オーケストラ名曲集-美しいオーケストラ名曲の贈り物 | geezenstacの森

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オーケストラ名曲集

美しいオーケストラ名曲の贈り物

 

曲目/

1.ヴォルフ・フェラーリ/「聖母の宝石」間奏曲

2.マスカーニ/「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲

 指揮/パウル・ワルター、演奏ウィーン交響楽団

3.ヴェルディ/「椿姫」第1幕への前奏曲

 指揮/ウィルヘルム・ロイブナー、演奏ウィーン交響楽団

4.ワーグナー/「ローエングリーン」第1幕への前奏曲

5.ワーグナー/「パルシファル」前奏曲

 指揮/ウォルフガング・サヴァリッシュ、演奏/ウィーン交響楽団

6.ロッシーニ/「セヴィリアの理髪師」序曲

 指揮/ロベルト・ベンツィ、コンセール・ラムルー管弦楽団

7.モーツァルト/「フィガロの結婚」序曲

 指揮/ベルンハルト・パウムガルトナー、ウィーン交響楽団

8.ウェーバー/「魔弾の射手」序曲

 指揮/アンタル・ドラティ、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

9.ヨハン・シュトラウス/「こうもり」序曲

 指揮/パウル・ワルター、演奏ウィーン交響楽団

10.ウェーバー/舞踏へのお誘い

 指揮/エドゥアルト・ヴァン・ルモーテル、モンテカルロ歌劇場管弦楽団 

11.ドビユッシー/牧神の午後への前奏曲

 指揮/ジャン・フルネ、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

12.シベリウス/フィンランディア

 指揮/ウィレム・ヴァン・オッテルロー、ハーグ・フィルハーモニー管弦楽団

13.リスト/交響詩「前奏曲」

 指揮/ベルナルト・ハイティンク、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

14.ムソルグスキー/はげ山の一夜

 指揮/アンタル・ドラティ、ロンドン交響楽団

 

フィリップス SFX-105-6

 

 

 

 手ごろなオーケストラ名曲集があるとつい手を出してしまいます。これはレコードですが、2枚組のセットになっています。中古で購入したのはこの1組だけですがへ、レコード時代には、国内版が1組、輸入版が二組も手元に残っています。そのうち、このレコードも含めて3000がフィリップスの音源と言うむちゃくちゃ偏った構成になっています。

 

 この日本盤のセットは、レコード番号からして多分1970年代の最初の頃に出たものと思われます。この名曲集はシリーズで取り上げていこうと思っています。ただ言えるのは、日本盤は曲目重視で演奏者はバラバラと言う点です。今から考えるとバラエティーにとんでいて、すこぶる楽しい内容になっています。

 

 最初に登場するパウル・ワルターは1906年2月28日にオーストリア・ハンガリー帝国時代にウィーンで生まれ、2000年1月6日にウィーンで亡くなっている生粋のウィーン子だったようです。ブログ友達からの情報によるとステレオ初期にはシュトラウスのワルツを5分に短縮したのを多く録音していたようです。ただ、手元にある昭和31年発行の現代演奏家辞典には名前が登場していないところを見るとステレオ初期の一時期に活躍しただけのようです。フィリップスからは1999年にロイブナーの指揮したものとともにCD化されて発売されています。いわゆる本場ウィーンの情緒たっぷりの演奏です。1959年のフィリップスの録音は少しも古びたところがなく良い意味でウィーン訛りの古き良き音楽を聴かせてくれています。LP時代には教育的な内容であったことから何度も再発され、フォンタナレーベルでは下のようなジャケットでも発売されたことがあります。

 

 

 ロイブナーはN響の常任を一時務めた人で、NHK交響楽団との録音も残っています。下はこの録音なんですが、ヨーロッパでは長くモノラルが発売されていてその音源で収録されています。

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 サヴァリッシュは1960年から70年にかけてこのウィーンフィルの首席指揮者を勤め、1967年にはオーケストラを引き連れて来日公演もし、NHK交響楽団も何度も指揮していましたから日本では人気がありました。ステレオ初期はフィリップスにブラームスの交響曲全集をウィーン交響楽団と残しています。2013年にデッカからサヴァリッシュのボックスセットが発売されていますが、なぜかこのワーグナーの録音は収録されていません。不思議です。

 

 

 ロベルト・ベンツィも懐かしい名前です。1960-70年代はよく耳にした名前です。パリオペラ座で初めてビゼーのオペラ「カルメン」を上演したとか、来日してやはりカルメンを上演したとかで話題になっていました。ロベルトというファーストネームからわかる通り、イタリア系ですが、1937年、フランスのマルセイユの生まれ。10歳の時にベルギー人でパリを拠点に活動していた名指揮者のアンドレ・クリュイタンスに指揮を学び、11歳で指揮者デビュー。神童として騒がれ、自身が主演した『栄光への序曲』という映画が制作、上映されたこともある指揮者です。その後は、「二十歳過ぎればなんとやら」で平凡な指揮者になったと言われています。また、ベンツィより1歳年上で、ヴィオラを専攻していたスイス人の少年が、映画『栄光への序曲』を観て、「僕も指揮者になる」と決意。実際に指揮者になったのが、シャルル・デュトワという指揮者です。こういう繋がりを知ると結構面白いものです。

 

 ネットの音源はやはりモノラルのものです。

 

 

 ジャン・フルネとウィリアム・ヴァン・オッテルローという名前もかつかしい名前です。フルネは晩年東京都響の常連で1989年-2008年は名誉指揮者として活躍し、引退の場に日本を指名するなど日本の音楽界全般に多大なる貢献をしています。ここでも、名門のアムステルダムコンセルトヘボウを指揮して優雅な「牧神」を披露しています。

 

 

 ハイティンク/ロンドンフィルはフィリップスの意向があってかメインストリートに乗っからない作品を録音していました。ストラヴィンスキーの「春の祭典」などめちゃくちゃ好きに演奏でしたが録音は優秀で、おまけに早々に廉価版投入してくれたのでよく聞いたものです。このリストの交響詩も全曲録音しているものです。地味ですがいい仕事していますなぁ。全集を録音している指揮者は、知る限りはこのハイティンクとクルト・マズア、アルパド・ヨーぐらいしか知りません。ここでは一番有名な「前奏曲」が収録されていますが、どんな作品にも真摯に向きあい、演奏・録音にあたってはオーケストラと入念なリハーサルを積み重ね、常にベストを尽くしてきたハイティンクのひたむきさが伝わってきます。

 

 

 最後はドラティ/ロンドン響の「はげ山の一夜」です。この60年代前後はドラティはいろいろなレーベルに録音を残しています。マーキュリーを筆頭に、デッカ、RCA、リーダーズダイジェストにも音源があります。このはげ山はこのレコードで初めて耳にしましたが、ロシアの指揮者のようにバリバリ金管を鳴らして突き進んでいくというものでなく、中間部はテンポも落として曲の持つ不気味さよりは構造上のメロディの堆肥を際立たせた非常にユニークな解釈を試みています。こんな「はげ山」は初めての体験でした。ここで使われているオリジナルはミネアポリス交響楽団とのムソルグスキーの「展覧会の絵」とのカップリングでしたが、この「はげ山」の方が聴きものでしょう。