懐かしのレコード芸術 1973年9月号 その6 | geezenstacの森

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懐かしのレコード芸術

1973年9月号 その6

 

 9月号の最後です。技術力のあるソニーは「SX74SOUND」を打ち出してきました。この号のロンドンの裏表紙ではキングはまだ、SX68を謳っています。4chも独自の方式を打ち出してのソニーがノイマンの最新のカッティングヘッドを取り入れたのはさすがです。ただ、この月は4点、次月も4点のみの発売ということではまだ本格的に量産できる体制ではなかったのでしょう。アンソニー・ニューマンはデビュー2作目で、一応古楽器での演奏によるブランデンブルク協奏曲と謳っています。まあ、4ch録音盤という触れ込みでしたがほとんど話題にならなかったという記憶です。

 

 

 

 2度目の来日となるワッツの来日記念盤と変わり種の録音となるグールドのグリーグとビゼー、さらにはのちにソニーの社長となる大賀典雄氏がバリトンで参加しているフォーレのレクイエムです。ここでもSX74の文字が踊りますがグールドだけは蚊帳の外です。

 

 

 

 早速ブーレーズ/ニューヨークフィルのバルトークが登場しています。ジャケットがまた4chの生み出す音声をイメージしています。

 

 

 

 

 多分、これがこういうオムニバスの始まりだったのではないでしょうか。左右両開きの告知で大々的に展開しています。2枚組2.000円いうことで、ちゃんと1000円盤の範疇に収めています。ただ、こういうものには手を出しませんでしたので売れたかどうかは知りません。

 

 

 

 

 ベスト100が終了したので「エリートクラシック」としてシリーズ化しています。そして、ここでもサンプラーレコードの配布ということで音のカタログの頒布を実施しています。

 

 

 最後のページでは、この月の目玉として「ワルター不滅の1000」の告知です。モノラル時代の名盤を投入しています。多分ファンにはこたえられないリリースだったのでしょうが、アメリカの廉価盤「オデッセイ」レーベルではすでにステレオ録音も投入されていて、それを所有していましたから個人的には何をいまさら…という感覚で全く見向きもしませんでした。こちらも音のカタログのサンプラーを作成しています。よほど売れたんでしょうなぁ。

 

 

 さて、フィリップスはちょっと奇抜な横向きの「イ・ムジチ」の広告を打ちました。この年も来日したようで須賀、時代はすでにアーヨからミケルッチに代わっていました。その端境期ということで旧譜の羅列に終わっています。

 

 ただ、1000円盤では気を吐いています。実は当時はこの広告は見ていません。オーディオメーカーの広告の中に埋もれてしまっていました。ですから「グロリア・パイロット・イレブン」とか「パイロット・セブン」、パイロット・ファイブ」といわれても全くピンときません。しかし、最下段のフルトヴェングラーの1000円盤が発売されたのは知っていました。このシリーズで発売された「英雄」は幻だったウラニア盤の復活でした。ただ、アメリカではターンナバウトがすでにリリースしていて、小生はそちらを持っていましたから、購入に悩んだものでした。

 

 

 この月から「音楽と音と再生装置」という読み物が始まりました。第1回はレコ芸の巻頭言も書いている重鎮の村田武雄氏でした。マンションの13階に住んでいたということで両側にはレコード棚ならぬ本棚が配置されこの部屋でレコード評を書いていたことになります。写真を見た限りはユニットステレオ装置ではなさそうです。

 

ベランダ越しにリビングルームがあるようです

 

 一応DC4CHANNELも再生できる構成になっていたようです。手前が書斎スペースです。メインのスピーカーはダイヤトーンの2S305、カートリッジはビクターの楕円針の4MD-1X、ターンテーブルはマグネフロート製、アンプはビクターのMCA-V9、それにリアスピーカーが名機SX-3という構成です。

 

 当時、村田氏はNHKで長く「音楽の泉」という番組を担当していて、そこで再生される音とあまり隔たりがないようにと、このシステムを選択したと述べています。

 

 

 この当時東芝EMIは低迷していたように思います。この月の新譜の目玉はプレヴィンの「運命」でしたが、くだんの村田氏は無印で紹介しています。まあ、世の中の評価もそんなようで、プレヴィンはベートーヴェンの交響曲全集を完成できませんでしたからねぇ。

 

 

 東芝も展開が終了したベスト100ものの告知でお茶を濁しています。

 

 

 日本でのカラス人気にあやかってカラスのオペラ物を一斉に再発売してしています。

 

 

 クレンペラーはすでに物故していて、この年末に最後のリリースとなるジークフリートの第一幕が発売されることになっています。