前橋汀子のメンデルスゾーン、チャイコフスキー | geezenstacの森

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前橋汀子のメンデルスゾーン、チャイコフスキー

 

曲目/

チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35

1. Allegro Moderato Assai    18:15

2. Canzonetta Andante    6:57

3. Finale: Allegro Vivacissimo    10:20

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64*

1. Allegro Molto Appassionato    13:46

2. Andante    8:52

3. Allegretto Non Troppo - Allegro Molto Vivace    6:41

 

ヴァイオリン/前橋汀子 

指揮/クリストフ・エッシェンバッハ 

演奏/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

 

録音/1980/08/30,31*  

   1980/09/3.4   トーンハレ、チューリッヒ

P:渡部幸代

E:羽田健一

 

CBS SONY 32DC298

 

  メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はベートーヴェンの交響曲3番の次に購入したものです。その当時は3大ヴァイオリン協奏曲とか、バイオリニストが誰とか全く無知の状態でした。そういう状況の中で初めて購入したのはミシェル・オークレールのもので、テンポも含めて演奏の良し悪しは別として、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はこういう曲なんだと知りましたから、この演奏がディフェクトスタンダードになりました。

 

 1960年代後半から70年代にかけてはこの前橋さんや海野義男氏が大活躍していました。そんな中、前橋汀子さんはコンサートに通うようになって初めて出会ったヴァイオリニストでした。多少線は細かったのですが、よくとおる音色でベートーヴェンやチャイコフスキーの協奏曲を弾いていました。ただ、どういうわけか実演でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は聴いたことがありませんでした。そう、後でしったのですが、このメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は三大協奏曲には含まれていなかったんですなぁ。

 

 で、この前橋汀子氏の弾くメンチャイのアルバムが発売されると興味を持って即買いしました。何しろ小品集はありましたが、本格的な協奏曲の録音はほとんどなかったからです。調べてみるとレコード時代に学研の教育雑誌「ミュージック・エコー」の付録に朝比奈隆/大阪フィルとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を1972年1月に録音しています。ただ、この付録17cmLPだったようでまあ、見かけることはほとんどないでしょう。ちなみにこの雑誌の付録にベートーヴェンの交響曲第5番があり、のちに学研から前週としても発売されていますが、朝比奈のベートーヴェンの交響曲全集の第1号になります。また、シベリウスやブルッフの協奏曲も録音しているようですが廃盤状態です。かろうじてベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲はまだカタログに残っていますが、ほとんど話題にはなっていないのではないでしょうか。

 

 タイトル的にはチャイコフスキーが先に収録されています。でも録音順ではメンデルスゾーンの方が先なんですなぁ。なんでこういう収録になったんでしょうか。思うに演奏の出来の順なんでしょう。第1楽章序奏が始まると綺麗な音響にまず魅せられます。そこに仄かに情念を湛えたヴァイオリンが入ってきます。最近は若手がどんどんとコンクールに入賞して登場してきますが、録音当時40歳だった前橋汀子はそれこそ堂々とした風格でオーケストラと対等に渡り合っています。カデンツァも緻密にして流麗で音が荒れてないところがいい点です。そういう意味では聴いていて裏切られない安定したチャイコフスキーです。

 

 第2楽章も適度なロマンが漂います。心が籠っているが歌い方に品があるアンダンテになっています。若手の模範となる演奏といってもいいでしょう。若い頃はシゲティやミルシテインに師事していましたがどちらかというとミルシテインの響きにに似ています。そして、終楽章はオケとのバトルで揺るぎないテンポで堂々と渡り合います。強奏でも音が荒れることなく存在感をアピールしています。

 

 ということでは安心して聴いていられる演奏です。

 

 

 最初聴いた時、指揮者がエッシェンバッハだということを知りやや訝しく思ったものです。経歴にはあまり出てきませんが、このエッシェンバッハは70年代から指揮者としても活躍していて、このチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団では1982年から1986年の4年間主席指揮者として活躍していました。前任はアルブレヒトでしたが1980年に退いていますから実質的に1980-82年もエッシェンバッハが客演として登壇していたのでしょう。

 

 そのエッシェンバッハとの初の手合わせは実はメンデルスゾーンだったというわけです。個人的に第1楽章からちょっと付いていけない演奏でした。まず、テンポがゆっくりすぎて付いていけません。これが指揮者のテンポなのがそれストのテンポなのか分かりません。購入当時はこのメンデルスゾーンの演奏にがっかりして、このCDはお蔵入りになってしまいました。今回、棚の奥からこのCDが出てきたので取り上げているわけですが、ネットで検索してもチャイコフスキーのヴァィオリン協奏曲は上がっていますが、メンデルスゾーンは探しても影も形もありませんでした。こんな大御所なのにどうしたことなんでしょうなぁ。まあ、多分小生と同じ感想を抱くリスナーが多かったのでしょう。収録順も逆になっているところは多分上記のような理由なのではないでしょうか。ちなみに、テンポ以外にもエッシェンバッハとの呼吸もあっていない部分が散見されます。その辺りは聴いてみてご判断ください。