いちご白書 不完全なサントラ | geezenstacの森

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不完全なサントラ

いちご白書

 

曲目/

  1. 「サークル・ゲーム」/バフィ・セント=メリー 2:50
  2. 「Market Basket」/イアン・フリーベアン=スミス& MGMスタジオ・オーケストラ 1:53
  3. 「ダウン・バイ・ザ・リヴァー」/ニール・ヤング 9:13
  4. 「ロング・タイム・ゴーン」/クロスビー、スティルス&ナッシュ 4:19
  5. 「Cyclatron」/イアン・フリーベアン=スミス & MGMスタジオ・オーケストラ 3:14
  6. 「革命ロック (Something In The Air)」/サンダークラップ・ニューマン 3:58
  7. 「ツァラトストラはかく語りき」カール・ベーム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1:14
  8. 「ローナー」/ニール・ヤング 3:51
  9. 「Coit Tower」/イアン・フリーベアン=スミス & MGMスタジオ・オーケストラ 3:32
  10. 「フィッシン・ブルース/レッド・マウンテン・ジャグ・バンド」 1:53
  11. マルチェッロ「協奏曲二短調」/イアン・フリーベアン=スミス & MGMスタジオ・オーケストラ 5:08
  12. クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング「ヘルプレス」 3:36
  13. 「『いちご白書』のテーマ (Pocket Band)」/イアン・フリーベアン=スミス & MGMスタジオ・オーケストラ 3:32
  14. 「平和を我等に」/キャスト 1:42
  • サントラ盤未収録の主な挿入歌
    • クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング「僕達の家」
    • クロスビー、スティルス&ナッシュ「組曲: 青い眼のジュディ」
 

東芝EMI TOCP6233


 もともと日本では興行的に大ヒットというワケではなかった作品です。1970年のヒット作品は「ひまわり」やら「チップス先生さようなら」、「クリスマスツリー」などで、一番ヒットしたのは「賊・猿の惑星」でした。かといって若者から支持されていなかったかというとまったく違います。当時の映画雑誌「スクリーン」では、映画ファンが選ぶ年間作品賞部門では堂々2位!になっています。1位は『明日に向かって撃て』は別格にしても、3位『ひまわり』4位『イージー・ライダー』より上位だったのですから、幅広く超えた目をもつ映画ファン、音楽層からは確実に支持を得ていたということになります。ヒットした「Circle Game,サークル・ゲーム 」で馬フィー・セントメリー」は一躍時の人になりました。彼女はその後、「ソルジャー・ブルー」というキュンディス・バーゲン主演の映画でも主題歌を歌っていました。


 ここで取り上げているのはアメリカン・ニューシネマの傑作『いちご白書』のサントラです。まさに時代を移したサントラで、バフィー・セント・マリー、ニール・ヤング、クロスビー・スティルス&ナッシュ、サンダークラップ・ニューマンなどの代表曲を収録しています。
選曲が泣かせ、映画及び時代の雰囲気を音楽で満喫させてくれます。そして、この作品にはR.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」やマルチェッロのオーボエ協奏曲をギターにアレンジした作品まで使われていて幅広い音楽が使われていることがわかります。


 バフィー・セント・メリーが歌う主題歌「サークル・ゲーム」はジョニ・ミッチェルが大学の同窓生ニール・ヤングのために贈った曲です。そのバフィ・セント・マリーはアメリカ原住民(インディアン)の血を引くカナダ人で、ベトナム反戦やアメリカ原住民解放運動に熱心だったため、アメリカ合衆国政府の要注意人物リストに載り、実際に当局の弾圧を受けたそうで、「いちご白書」の主題歌の歌い手としてこれ以上の適材はいないでしょう。ヒットしたのにも理由があるのです。

 

 ところでこのサントラレコード時代とは収録曲が違います。そして、本国アメリカではMGMレコードから発売され、その他の国では当時の発売窓口ワーナー・パイオニアの「リプリーズ」レーベルで発売されています。いろいろ権利関係が複雑だったことが原因しています。
ニール・ヤングやクロスビー・スティルス&ナッシュの曲が収録されているのは「いかにも」ですが、選曲のセンスが光るのはサンダークラップ・ニューマン(Thunderclap Newman)の大名曲「Something In The Air」を収録しているところでしょう。
また、本作が一筋縄でいかないところは、クラシックの『ツァラトストラはかく語りき』や、5度繰り返される珠玉のメロディーのテーマ曲『いちご白書のテーマ』の効果的な使われ方、そしてエンディングのレノン=マッカートニー作曲の「平和を我等に」の迫力と悲しみ……といったアルバムとしての構成の見事さにも顕著です。単なるサントラではなく、一つのトータル・アルバムとして聴かれるべき名作だと思います。

 

 

 学園紛争ものの映画ですが、男と女の恋愛的要素も含んでいて、ノンポリの主人公サイモンとリンダの出会いのシーンはなかなか印象的です。当時は主人公そっちのけでリンダ役のキム・ダービーにはまっていました。1968年にジョン・ウェインと共演した「勇気ある追跡」で一目惚れしまいました。主演を張る女優ではなく、脇できっちり存在感を示しています。

 

 

 レコード時代は大した収録曲数ではなかったのに、2枚組でそれなりの価格で発売されていたので我慢していました。まぁそんな不思議な発売のされ方をしていたなんて知りませんでしたからねぇ。

 

リプリーズから発売されていたサントラ

『いちご白書』サントラレコードの見開き部分

 

サントラCDには収録されていないCSN&Yの「僕の家」

 

 

  公開から5年。75年に爆発的ヒットになったのが、荒井由実作詞作曲。バンバンが歌った「いちご白書をもう一度」…逆にこの曲で「いちご白書」の存在を知ったという人も多かったでしょう。これは日本だけの現象ですが、忘れ去られていた映画が、ここでもう一度息を吹き返したのです。ただ、リバイバル上映されたと言う記憶はありません。個人的にはその曲に思い入れはありませんが、日本の若者はフラッシュバック的にこの映画を思い出したことでしょう。

 

映画のラストシーン

 

 1975年にはベトナム戦争も終焉。体制側が強くなったとき、物事は過去になっていました。小生はかろうじて学園紛争に遭遇していました。通学した大学では、革マル派の旗がはためいていて、過激な立て看板大学のあちこちに掲げられていました。そういう光景を目の当たりにしていますから、この映画は目に焼き付いています。



『いちご白書』Trailer セピア色の光景とサークル・ゲーム。時代へタイムスリップ。

 

 名作なのに、テレビで放送されたのは1回だけのような気がしますし、LDやビデオで発売されたことはありますが、国内でDVDで発売された記憶はありません。幻に近い映画といってもいいでしょう。