レコード芸術 1974年2月号 3 | geezenstacの森

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レコード芸術

1974年2月号 3

 

 

 この号の裏表紙です。キングはマゼールの「展覧会の絵」を持ってきています。このレコードは中広告でも同様な扱いです。

 

 

 ただし、この曲だけでは片面しかありません。そう、もう片面にはプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番が収録されているのですが全く無視されています。ピアニストはイスラエラ・マルガリートですが全く無視されています。まあ、マゼールのファンなら知っていると思いますが、この人物実はマゼールの奥様です。要するに夫婦共演盤なんですがキングは全くそのことに触れていませんし、広告ではこの曲の存在を無視して「展覧会の絵」だけをプッシュしています。

 

 

 中広告のトップはフランス・ブリュッヘンを取り上げています。彼の「涙のパヴァーヌ」は無茶苦茶注目されましたからねぇ。テレフンケンからはこの時3枚のアルバムがプッシュされています。これですっかりブロックフレー手の名手というイメージがついたのでのちに彼が指揮者としてかつゆくする姿はどうしてもイメージできなかった記憶があります。

 

 

 あとはグラビアでも取り上げられていたマリナーの「調和の幻想」が発売されています。ところがトップでは2月10日発売と打ち出していますが、レコード番号のところには2月1日発売と記載されています。製造現場の混乱がこういう広告にも現れています。さて、後の広告は既存の発売品を取り上げているに過ぎません。これはどのメーカーにも言えることで、この月の新譜は第1回目で取り上げたオイルショックの影響がまともに出ています。

 

 その最たる例はグラモフォンでしょう。トップページはお詫びとおことわりからは吸っています。新譜に関しては全てドイツ本国からの輸入に切り替えるという告知です。

 

 

 航空便で取り寄せそれから日本語解説書を付けてから発売というプロセスを取りますから、どのレコードが最初に入荷してくるかもままならない状況に追いやられています。まあ、クラシックファンからすれば本場のレコードが同じ値段で供給されるので願ったり叶ったりなんですけどね。で、グラモフォンも後のページは既発売品の紹介でお茶を濁しています。

 

 当時の売れ筋はやはりカラヤンとベームであったことがこれでわかります。

 

 

 RCAは広告で価格改定をしっかり告知しています。しかし、自分の購入台帳によるともう年末の段階で1000円版は1300円に上がっていたことが確認できます。

 

 

 以前取り上げた、1973年9月号では2000円で発売されていたソニーの「クラシック入門シリーズ」は2400円でしらっと広告を打っています。

 

 

 発売点数は減っていますが、ソニーは独自の4チャンネルすしテムを推進していましたから躍起になってアピールしています。でも、能登時はすでに発売されていましたから後追いの広告です。本来なら下の中村紘子の新譜をプッシュすべきなんでしょうが、如何せんこちらは4チャンネル収録ではないということでサブ扱いです。

 

 

 ニューヨークフィルは71年からブーレーズがシェフを務めていましたが国内では新譜もこんな扱いでした。びっくりしたのはオーマンディのブラ1がこの時新譜として初発売されていたのです。この録音は1968年に行われたものですが、RCAに移籍していたのでCBSソニーはオーマンディには冷たかったのでしょうなぁ。

 

 

 ハイティンクはこの年コンセルトヘボウを率いて来日しています。そこで打ち出されたのはブラ1でした。さっぱり人気の出ないハイティンクにフィリップスは躍起でした。ここでもハイティンクのパイロット盤を投入してアピールしています。

 

 

 この年の大阪国際フェスティヴァル」の目玉はこのハイティンク/コンセルトヘボウでした。ここは新譜と共に公園曲目を前面に打ち出してもよかったのかなと思ってしまいます。

 

 

 フィリップスは早々とグロリアのパイロットシリーズの打ち出しをしていましたが、2月新譜は1300円での打ち出しとなってしまいました。

 

 

 ところでこんな広告を見つけました。ベームのリングですが、この広告の左上にびっくりするような文字があります。

 

 

 いわゆる特典レコードですが、何とワーグナーの自作自演があるというのです。ほんまかいな?と調べてみたらとんでもない代物でした。この広告に騙されて、ベームのリングを買った人は飛んだ偽物をつかまされたわけです。

大半は大ワーグナーの息子ジークフリートの指揮によるワーグナーの管弦楽曲集が収録されているんですが、たった1つだけ奇妙な代物が…それが

 

「トリスタンとイゾルデ」より愛の二重唱(ライブ)

トリスタン…アルベルト・ニーマン

イゾルデ…アマーリエ・マテルナ

ブランゲーネ…マリアンネ・ブラント

 

バイロイト祝祭管弦楽団

リヒャルト・ワーグナー指揮

1880年頃の録音とあるんですなぁ。しかし、丹念に調べてみると

・開発して数年後のエジソンのシリンダー式蓄音機で、これだけの音が拾えたのか?
・大ワーグナー生前のバイロイトでは「トリスタン」は上演されてない

のですなぁ。で、肝心の正解は…

トリスタン…ゲオルク・アンテス(1863-1923)
イゾルデ…リリアン・ノルディカ(1857-1914)
ブランゲーネ…エルネスティーネ・シューマン=ハインク(1861-1936)
アルフレート・ヘルツ指揮、メトロポリタン歌劇場の1903年のライブ

ということがわかっています。とんだお騒がせな告知でした。