レコード芸術1974年3月号 3 | geezenstacの森

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レコード芸術1974年3月号 

3

 

 

 この号ではモノーラルの歴史的名盤の数々を黒田恭一氏の記事で紹介しています。ただ、この小文の趣旨は、「モノーラルで揃える入門者向けレコード・ライブラリー」という内容になっています。そういう視点で門馬氏は交響曲から声楽曲までをリストアップしています。モノーラルに限定していますからある程度評価の固まっている名盤が当然ながら登場していてあまり目新しさがありません。個人的にはこういうリストはレコードの歴史に詳しい岡俊雄しが適任だったのかなぁと思いますかが、オーディオにも詳しい岡氏ですから彼はモノラルレコードの再生の手引きの記事の紹介にまわっています。

 

 その後にはレコ芸の執筆陣によるモノーラルとステレオによる比較で名盤を紹介しています。

 

 

 ベートーヴェンの「運命」は時期的に本来はステレオで収録されていてもおかしくないシューリヒト/パリ音楽院管弦楽団と当時の最新版ブーレーズ/フィルハーモニア管弦楽団盤を比較しています。記事によるとこのシューリヒト版はかなり独自に改定された版によって早めの店舗で演奏されています。肩や、ブーレーズは第3楽章の繰り返しで話題になった演奏ですが、第1楽章の異様に遅いテンポの演奏も聞き所になっています。

 

 

 今の人はアンゲルブレシュトなんていう指揮者は知らないかと思いますが、、1880年9月17日、パリ生れ。父はパリ・オペラ座のヴァイオリン奏者、母もピアノとヴァイオリンの演奏家という環境で、7歳からパリ音楽院でヴァイオリンと作曲を学んでいます。揮活動は、1905年、25歳の時から開始。1908年にはフローラン・シュミット;「サロメの悲劇」を初演したほか、ラヴェルやルーセル等、新しい音楽を手がけています。一般にはドビュッシーのスペシャリストとして知られています。ラヴエルと同時代に活躍した指揮者ということでは歴史的価値があり、アバド版は主兵とは違うボストン響との録音という意味でも面白いものがあります。

 

 

 クライスラーのヴァイオリンによる演奏ということでSPからの復刻というのがわかります。19世紀的演奏と20世紀的演奏という比較ですが、なぜパールマンの演奏が選ばれているのかは疑問の残るところです。まあ、最新版を取り上げているのでしょうが、記事を書いている宇野氏も戸惑っている様子が窺い知れます。

 

 

 そういう意味では、このカザルスとシュタルケルの比較も同様に西村氏も戸惑っています。

 

 

 コルトー74歳アシュケナージは35歳の録音ということで倍以上の開きがあります。片や古淡の境地、片や伸び盛りのエネルギーにあふれた演奏。なにか比較の対象が違うなぁと感じてしまいます。

 

 

 ギーゼキングVSベロフ、この比較での解釈の違いに切り込んでいる武田氏の語り口は納得できます。

 

 

 ここで論陣を張っている鈴木共子氏の「ヴァイオリンのうまい人はバッハが下手なのだ」という引用は納得できるものがあります。ジョルジュ・エネスコは個人的には作曲家と認識していますが、ヴァイオリニストとしては認識していません。反対にヨゼフ・スークはヴァイオリンの名手としては認識していますが、彼の弾くバッハが名演かと言われればはてなマークがつきます。

 

 

 ルービンシュタイン、ハイフェッツ、フォイアマンというモノーラル時代の黄金トリオは小生はよく知らないし、時代的にはこういう曲はバレンボイム、ズーカーマン、デュプレで親しんだ世代なのでベートーヴェンが41歳の時に書いた「大公」は27歳のバレンボイム、21歳のズーカーマン、24歳のデュプレの若々しい解釈に魅了されます。個人的にハイフェッツがあまり好きでないという先入観もありますけどね。

 

 

 カラヤンとトスカニーニによる演奏の比較ではトスカニーニの後継者を標榜していたカラヤンだけにスタイルは似ているでしょう。そういう意味では、モノラル時代のトスカニーニの録音がフルトヴェングラー並の人気にならないのはカラヤンが次々とステレオ録音を発売してトスカニーニを隅に追いやってしまったせいなのではと個人的には思ってしまいます。きびきびとしたテンポ設定と暗譜で指揮をするスタイルはトスカニーニそのものだし、フルトヴェングラーがどちらかといえば独欧の作曲家中心のレパートリーであったのに比べてカラヤンはオールマイティ的にトスカニーニをカバーしています。まあ、ここでは三谷氏が新しもの嫌いということもありトスカニーニに軍配を上げています。

 

 

 

 キリスト教音楽にはほとんど関心がないので、ここは記事をじっくりと読むだけにします。