愛知工業大学管弦楽団第26回定期演奏会 | geezenstacの森

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愛知工業大学管弦楽団

第26回定期演奏会 

 

 プログラム

シベリウス カレリア序曲
サン=サーンス アルジェリア組曲
ニールセン 交響曲第2番「四つの気質」
アンコール
ニールセン アラジン組曲より「祝祭行進曲 」
 
指揮/ 中村暢宏
演奏/愛知工業大学管弦楽団
 

2023年09月24日(日)

開演 17:30

会場:愛知県芸術劇場コンサートホール

 
 9月24日は愛知県芸術劇場コンサートホールで開催された「愛知工業大学管弦楽団第26回定期演奏会 」へ出掛けてきました。最近はまたぞろコロナに罹る人が増えてますが、第5類になったということで、いろいろなコンサートが復活しています。そんな中では当たり障りのないチャイコフスキーやブラームスは飽きてしまいます。今回は珍しいプログラムということで足を運びました。多分この5、6年でニールセンがプログラムに乗るのは初めてではないでしょうか。こういうコンサートなら聴きがいがあるというものです。
 
 前半はシベリウスの「カレリア序曲」で幕を開けました。カレリアといえば一般には組曲の方が有名で序曲も演奏機会はそんなに無いでしょう。序曲が作品10、組曲が作品11と双子の作品です。この序曲、途中に組曲の間奏曲で知られるテーマが現れるのでカレリアの音楽だとわかる程度です。演奏は1曲目ということでちょっとテンポが遅めの安全運転で、躍動感が不足していたのが残念でした。これぐらいのテンポが良かったかな。

 

 

 2曲目のサン・サーンスの「アルジェリア」組曲も珍しいっちゃあ珍しい選曲です。普通の大学オケではなかなか取り上げることはないでしょう。ただ、愛知工業大学はその下部に「愛工大名電」という野球の名門校であり、吹奏楽でも名門校で2018年にはウィーン楽友協会で公演し、CDも発売しています。つまりこのオケのブラスセクションは技術レベルが高いことを意味しています。

 

 さて、このアルジェリア組曲は次の4曲でできています。

第1曲 前奏曲:アルジェを目指して (ハ長調)

第2曲 ムーア風狂詩曲 (ニ長調)

第3曲 夕べの幻想:ブリダにて (イ長調)

第4曲 フランス軍隊行進曲 (ハ長調)

 

 この中で多分第4曲の「フランス軍隊行進曲」が一番知られているでしょう。そして、この曲は吹奏楽にも編曲されていますから多分演奏は慣れていたのではないでしょうか。3曲目でヴィオラのソロが入るのですが、このソロがちょいと音程がずれていて、いい心持ちで眠りにつこうとしていたのですが、思わず目が覚めてしまいました。このオケの弱点はこの弦楽セクションなんですが、それがソロ部分でちょっと露呈してしまいました。今回の編成は弦楽セクションだけで50名以上管楽セクションと合わせると70名以上の編成です。中村氏の指揮は、もう少し遊びもほしい所ですが、いつもの通り楷書できっちりと描かれます。

 

 後半はプログラムの目玉、ニールセンの交響曲第2番「四つの気質」が演奏されました。今回のメインですが、この作品シベリウスの交響曲第2番と同じ年に作曲されていますが、作風は全く違います。シベリウスのように親しみやすいメロディが無く、ちよっと小難しい音楽になっています。というのも、各楽章に標題音楽のようなテーマがついていることがこの曲の特色と言えるでしょう。その、「四つの気質」という標題がついていることがこの曲を非常にユニークなものにしているといえます。この発想はニールセンが田舎の居酒屋で壁にかかっていたコミカルな絵を目撃したことによります。その絵は4部からなり、人間の4つの気質、すなわち胆汁質、粘液質、憂鬱質、多血質の人間をそれぞれ描いていました。この分類は古代ギリシャのヒポクラテスやガレノスに由来し、血液型発見以前はこの分類が西洋では一般的通念であったことが知られています。これらの絵に描かれている人間の気質、性格への興味が作曲のきっかけになったのですが、単なる描写音楽では無く、曲は伝統的な交響曲の形式で手堅く書かれています。

 

第1楽章 アレグロ・コッレーリコ(胆汁質)

第2楽章 アレグロ・コーモド・エ・フレンマーティコ(粘液質)

第3楽章 アンダンテ・マリンコーリコ(憂鬱質)

第4楽章 アレグロ・サングイーネオ(多血質)

 

 多分この曲は一回聴いただけでは理解できないのではないでしょうか。小生もニールセンの交響曲は全集を2種類所有していますが、このブログで取り上げたのはベルグルンドの指揮で交響曲第3番と第4番だけです。この第2番も聴いているのですが、自分の中で消化できていないので取り上げるのを躊躇っていました。今回生で聴くことによって、曲の組み立てと音の掛け合いがよく理解できました。

 

 こちらがこの曲の編成ですが、ホルンが左に独立して陣取っています。曲を聴けばホルンが大活躍するのが聴き取れます。その割に他の金管の編成が弱いような気がします。この公演でもやけにホルンの響きが目立ちトランペットやトロンボーンの響きが霞んでしまっていました。指揮者がこういう演出を狙ったかどうかはわかりませんが、面白い演奏であったことは間違いありませんでした。終演後の演奏者を讃えるパフォーマンスでもホルンセクションを第一にたたえていました。

 

 

 アンコールもニールセンのアラジン組曲から「祝祭行進曲 」という曲がチョイスされました。これは初めて聴く曲でしたが、なかなか面白い曲でした。大きい編成でのアンコールにはもってこいの曲で、今後この行進曲をアンコールピースで使う団体が増えるんではないでしょうか。

 

 ともかく、ここ最近のコンサートでは一番注目の演奏会でした。