場していましたが市民会館で大編成のメイフィルと演奏するのは珍しいのではないでしょうか。

 

 このコンサートは、意気揚々と出かけたのですが、なんとチケットを別のバックに入れていたのを失念し忘れてしまいました。😭会場に着いてそれを知ったのですが、当日チケット売り場でその旨を伝えると、ああ、そうですかと言ってシリーズ券の購入者のリストを当たってくれました。こういうことは日常的にあるようで、小生の前にも2タリほどの再発行チケットがカウンターに置いてありました。こういう時は単発のコンサートでなく、シリーズ券で買ってあると助かるものです。その場でリストを確認し再発行してもらえます。ホッとしてホールに入場するとこの日はなんとロビーでミニコンサートが開催されていました。曲目はドヴォルザーク:弦楽五重奏曲第2番ト長調 作品77~第1楽章で優雅な響きで開演前の時間を過ごすことができました。本当に目の前でのコンサートで生々しい音で聞くことができます。出演は瀬木理央,尾髙詩音里(Vn),小泉理子(Va),幸田有哉(Vc),北島明翔(Cb)のメンバーでコトラバスの北島氏は次週の新人演奏家シリーズのコンサートでも登場するとあって張り切っていました。

 

 

 

 最初の曲はモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」ですが、今回はそれを「オーボエとハープのための協奏曲」にアレンジしての演奏となっています。個人的には、この曲は生で初めて聴くのですが、通常のレコードで聴く演奏とは違い、オーボエの響きがどんなものになるのか興味津々でした。ステージを見てもハープは台の上に乗っていますが、指揮台が見当たりません。シュレンベルガーは指揮をしながらオーボエを吹くということで、指揮台は要らなかったのでしょう。

 

 

  第一楽章から優雅なメロディーが響きます。ハープは中央に鎮座していますから、誠に優雅なメロディーがホールを包みます。そこにややひなびたオーボエの響きがかぶさってきます。フルートのような華やかさはありませんが、しっとりとした響きの中でハープとオーボエが溶け合います。まぁ2人は夫婦ですから、阿吽の呼吸でぴったりとしたハーモニーが導き出されていました。

 

リハーサルの様子

 

 ただ、時々オーケストラの響きの中にオーボエが埋もれてしまって、やや聴き取りにくい点があった事は否めません。そこはよく聴き親しんだ曲ですので、自分の耳で補正しながらこの音楽を楽しみました。1時の間モーツァルトの豊穣な響きがホールに響き渡りました。そして第3楽章が終わると割れんばかりの拍手で演奏を讃えました。そのため、この演奏の後でアンコールが演奏されました。オーケストラは参加せず、2人のハープと、オーボエによる珍しい。シューマンの「月夜」と言う作品が演奏されました。初めて聞く曲ですが、オリジナルは声楽曲ですが、ここでは二人のデュオによる演奏で、普段は聴けない組み合わせとあって随分徳をした気分になりました。

 

 

 後半は、このコンサートの目玉ともなっていたシューベルトの交響曲第8番ザグレートです。主レンベルガーの式で、こういう対局を聴くのは初めてです。最初のモーツァルトは10 8643と言う元の編成でしたが、シューベルトでは10 40 28 7と言う編成に変わっています。ただこれだけ大きな編成にもかかわらず、ティンパニーは古典派時代の二台だけの構成というこじんまりとしたもので、初めて実演を聞くものとしてはびっくりしてしまいました。シュレンベルガーのテンポはいたってゆっくりで、第一楽章から大きな音楽作りを目指していました。ただ、とても現代的な響きで、シューベルト時代のロマンティックな響きは微塵も感じさせず、淡々とした流れの中で、キリッと引き締まった表情で音楽を作っていきます。まぁどちらかと言えば、カラヤンのようなレガートたっぷりな響きではなく、非常に引き締まった響きと言ったら良いでしょうか。しかし、響いてくる音楽は、非常に豊穣な響きを伴っていました。

 

 

 第二楽章は、さらに遅いテンポでゆうゆうたる響きで、音楽が作られていきます。多分今まで聞いた演奏の中で1番遅いテンポではないでしょうか。第一楽章は、今まで聴いた中ではブロムシュテットとNDRの演奏のテンポ、第二楽章はジュリーニ/シカゴ響の演奏のテンポ位の遅さでした。その中で克明にリズムを刻み、音楽を作り上げていきます。もうこれは耳をそば立てて聴き込む以外に方法がありません。シュレンベルガーの一挙手一投足に注目しながら、音楽に耳を傾けました。

 

 

 多分この日の演奏は1時間以上を要したのではないでしょうか。7時45分に開始された演奏は、終了が8時50分近くに及んでいました。シューベルトの交響曲は有名な未完成。そして第5番は頻繁に演奏されますが、ザ・グレートははかなりオーケストラの技量が必要と言うこともあって、アマチュアではほとんど取り上げられていません。多分プロのオーケストラとしても、ここ最近演奏されたことがなかったのではないでしょうか。それもあり、この日の演奏会はほぼ満席の状況の盛況でした。小生が1番興味を引いたのは、第4楽章のコーダの処理です。ここが指揮者の解釈の分かれ目で、最後の音符ついたアクセント記号がしばしばデクレッシェンドと解釈されることもあるからですが、ショルティあたりはここはそのデクレッシェンドの処理をして消えるような終わり方をしています。今日のシュレンベルガーは、盛大にアクセント記号の解釈で盛り上げていました。それにしても、最近の演奏は最後皆上げ弓で終了します。なんか、この流れは「のだめカンタービレ」でスターライトオケが派手に上げ弓で終了してからの流れのような気がします。まぁ個人的にはこちらの終わり方の方が曲にふさわしいと思っていますので、この日の演奏は大満足のうちに帰路につくことができました。