星町の物語 | geezenstacの森

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星町の物語

著者:太田忠司

出版:株式会社 理論社

 

 

 ぼくのおとうさんはロボットです。だからぼく、「PLAY」ボタンを押してみたんだ。そしたら、なんと…。星町で暮らす人々のおかしくて奇妙な日常。ファンタスティックなショートショート集。イラストマップとあわせて星町の日常を覗いてみれば、楽しさも倍増。---データベース---

 

 小生の中学、高校時代は星新一氏の全盛期でした。なことで、学校の域帰りのバスの中では氏のショート、ショートの文庫本を読み漁りました。2013年に新潮社から発売された補遺のような「つぎはぎプラネット」も読んでいますから、多分ショート・ショートは全部読んだつもりです。そのショート・ショートの世界から巣立ってきたのがこの太田忠司氏です。ですから、この本は出発点に立ち返った太田忠司氏を見ることができます。

 

 この本はすでに文庫化されていて、そちらには「奇妙で不思議な40の風景」というサブタイトルが付いています。星町はごく普通ののどかな町。でも、よく目をこらしてみると、不思議なことが起きている。この町には十六年間も地震がないし、前に何があったか思い出せない空き地がある。サラリーマンが謎の猛獣に襲われる事件は未解決のまま。そして猫はたくさんいるのに、犬の散歩をしている人は見かけない…? 可笑しくてほろ苦くて、ちょっぴり怖い、星新一氏を敬愛する著者が贈る珠玉のショートショート集。わずか数ページの物語に、果てしない驚きと、ほんのりした温かさが詰まってます。

 

 

 そしてこれが目次です。星町の一丁目から4丁目までが10本前後のストーリーでまとめられています。いゃあ、短いの短いの。ほんとに星真一のショートショートを思わせるわずか2ページ足らずの行数で物語が展開していきます。冒頭の一丁目の「距離」なんで1ページ半です。でも、その中にちゃんと起承転結が存在します。最後のオチがまたなんとも言えません。星町には鉄道の駅が描かれていませんから、多分隣町まで歩いて行っているのでしょうか。ホームで向き合う彼と彼女ですが、実は登場人物は3人いるという設定です。場面展開は次の一言で表しています。「でもそれは・・・」この一言で場面転換が終わり、登場人物が3人であることがわかるのです。まさに、星新一氏の作品の展開に似ています。

 

 この星町には猫がたくさん登場しますが、犬は一匹も登場しないという不思議な街です。そして、町中の猫たちは集ってちゃんと会議を開催しています。タイトルの頭に番号が降ってありますからその物語がどこの出来事とかは一目瞭然でわかります。宇宙人もUFOも虹を売ったりする人も登場しますし、2丁目だけ地震が発生します。街は結構近代的でロボットも活躍しています。そして、有効期限の切れた薬を飲んだがために大変な人生を送ることになる人や、「聞こえない」では文章の一部が真っ白になっていて、話がどう繋がっているか全くわからないストーリーもあります。筆談という方法もありますが、聞こえないことを文字で表すとこういう空白だらけのストーリーになってしまうんでしょうなぁ。

 

 とにかく、この星町は不思議がいっぱいの街なのです。ちょっと散歩に出かけるのも楽しそうです。