音楽を楽しむ会
5分で聴くクラシック名曲集+α④
この催しは豊明市図書館の企画なんですが、図書館の改修工事のため先月から場所を豊明市共生交流プラザ「カラット」に場所を移して継続されています。
ここは令和3年3月に閉校となった唐竹小学校の跡施設を整備し、複合施設として生まれ変わったものです。校舎をそのまま利用していますから北館と南館、そして体育館で構成されています。今回のコンサートはこの北館の4階のラウンジで開催されました。
このラウンジスペースに再生システムを持ち込んでの開催です。オーディオを聞く会ではないのでこれで十分です。アンプは多分5、6万円クラスのAVアンプ、スピーカーはオンキョーのブックシェルフ型の小型スピーカーにツィーターを載せています。そして、DVDプレーヤーもパイオニアの普及型DV2020でしょう。我が家もメインはこのプレーヤーです。これで十分です。
実際にはアンプは裏向きにして司会者がセッティングしやすいようにして使用します。ただ、トラブルがあったようでCDを再生すると右のスピーカーは鳴るのですが左はモニターから音が出ていたようです。急遽、前半のプログラムはモニターの電源を落として再生で対応したようです。
この日の会の曲目解説は会のMCのネコパパさんが自身のブログで記されているので、ここでは重複は避けますが、NHKの「名曲アルバム」の音源は今となっては非常に貴重なものです。5分間に纏めてあるということで、編曲されているものがほとんどです。その編曲の妙を楽しむのもこの演奏の楽しみです。
1 乙女の祈り(バダジェフスカ)
北川暁子(P)
冒頭の「乙女の祈り」は、原曲としては3分から4分の演奏時間ですが、ここでは5分近い演奏になっています。非常にゆっくりという演奏です。1978年から続いている番組ですからでに50年近い時が流れています。名前ネットで検索するとこの北川さんまだまだお元気でピアノ教室で若者を指導しています。
「乙女の祈り」はポーランドの作曲家、テクラ・バダジェフスカ の作品で、日本だけで特に知られているようです。ラン・ランも録音していますがそれでも4:31ほどの演奏時間です。
2 ディヴェルティメント第17番~メヌエットK334(モーツァルト)
大町陽一郎指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
大町陽一郎は懐かしい名前です。音楽を聴き始めた頃、ポータブルプレーヤーでレコードならぬそのシートを聴いていたのですが、その当時名曲アルバム企画のものにこの大町陽一郎氏が頻繁に登場していたのです。多分、日本人指揮者で最初に知った人物だったといえます。1980年2月、日本人として初めてウィーン国立歌劇場に登場し、1982年から1984年までウィーン国立歌劇場の専属指揮者として活躍しました。こういう音源が名曲アルバムに残っているとは知りませんでした。下は4:46の演奏ですからこんなテンポでした。
3 エリーゼのために(ベートーヴェン)
神谷郁代(P) 小泉ひろし指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
3分ほどのピアノ曲ですが、ここではオーケストラも加わって5分の曲に編曲されていました。そのため遅いというよりはやたらリピートが多かった演奏です。この名曲アルバム、本来は演奏者と共に編曲者もきちっとクレジットされた方がいいような内容になっています。ここでピアノを弾いていた神谷郁代さんは2021年10月6日に亡くなっています。1960年代は宮沢明子、、中村紘子、田中希代子らと共に活躍していました。彼女もそのシートにたくさん録音を残していたアーティストです。こういう音源は、どうなってしまったんでしょうなぁ。指揮の小泉ひろし氏も最近は名前を聞かなくなってしまいました。小泉和裕氏とはちがいまっせ。
小泉ひろし
4 ハンガリー狂詩曲第2番(リスト)
小松一彦指揮 NHK交響楽団
リストの中では一番有名な狂詩曲ですね。カラヤンも得意としていました。10分以上の曲ですからこの編曲はダイジェストになってしまいます。ここでも有名な旋律を中心に後半中心のアレンジになっていました。華やかですからねぇ。指揮の小松一彦氏は2013年に亡くなっていますが、どちらかというとアニメ畑で名を残しています。交響詩『ウルトラマン』『ウルトラセブン』、『機動戦士ガンダムΖΖ』のサウンドトラックや、すぎやまこういち作曲の交響曲『イデオン』、『ドラゴンクエストシリーズ』など、アニメ・ゲーム音楽の分野にも録音を残しています。どうも先に取り上げた大友直人氏はこの路線を引き継いでいるようなところがありますなぁ。
5 弦楽四重奏曲「アメリカ」(ドヴォルザーク)
田中千香士クワルテット(チェロ徳永兼一郎)
「新世界から」とワンセットで括られる『弦楽四重奏曲第12番ヘ長調』作品96「アメリカ」ですが、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲ではダントツに有名な作品です。そして、ここでも郷愁を誘う第2楽章が演奏されています。田中千香士氏はNHK交響楽団のコンサートマスターを長く勤めた人で、海野義雄氏が贈収賄事件で失脚してからその跡を継いだ印象があります。彼の姉が上に挙げた悲劇のピアニストの田中希代子です。ここでも、8分余りの曲を5分弱に圧縮しています。
6 ホラ・スタカート(ディニク)
小林研一郎指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
コバケンがこんな曲を録音していたとは知りませんでした。元々はヴァイオリン曲でポップスの世界でもマントヴァーニヤパーシー・フェイスが録音を残しています。もともと2分半ほどの曲ですが、5分への水増しはちよっと無理があったのか、コバケンらしさはあまり感じられませんでした。コバケンも最近は体力的にきついのか毎年大晦日に行われている、ベートーヴェンの全交響曲連続演奏会を最近は降りています。この2年ぐらいは広上淳一氏が跡を継いでいます。
7 チゴイネルワイゼン(サラサーテ)
徳永二男(Vn) 外山雄三指揮 NHK交響楽団
徳永二男しもN響でコンマスを務めたヴァィオリニストです。この曲も長いのでどんな編曲を施しているのか注意して聞いていましたが、何と一番華やかな第3部をバッサリカットしていました。一番びっくりした今回の演奏でした。式をしている外山雄三氏はこの7月11日に亡くなっています。名フィルや愛知県芸術大学に縁のあった人で親しみがありました。
8 トッカータとフーガニ短調(バッハ/ストコフスキー編曲)
レオポルド・ストコフスキー指揮 フイラデルフイア管弦楽団Ⓡ1933
手元にもありますが、音楽と映像とが絶妙な1940年のディズニーの映画「ファンタジア」の冒頭で、指揮者のストコフスキー自身が登場し、演奏を繰り広げたことで一躍有名になった「トッカータとフーガ」です。トッカータはイタリア語の動詞トッカーレ(触れる)からできた言葉で、オルガンなどの調子を見る「試し弾き」という意味だそうで、以前、サンサーンスの交響曲第3番の演奏会の折、オルガニストがこのトッカータとフガを何と全曲演奏してくれたことがありますが、これは試し弾きだったということが納得できました。ストコフスキーのお箱で何度も録音していますが、ここでは2回目の録音が演奏されました。もちろんSP録音ですが、何とその4年後にステレオでこの曲が録音されています。それがファンタジアでの演奏です。
9 タイスの瞑想曲(マスカーニ) ジャニーヌ・ヤンセン(Vn)
10 序奏とロンド・カプリチオーソ(サン=サーンス)
ネーメ・ヤルヴィ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団Ⓡ2006.6.18ベルリン、ワルトビューネ野外ステージ
最後はDVDで2006年のベルリンフィルのワルトヴューネのコンサートからの映像が取り上げられていました。
ヴァイオリンはジャニーヌ・ヤンセンで、指揮がネーメ・ヤルヴィでした。実はこの曲の前に、恒例の「ベルリンの風」も指揮者なしで演奏しているシーンも流されました。ウィーンフィルのラデツキー行進曲と同じシュチュエーションで演奏される曲ですな。コンサート全体を聞くと疲れてしまいますが、こうしてピックアップして聴くと楽しいものです。
今回のコンサートちょっと時間が余りましたので、最後にもう一度蓄音機の登場で、ミュージカル「南太平洋」から「魅惑の宵」マントヴァーにの演奏で流れました。デッカのSPの音はさすがで、この時代でもマントヴァー似のカスケードストリングスの音が流麗に響きました。
いつもながらあっという間に2時間の時が流れました。いつもは電車で豊明まで出かけていましたが、駅からはかなり距離があり、この日の最高気温は39度予想だったこともあり、初めて車で出かけました。
良くも悪くも小学校という雰囲気です。
コンサートの後は3階のイートインスペースで給食でも食べるつもりでまったりすごしました。