レコード芸術
1974年2月号 4
この月東芝EMIは一番広告を出稿していて普段と変わりありません。トップはマルティノンの幻想交響曲です。この月の交響曲部門の推薦盤になっています。でも、今ではマルティノンの幻想と言われてもピンときません。ただ、この演奏コルネットが追加された版を採用していました。ただ、これを評する大木正興氏はそういうことに一切触れないでいました。本当にこの曲を聴いていたのでしょうかねぇ。
珍しい、フィッシャー・ディスカウが指揮したシューベルトがこの時発売されています。話題性を狙ったのでしょうが大木氏はレコード会の話題作りの産物と切り捨てています。
それよりびっくりしたのはこの月からウェストミンスターがキングから東芝に発売権が移っていたことです。これはウェストミンスターがABCダンヒルに買収されたからで、ダンヒルを発売していた東芝が自動的に発売権を獲得したと言った方がいいでしょう。
オイロディスク経由でコロムビアはザンデルリングに力を入れ始めました。この時期ザンデルリングはシベリウスの交響曲全集を録音していましたからその第1弾ということでしょうか。第3、第5から発売するとはちょいと意外でした。
そのコロムビアはこの年の9月までが「エラート」の契約期間ということで最後の売り込みをかけています。この年の10月からはRCAに発売権が移ります。パイヤールの「水上の音楽」は1968年の2回目の録音です。
テイチクから発売されていたハルモニアムンディ盤のサンプラーがこの時登場しています。店頭販売ではなく郵送による頒布という形が取られました。「ハルモニアムンディの魅力」と題されたもので当時バロック音楽に興味を持っていたので早速購入したのを覚えています。まだ、手元にあるはずですが行方不明です。
さて、この月のレコ芸の本来の役割である新譜月評です。この年から選者の一部入れ替えがあり大御所の村田武雄氏は引退しています。以前は縦書きであった推薦盤一覧も横向きの記載になり見易くなっています。ただ替わったことで、交響曲担当の大木氏は最初から失態を演じてしまいました。1月号の推薦盤から交響曲が抜けてしまったんですな。今月号で追加されています。
ずっとシリーズで続いている「世界の指揮者」は今月号はクナッパーツブッシュです。世間の評判はいいようですが、小生は彼のレコードを聴いてもほとんど感動することができなかったので「ウィーンの休日」以降は購入をやめました。
もう一つのシリーズものは今回はバロック音楽の月評を担当していた服部幸三氏の登場です。2種類の装置を駆使して月表を担当していたんですなぁ。そのうち応接間のセットにはテープデッキも置かれています。リールがセットされているところから普段でもデッキでテープ音源も聴いておられたのでしょう。4チャンネルにこだわらなかったのは氏の見識でしょう。それにしても、レコードよりも本の方が多いというのは月評担当者に共通しています。