第88回市民会館名曲シリーズ
下野竜也のブリティッシュ
プログラム
▊ フィンジ:前奏曲ヘ短調 作品25
▊ ブリテン:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 作品15*
▊ ホルスト:組曲『惑星』 作品32プログラム
(指揮)下野竜也
(ヴァイオリン)三浦文彰*
(演奏)名古屋フィルハーモニー交響楽団
※『惑星』の女声合唱はシンセサイザー使用
3日の文化の日はイベントがいろいろかさなってしまい、コンサートの会場についたのは開園5分前というあわただしさでした。この日は開園前にロビーでプレコンサートがあったようなのですが、当然それは聞くことができませんでした。( ;∀;)演奏されたのはこれもディーリアス:弦楽四重奏曲ホ短調より第3楽章「去りゆくつばめ」ということでイギリスものでした。
このロビーコンサートも含めて当日はオールイギリスプログラムでした。最初のフィンジの「前奏曲ヘ短調OP.25」は弦楽合奏のための作品で1929年に完成されたものです。ステージは今日の「惑星」に合わせた大編成の作りになっているので、弦の走者が前の方で演奏するさみしい構成でした。まあ、初めて耳にする作品で、曲想からして静謐な秋の空気が漂うような曲でしたから演出は合っていたのでしょう。曲としては5分程の作品でした。
前半2曲目はブリテンのヴァイオリン協奏曲でした。個人的にはジャニーヌ・ヤンセンの演奏で親しんでいるのですが、実演を聴くと全く印象が異なりました。第1楽章はモデラート・コン・モート。ティンパニで、ごくひそやかに始まります。しかし、雰囲気はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の出だしとは全く雰囲気が違います。やがて1939年という作曲当時の風潮だったのか、プロコフィエフなどとも共通するモダンな響きの音楽に変わっていき、ヴァイオリンがヴィルティオーソのテクニックを十分に披露する華やかなメロディに彩られていきます。
印象的なのは第2楽章:ヴィヴァーチェ〜カデンツァ。活発で、様々な奏法を試み、表現力豊かな音楽になっています。グリッサンドというのか、カデンツァでのキュウゥ〜と下降する表現などは、圧倒的テクニックで乗り切ります。第3楽章:パッサカリア、アンダンテ・レント(ウン・ポコ・メノ・モッソ)〜ラルガメンテ(レント)〜レント・エ・ソレンネ。この、「ウン・ポコ・メノ・モッソ」という語感がなんとも笑い出しそうですが、どうやら「少しテンポを遅くして」という意味らしい。「ラルガメンテ」は「豊かに」で、「レント・エ・ソレンネ」は「遅く、そして荘厳に」というような意味でしょうか。なるほど、演奏を聴くとこのような指示の意味がわかります。特に、曲全体の終わり方が。三浦氏の演奏はまだ30歳ではあるもののどことなく老齢な雰囲気が漂っていてこの曲の持つクールでかつ知的な響きを余すところなく表現していました。
左から下野竜也、三浦文彰、コンマスの山本友重
当日の編成表、第1ヴァイオリンが7プルトって凄くありません?
後半の舞台転換では指揮者の目の前にチェレスタとその両脇にハープが分かれて置かれるという変わった配置でした。それに加えてステージ幹すそには電子オルガンが配されていました。まさにステージがオーケストラで埋め尽くされるという感覚の演奏会でした。多分愛知県芸術劇場のコンサートホールでは乗り切れなかったのではないでしょうか。ましてや、この編成でも女性コーラスのスペースはなく、今回はシンセサイザーで代用されていました。
リハーサル風景
ちなみに作品自体も、火星・金星・水星/木星/土星・天王星・海王星と、木星を中心にシンメトリックな構成で演奏します。そうなんです。1曲1曲細切れでなく、最初は火星・金星・水星とひとまとめに続けて演奏されました。こうすることで曲全体が緩急のバランスの取れた構成になり改めて惑星という曲が立体的に見えてくるから不思議なものです。
音楽プラザでのリハーサル風景
オルガンはこの位置で演奏していました
リハーサルはシンセサイザーの女声コーラスとのバランスの確認ということで海王星から始まったそうですが、その海王星、全く違和感がありませんでした。まあ、いわばオルガンも電子オルガンで、火星のバックでオルガンが響いていることを実演でも確認することができました。
今回のコンサートでびっくりしたのはホール入り口に張り出してあったお知らせです。そこにはこんな文面が書かれていました。
◆全曲終演後のみ
◆写真撮影のみ(動画は禁止)
◆スマートフォンで(望遠レンズ付きカメラや三脚・自撮り棒は禁止)
◆フラッシュ無し
◆自席に着席のまま
◆他のお客さまの映り込みにご注意
要するに終演後は写真撮影OKということなのです。こういう告知は初めてだったのでびっくりです。最近は、アマチュアのコンサートでも写真撮影していると注意がありますが、確かに終演後は「演奏中」ではありませんからねぇ。これはブログで取り上げやすくなったというものです。
で、下が客席から移した終演後の写真です。客席もほぼ満席の盛況でした。