アブラヴァネル/4チャンネル時代のグリーグ | geezenstacの森

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アブラヴァネル

4チャンネル時代のグリーグ

 

曲目/

通りゆく婚礼の行列 作品19 3:29

交響的舞曲 作品64 26:48

十字軍の兵士シグール 作品56 15:18

2つの悲しき旋律 作品34(「胸の痛手」「過ぎた春」) 7:46
ホルベアの時代から 作品40 17:33

叙情組曲 作品54 16:53

ペール・ギュント 第1組曲 作品46 12:26
ペール・ギュント 第2組曲 作品55 15:56
演奏会用序曲 「秋に」 作品11 10:26

古いノルウェーのメロディと変奏 作品51 22:16
山の夕暮れ(ゆりかごにて) 作品68-4&5 6:17


指揮/モーリス・アブラヴァネル

演奏/ユタ交響楽団

 

録音1975/05  モルモン教大聖堂 ソルトレイクシティ

 

VOX VOXBOX QSVBX 5140

 


 

 こちらが初出のアブラヴァネル/ユタ交響楽団の「グリーグ管弦楽曲集」です。これは右上に第1集と書かれていますが、第2集もありました。手元にあるのはVOXのVOXBOXシリーズの中の人組です。1970年代はVOXは元気でこういう3枚組のボックスセットをどんどん発売していました。一番記憶に残っているのはマルティノンの指揮したブロコフィエフの交響曲全集でしょう。こちらは日本コロムビアから発売されました。6枚組で12,000円で発売され、高いとびっくりしたものです。まあ、当時はリアルタイムではVOXは新譜ではレギュラー価格が当たり前だったんですなぁ。ところで、このアブラヴァネルのグリーグは二ワンでは単発で一枚づつこれもレギュラー価格で発売されました。こちらはパイオニアが発売していたんです。どうも、1970年台の中頃に発売窓口が日本コロムビアからパイオニアに移ったようです。

 

 ということで3枚組のボックスでの発売は本家のアメリカだけでした。この時代個人でアメリカから直輸入でこうにュゥしていたものの一つです。で、この時代本家は4チャンネル録音版として発売しています。レコード番号の頭にQがつくものがそれです。ジャケットの下に「QS QUADRAPHONOC STEREO COMPATIBLE」と記載があります。ただし、日本盤で発売された時はそういう表記はありませんでした。そういう意味でもこのアメリカ盤のボックスセットは貴重です。何せすぐにブームが去って廃れてしまいましたからねぇ。QSマトリックスは擬似4チャンネルでも再生でき、当時は長岡鉄男氏のスピーカーマトリックスで十分楽しめました。

 

 さて、このレコードです。こちらではまず「ペールギュント第2組曲」を聴いてみましょうか。しかし、VOXの6枚のLPに収容するという企画のために「ペール・ギュント」が本来の全曲収録とならなかったことは残念なことです。

 

 

 

 

 

 こちらも第1組曲と同様けっして洗練された響きや緻密なアンサンブルではありませんが元々戯曲として作曲されていますから多少薄っぺらい響きの演奏の方が曲のイメージとしてはあっています。「交響的舞曲」は、剽軽な旋律がとても楽しく、シミジミと懐かしい歌に溢れます。まるで交響曲のような4楽章の体裁を取りつつ、その実、お伽噺のようなローカルな旋律が次々と登場して楽しい27分あまりの作品です。まあ、カラヤンのようにガチガチに重厚な響きで固めた演奏よりもこれぐらい緩い方がほのぼのとします。

 

 弦楽合奏作品の「ホルベアの時代」も緩い演奏です。弦の響きも薄くアンサンブルに緻密さは足りないけど、清涼感があるし、ココロが揺れるような切なさも、ユーモアもちゃんと存在します。このローカル色は捨て難いものがあります。

 

 

 

 

 

 

 続いて取り上げるのはバーバーのアダージョに匹敵するのではないかと個人的には思う「2つの悲しき旋律」です。弦楽合奏の作品ですが、切々と歌って聴き手に涙を誘う誠実さはあるけれど弦が薄いのが難点ていえば難点です。「十字軍の兵士シグール」は「王宮にて」、間奏曲「ボルグヒル(ボリヒル?)の夢」「凱旋行進曲」の3曲からなっていて、劇音楽なんでしょうか。 最初の2曲は様子がよくわからない演奏だけれど、「凱旋行進曲(勝利の行進曲)」は勇壮で良く歌う、華やかで堂々たる音楽に仕上がっています。

 

 

 序曲「秋に」は、少々大仰なる出足からはじまる劇的な作品であります。響きが濁る(とくに弦)ことと、全体にまとまり、見通しが少々悪い演奏だけれど、フル・オーケストラの豪華な響きが楽しめました。なかなか、グリーグの作品はコンサートで取り上げられることが少ないですが、こうして聴くといい曲がたくさんあります。

 

 

 この時代になって、アナログのオリジナルのレコードをまた擬似4チャンネルで聴くことになるとは…世の中何が起こるのか先が読めません。