41歳からのクラシック | geezenstacの森

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41歳からのクラシック


著者:みつとも俊郎
出版:新潮社 新潮選書

 

 

 そろそろクラシックを聴きたいのだけれど、何から聴けばいいんだろう? ロック好きには『ボレロ』、ジャズファンにはグレゴリオ聖歌、ポップス派には『G線上のアリア』、演歌派は『白鳥の湖』。本書は、好みの音楽からクラシックの世界にすんなりと入っていけます。さまざまなジャンルの音楽的特性を明らかにし、クラシック音楽の中から、いわばその「仲間」を紹介する全く新しい形の入門書です。---データベース---

 

 この本はあえて41歳からのクラシックと言うタイトルになっていますが、クラシック以外のジャンルの音楽を聴いていた人がどういう風にしたらクラシックに親しめるだろうかと言う視点から書かれています。この切り口は、ちょっと個人的には衝撃でした。

 小生は普段から音楽を区別なく聴いています。これは多分映画が好きだったと言うこともあり、その背景に流れる音楽がクラシックに限らず、どんな音楽も流れているからでしょう。サントラ盤を収集していたのもそのおかげだとと思います。ということで、ジャンルにこだわらず、音楽は聴いています。まあ、映画音楽のバックには、ジャズやポップスナンバー、民族音楽、フォーク、ロックなどあらゆる音楽が使われています。もちろんクラシックも含まれていますが、それらの音楽をシームレスに聴くことができるのも、この映画からの体験でしょう。
このブログを見てくれている人たちは、クラシックに限らず、あらゆるジャンルの音楽を扱っているのがわかってもらえるのではないでしょうか。

 ただ、普段ポップスを聞いている人は、クラシックの敷居はやはりかなり高いんでしょう。ただそういう人に向けてこの本がジャンル別にどういう曲がオススメなのかということを解説しています。章立ては以下のようになっています。

 

目次

クラシック音楽って何だろう
ロックンロールが好きな人へ
メタル系ロック・ファンへ
プログレ系ロック・ファンへ
ポップスが好きな人へ
ジャズが好きな人へ
ラテン系ダンス音楽ファンへ
フォーク系音楽ファンへ
演歌の大好きなあなたへ
Jポップ・ファンへ
アニメ、ゲーム音楽好きへ
ルーツ音楽、ワールドミュージック・ファンへ

 

 小生も70の声を聞き人生の終わりを意識しつつある現在、性向はかなり変化してきています。このブログを始めるまでは花には全く興味がなく、野に咲く花の名前もほとんど知りませんでしたし、また絵画についても著名な作者の第費用作くらいは知っていましたが別に展覧会に出かけるほど没入したこともありませんでした。ただ、人生で初めて転職を経験した後、今までのがむしゃらな生き方にちょっと立ち止まり視点を変えることができたこときっかけで、大きく世界観は変わりました。小生の場合音楽はいつも生活のベースになっていましたからこういう気づきはありませんでしたが、明らかに変化しました。

 

 この本の序章で、こんなことが書かれています。

“どんな人も、歳をとると明らかに、体の中の時間がゆったり流れ、若いときには、興味のなかった事物に、意識を向けざるを得なくなってくる。陶芸、盆栽、園芸、畑仕事、写経、神社仏閣巡り。こうしたものに共通している事は、そこにざわしい時間の流れがないことだ。言ってみれば、いつまでたっても急がせない価値がある。”

 

 ジャズやロックにしても、音楽としてはたかだか100年位の歴史です。しかしクラシックは数千年の長い歴史の中で生き残ってきた音楽です。やはり普遍的な価値があるのでしょう。それに気がつくターニングポイントが中年と言われる40代からなのでしょう。第1章の「ロックンロールが、好きな人へ」では、サティーの「ジムノペディ第1番」、パッヘルベルの「カノン」、ラベルの「ボレロ」、ベートーベンの「交響曲第5番」がピックアップされています。また、第3章のプログレ系ロックファンへ」は、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」、ストラヴィンスキーのバレー「春の祭典」が紹介されています。それらの音楽をひもとくにあたって、ロックファンには1つの明確な傾向があり、かっこいいことにこだわる人間だと言うステータスがあります。

 

 この本が面白いのはそれらの傾向を音楽理論の中に落とし込んで解説、分析していることです。なるほど、そういうことなのかと今更ながら膝を打って納得している自分がそこにいます。

 

 

 さて、この本はCDとも連携していて、2007年にEMIから2枚組で収録曲集が発売されました。