ヘンリー・マンシーニ/シンフォニック・ソウル | geezenstacの森

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ヘンリー・マンシーニ

シンフォニック・ソウル

 

曲目/

 

1.Symphonic Soul    2:26

2.Butterfly    4:47

3.Satin Soul    3:07

4.Peter Gunn (New Version)    4:33

5.Slow Hot Wind (Lujon)    2:43

6.Pick Up The Pieces    3:36

7.Sun Goddess    3:33

8.Soul Saga (Song Of The Buffalo Soldier)    3:11

9.African Symphony    3:38

 

編曲・指揮/ヘンリー・マンシーニ

演奏/ヘンリー・マンシーニ・コンサート・オーケストラ

Bass – Abraham Laboriel

Concertmaster – Erno Neufeld

Drums – Harvey Mason

French Horn [Principal] – Vincent DeRosa

Guitar – David T. Walker, Dennis Budimir, Lee Ritenour

Keyboards – Joe Sample

Management [Orchestra Manager] – Marion Klein

Percussion – Dale Anderson (2), Emil Richards, Harvey Mason

Percussion [Latin] – Mayuto*

 

Producer – Joe Reisman

Engineer [Recording] – Mickey Crofford

 

RCA APL1-1025

 

 

 発売は1975年です。先日来取り上げているパーシー・フェイスが新しい路線で次々とヒットアルバムを製作していたのに刺激されて録音をしたと言う曰く付きのアルバムです。この年、パーシィ・フェイスは「ディスコパーティー」というアルバムを発表しています。ここにマンシーニは従来の彼の楽団とは違うアーティストを投入して、その名もコンサート・オーケストラという編成での便でいます。マンシーニの本気度が伺い知れます。
 
 オハイオ州クリーヴランド出身、数多くの映画音楽名曲を手掛けたコンポーザー/アレンジャー、ヘンリー・マンシーニが従来の映画音楽のテーマ集のようなイージー・リスナング本流から決別して取り組んだアルバムです。バックはJoe Sample、Harvey Mason、David T. Walker等の手練が参加していますし、パーシー・フェイスがアルバムに自作をこっそり紛れ込ませていたのに対抗して「シンフォニック・ソウル」と言うタイトル通り、冒頭から自作のオリジナルをぶつけています。長年ヘンリー・マンシーニを聞いている人なら映画音楽の作曲家としては昔からジャズをベースにした作品をたくさん発表していましたから、言って見れば本業のスタイルにオーケストラのフォーマットを投入したと言えなくもありません。
 
 ここでは映画音楽としては自作の「ピーター・ガン」のテーマをシンフォニックなアレンジで取り上げていますが、それ以外はHerbie Hancock作の名曲「Butterfly」、Love Unlimitedの「Satin Soul」、AWBの名曲カヴァー「Pick Up The Pieces」、Ramsey Lewisの名曲カヴァー「Sun Goddess」等のソウル〜ジャズ名曲をオーケストラアレンジでファンキーに演奏しています。
 
 タイトル曲の「シンフォニック・ソウル」はマンシーニの自作曲でフルオーケストラで演奏していますからなかなかカバーはありません。そんな中、ポップスオーケストラの雄、エリック・カンゼルはこの曲を取り上げています。

 

 

 テンポは早くてノリはいいのですが、ちよっと本家には及びません。ここではBud Brisboisのピッコロ・トランペットの輝かしいハイトーンが生き生きしていますし、そこにお得意のストリングスが美しいメロディを重ねています。さすが、作曲者自らの響きです。
 
 でも、ここで一皮剥けるまでは同じディスコの曲を取り上げてもちよっと乗れない演奏になっていました。それが下の「ハッスル」です。

 

 

 

 

 このアルバムでの1番の聴きものは「アフリカン・シンフォニー」でしょうか。オリジナル版はヴァン・マッコイが1974年に発表したアルバム「ラブ・イズ・ジ・アンサー(Love Is The Answer)」に収録されています。当時は「ディスコ・ミュージック」の一つとして発表されながらも(この曲はどうやって踊るのだ?)、自身の結成したオーケストラ「ザ・ソウル・シティ・シンフォニー」との演奏によって、アフリカの壮大な自然を思い浮かばせる雰囲気を作り上げています。

 オリジナルもパンチのある演奏でしたが、1975年のヘンリー・マンシーニがアルバム「シンフォニック・ソウル」のラストナンバーとして取り上げた演奏は一つのブームになりました。オリジナルからややソフィストケイトさせ、ストリングスを前面に出した演奏はイージーリスニングの世界にも浸透していき、やがて1977年には岩井直溥氏の編曲による吹奏楽曲が「ニュー・サウンズ・イン・ブラス第5集」に収録されたことによって吹奏楽曲の一つとして認知されることになりました。

 そして、話が逸れますが、この曲が高校野球で一躍有名になったのは、1987年の第69回全国高等学校野球選手権大会に和歌山・智辯学園和歌山高校が甲子園初出場した際に、同校吹奏楽部がアレンジして応援曲として採用した事によります。それ以降、他校でも使われるようになり、高校野球の応援曲として今では吹奏楽の定番曲になっています。今年も、何校かで演奏されるんでしょうなぁ。

 

 

 さて、このアルバムは全世界的には上記のRCA APL1-1025で発売されましたが、日本だけは4チャンネルレコードとしても発売されました。これがディスクリート方式とあって完全なる4ャンネル仕様でした。まあ、今ではそんなソースがあっても再生できませんが、8トラのテープからミックスダウンした音源で聴いてみましょうか。普通のリッピング音源とはかなり音の質が違います。