昭和のレコードデザイン集 | geezenstacの森

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昭和のレコードデザイン集

 

著者:山口 佳宏 (編著),鈴木 啓之 (編著)

出版:スペースシャワーネットワーク

 

 

 昭和のレコード・カヴァーが満載! 現代の視点から、秀逸でユニークなデザインのレコードジャケットを、タイポグラフィ、小色刷り、構図といったカテゴリーを設け、選りすぐって収録する。---データベース---

 

 楽しい可愛い懐かしいエロい。いろいろてんこ盛り。昭和を彩る国産のたレコードジャケットを取り上げています。色刷りのジャケなんて今でも十分通用するデザインだしカッコいいと思ったジャケのミュージシャンを見れば後のビッグネームだったりするし、ジャケ違いでレコード作ってたのは今も昔も一緒だったし、全裸だの半裸だのおねいさんジャケ見てると「バカレコ」のみうらじゅん目線になっちゃうし。あと、ステレオの試聴用レコード。そんなものがまとまってはいますが全体としては雑然とした感があります。

 

 これは昭和の国内盤レコードのデザイン集なのだから仕方ないのかもしれませんが、資料的価値はほとんどないですね。せめて品番とかリリース年月くらいは記載が欲しかったですし、個人的には昭和のこういうレコードはジャケ裏の解説が、特に海外は情報量の少ない中、半分妄想で書いていたようなところが、とても面白いので、そういう特集ページも欲しかったですなぁ。そんなこの本の章立てです。

 

目次

タイポグラフィ
少色刷り
構図
ダンス
女性
子ども
イラストレーション
日本
クリスマス

 

 オールカラー。およそ220ページにわたって、SP盤末期ぐらいから、だいたい大阪万博のあたりまでの日本盤レコードのデザインを、ジャケットを中心に、袋や帯などにもスポットをあてている一冊。国産のレコードに絞っていますからそういう点でも外国のレコードとは一味違います。ジャケットにはあまり金をかけないということで編み出された日本独自に発達した芸術です。何しろ色数は少なめで、ジャケットのバックは単色で刷るという手法が採られています。この本の欠点としては45回転のシングルも331/3回転のLPも同じ土俵で紹介しているのでその違いが分かりにくいことです。

 

 

 

 

 

コラージュ風のジャケット

 

ジャケット表裏使って縦長にデザインしたLP

 

大阪万博のレコード、音楽だけでなく音ならなんでもレコードにしていました

 

童謡はピクチャーレコードが使われたものもありました

 

国産のLPレコードには全て帯がついていました。日本独自のものです。

 

シングルは中袋は派手なデザインが多かったようです。中が見えるように穴が空いているものが多いのも特徴です

 


 そのレコードがヒットしたかどうか、あるいは有名盤かどうかにはあまりこだわらないセレクトがなされているので、逆に結果としてそういったレコードのジャケットが出てくると「おっ……!」という軽い驚きを覚えたりもする。主に60年代末までのアートワークには、限られた条件の中で十二分に工夫を凝らし、レコード店の店頭を飾った当時のクリエイターの方々の心意気が感じられます。


 何にしても、これら大量のジャケットたちを中古レコード屋さんで「見る」、といっても、通常そう長い時間は見ていられないわけで、それをじっくりと、心ゆくまで眺められるというのはレコードファンにはたまりません。ただ、小生は国内盤はあまり興味がなかったのでほとんど手元にはありません。反対にそれだからこそ、昭和の匂いがぷんぷんするこれらのジャケットはノスタルジックで楽しめます。


 よく古いのにこんなに美麗なジャケットが残っていたものです。それには感心します。その懐かしさや資料的価値は大変高いと思いますが、解説がもう少し詳しいともっと理解が深まると思います。レコードのアーティストは紹介されていますが、当時のレコード番号だとか発売年月日というデータは全く掲載されていないので時系列は不明ですし、またジャンル分け(分類)も必ずしも統一が取れているわけでもありません。

 

 また、同じレコードでもA面とB面を入れ替えて発売されていたものとか、事情により発売禁止になったものとか切り口はいろいろあると思います。そこら辺の深みがないという点もこの本の至らないところで、制作意図がしっかりと定まっていなくて、あまり注目もされなかったのではないでしょうか。
 

 クラシックやジャズでは体系的に紹介されている本が出ていますが、日本のポップスものに絞って取り上げられている点は評価できますが、内容が薄いのは如何ともし難い欠点です。これをベースにもっとしっかりした童謡の書が出版されることを期待します。