プラハ弦楽四重奏団 アナログ期の「アメリカ」と「死と乙女」 | geezenstacの森

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プラハ弦楽四重奏団 

「アメリカ」と「死と乙女」

 

曲目

ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第12番ヘ長調Op.96「アメリカ」    

1.第1楽章 7:12

2.第2楽章 8:38

3.第3楽章 3:45

4.第4楽章 5:57

シューベルト/弦楽四重奏曲ニ短調「死と乙女」D810    

5.第1楽章 11:43

6.第2楽章 14:39

7.第3楽章 3:52

8.第4楽章 9:31

 

演奏/プラハ弦楽四重奏団

 

録音1967*,1979** ジシコフ・スタジオ プラハ

SUPRAPHON 28C37-38

 

 

 懐かしいCDです。ともにプラハ弦楽四重奏団が残したスプラフォンへの録音です。ドヴォルザークはこの後グラモフォンへ全集録音していますし、コロムビアには1973年にPCM録音もしていますし、1996年の来日の折には「アメリカ」とシューベルトの「死と乙女」をキングに録音しています。

 

 このCDはCDの生産が軌道に乗ってきた1984年に発売されたコロムビアの「エクセレント50」という当時としては初めてのミッドプライスのCDのシリーズでした。これが売れたのでしょう、この後各社が2800円で旧譜のCDを発売しだしました。ライナーノートはドヴォルザークを佐川吉男氏が、シューベルトを門馬直美氏が書いていて、編成替えのCDであることが伺えます。また、当時はまだCDの発売点数も少ない時代を反映して日本語、英語、ドイツ語、フランス語の4カ国語で記載されています。

 

 1957年にプラハ交響楽団の首席奏者たちが結成したプラハ四重奏団は、お国物の他にも、ハイドンやボロディンといったウィーン古典派やロシア物の分野でも数多くの名盤を残しているが今ではほとんどが廃盤になっています。オーケストラものに比べてやはり売れないんだろうなぁ。

 

このCDの演奏は「アメリカ」が

 第1ヴァイオリン/ブジェティスラフ・ノヴォトニー

 第2ヴァイオリン/カレル・プジビル

 ウィオラ/ヤロスラフ・カルロフスキー

 チェロ/ズデニェク・コニーチェク

「死と乙女」の方は

 第1ヴァイオリン/ブジェティスラフ・ノヴォトニー

 第2ヴァイオリン/カレル・プジビル

 ウィオラ/ルボミール・マリー

 チェロ/ヤン・シルツ

となっていていずれも初代のメンバーではありません。しかし、堅実な演奏で小生のライブラリーの中でも頻繁に聴くディスクになっています。

 

 「アメリカ」のタイトルはドヴォルザーク本人が付けたものではなくアメリカで作曲した2番目の作品と楽譜に記されていた事によるそうですが、標題があることによっての親しみやすさはこの曲でも然りです。小生も、弦楽四重奏曲で初めて買ったのがやはりスメタナ四重奏団のこの「アメリカ」でした。

 ヴァイオリンのトレモロの上をヴィオラの音による主題で開始される「アメリカ」の冒頭は、スメタナQのようなきりっと引き締まった表現ではないですがよく主題が歌い各楽器のバランスも良好です。スプラフォンの録音はオンマイクで各楽器の音をしっかりと拾っており何時もながら安心して聴いていられます。こういう音で聴くと巷で話題のハーゲンQなんぞの演奏はウォームトーン過ぎてやや物足りなく感じてしまいます。

 

 第2楽章は切々としたアダージョが繰り広げられ、コニーチェクの渋いチェロに魅了されます。一転、第3楽章はヴィヴァーチェによる快活な演奏でヴィオラの響きが印象的です。第4楽章も快演で各楽器が対等に鳴っているので主旋律以外の旋律もくっきりと浮かび上がり絶妙のハーモニーです。この演奏を聴いていると弦楽四重奏がまるでオーケストラのサウンドのように聴こえることがあり、最小のオーケストラと評されることに納得してしまいます。

 

 

 2曲目の「死と乙女」(このCDでは「死と少女」となっている)79年の録音だが音の鮮度はあまり変わりません。むしろ響きとしてはシューベルトの方が硬質に感じられ曲のイメージからするとやや違和感を感じざるを得ません。このシューベルトはスプラフォンのスタジオで収録されていますが、ドヴォルザークは不明です。多分録音会場の違いが響にも影響しているのでしょう。しかし、ロマン性溢れる抒情が乏しいとしてもこの曲の持つテーマの劇性は余すところ無く表現されているので息苦しいほどのドラマティックな展開を見せています。演奏は精緻を極めたものですが第1ヴァイオリンがぐいぐい引っ張るというものでなく全員のアンサンブルで聴かせる演奏になっていて好感が持てます。巷ではあまり評判になっていないようですが一聴の価値はありではないでしょうか。