アレクサンダー・ギブソン
シベリウス交響曲第3、7番
曲目/シベリウス
交響曲第3番ハ長調 Op.52
交響曲第7番ハ長調 Op.105
指揮/アレクサンダー・ギブソン
演奏/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
録音/1965 ウェーバリー、イギリス
P:マイケル・ウィリアムソン
SAGA 5284
実はこのレコードは2011年に一度取り上げています。それが下記の記事です。
この時はこの録音が1972年と紹介していますが、その後の調べでこれは1965年の録音だということがわかりました。また、元々はSAGAの録音ではなく、Associated Recordings Companyの制作によるものだったようです。だ、手元にあるのは1974年に再発売されたものということで、番号は変えずに発売されています。
このSAGAレコード、1960年に設立された英国の中堅レーベルで、現在も存続しています。あまり日本では馴染みがありませんが、チェロのシュタルケル、クラリネットのケルといった重要な録音を一本買してレコードリリースしていたようです。ポピュラー音楽が主な分野ですが、クラシック音楽の廉価レーベルも多く出ています。同じくクラシック音楽のレーベルで、ジャケットが美しいことで知られるハイペリオン社(The Hyperion Records)の創業者であるテッド・ペリー氏(Ted Perry)も一時期経営に参加していたようで、クラシックのアルバムはビジネスマンとしての手腕も知られたペリー氏の功績が多かったものと推測されます。
面白いのはレコードのプレスがわざわざ「Oxford University Press」と表記していることで、これにはびっくりです。オックスフォードにはレコードをプレスする組織体があったということなんでしょうかねぇ。ま、それはともかく、このギブソンの初期のシベリウスは日本には発売窓口がなかったということで全く知られていませんが、イギリス国内では注目されていた演奏で当時の「ペンギン・ガイドブック」にもディヴィスのろくおんにも勝るとも劣らない演奏だと評価されています。じっさい、小生も前の記事でも書いている通りこのギブソンの演奏で交響曲第3番に目覚めました。この演奏は今持ってCD化されていないようで、下は盤起こしの音源でアップされています。それを聞いてもわかりますが、このSAGAのレコードは盤自体の品質があまり良くありません。でも、演奏は素晴らしいものです。
アナログ時代はこのギブソンのシベリウスはレーベルを跨いで発売されていましたから全集として纏まった形では録音されていません。それがあまり注目されなかった理由でもあるのでしょう。ところがデジタル時代になって、シャンドスから一気に交響曲全集が発売されました。下はその全集からの第3番の演奏です。
ただ、個人的にはちよっとゴツゴツとした感じの初期の録音の方が肌にあいます。新録音は洗練された表現でオーケストラの技術的には上なんでしょうが手作りの音楽感が亡くなってしまっているのが残念です。こういう演奏なら、他にいろいろ聴くことができますからねぇ。
さて、併録されているのは最後の交響曲第7万です。もはや交響曲というよりは交響詩と言ってもいい作品で単一楽章で描かれています。そんなことで、表現的にも幻想的な雰囲気を残している作品で、以前の感想ではムードミュージックのような演奏と書いていますが、今回改めて聴いてみると交響詩として捉えるとなかなか全体にバランスの取れた演奏ということができます。改めて調べて分かったことはここでトロンボーンを吹いているのは当時の主席奏者のケヴィン・トンプソンでこの一連のシベリウスの録音で、当時の英グラモフォン誌では高い評価を受けていました。彼は1953年からSNOで活躍していましたが1960年からはBBCスコットランド交響楽団に一時在籍し、録音当時は主席としてSNOに戻ってきていました。卓越したトロンボーンの音色でこの曲の幻想的な雰囲気に貢献しています。