ペナリオのラフマニノフとグリーグ
曲目/
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番ハ短調op.18
1.第1楽章 10:27
2.第2楽章 11:00
3.第3楽章 11:42
グリーク/ピアノ協奏曲イ短調Op.16
4.第1楽章 11:42
5.第2楽章 15:48
6.第3楽章
ピアノ/レナード・ペナリオ
指揮/エーリッヒ・ラインスドルフ
演奏/ロスアンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1960 ロイス・ホール、ロスアンジェルス
P:ラルフ・オコーナー
東芝EMI CFRC-527 原盤(ST1-23487)
このレコード、調べて初めてわかりましたが初期のセラフィム名曲シリーズで発売されていました。本来はAAで始まるシリーズですが、この一枚CAで始まっています。そう、これはもともと米キャピトル原盤のレコードなんですなぁ。ペナリオは自分の中ではRCAのアーティストだと思っていましたのでこの録音は意外でした。そもそもは1952年にキャピトルと契約していたんですなぁ。そして、1962にRCAに移籍しています。
このペナリオは1924年にニューヨーク州バファローに生まれ、ロスで育ち、パーキンソン病の合併症で2008年にカリフォルニア州ラホヤで没した生粋のアメリカン・ピアニストです。そして、1924年にラフマニノフが亡くなった時、ラフマニノフの追悼演奏会で2番を弾いたのはこのペライアであり、さらにペナリオは、ラフマニノフ本人以外でラフマニノフのピアノ協奏曲全曲と《パガニーニ狂詩曲》の録音を完成させた最初のピアニストでもありました。そして、この録音ではありませんが、ペナリオによるラフマニノフの《ピアノ協奏曲 第2番》の録音は、1950年のジョーン・フォンテイン主役の映画『旅愁』に利用されています。また、アメリカでは1958年ごろ、ヴァルター・ギーゼキングと並んで最もレコードが売れるピアニストであったことがwikiに書かれています。また自作では、1956年ドリス・デイ主演の映画『影なき恐怖』の挿入音楽《真夜中の断崖》(Midnight on the Cliffs )が知られています。
ここでのラインスドルフ/ロスフィルのバックは非常にクールです。それに合わせるかのようにペナリオの演奏もロマンを感じさせる哀愁は微塵も感じさせません。早いテンポで強靭なタッチで主題を歌い上げていきます。ずいぶん以前にバイロン・ジャニスの演奏を取り上げていますが、ジャニスでさえ13分かけて演奏している第1楽章をわずか10分で駆け抜けています。いかに即物的に演奏しているかがわかろうものです。この楽章を今の時流に合わせてもう少しゆったりとしたテンポで演奏されていればこのペライアの録音は現在でも通用するのではないでしょうかねぇ。
その割に第2楽章は非常にゆったりとしたテンポでロマン的な漂いを感じさせる演奏になっていて、ある意味この楽章がこの演奏の白眉となっています。作曲者のラフマニノフの残されている演奏では8分台でこの楽章を演奏しているのであまりにもあっさりしすぎています。オーケストラの伴奏もピアニストの意図を汲んで出しゃばらずしっとりと美しいアンサンブルを聴かせています。
第3楽章は、また打って変わって第1楽章と同じようにオケとがっぷり四つに組んで、丁々発止のやり取りを繰り広げています。それでも歌うところはきちんと歌っているので聞き応えは十分です。 この演奏レコード時代は国内盤が発売されていますが、CDとしては国内発売はないようです。ましてや、こういう形のカップリングでの発売はCDでもありません。米セラフィム出は小田2番とのカップリングでCD化されています。
さて、グリーグについては、こんなエピソードが残っています。ダラスの演奏会で急なピアニストのキャンセルで困っていた指揮者ユージン・グーセンスが、たまたま「この曲なら知っているよ!」と言う当時12歳のペナリオの言葉を真に受け、大抜擢しています。そして彼は見事に代役を務めあげ、注目を集めたというエピソードが残っています。実際は「聴いたことはある」程度だったらしいのですが、短い練習期間で公演を成功させているのは、やはり神童だったのでしょう。1950年代になると、彼のレコードはギーゼキングと並び常に「売れる」ものだったということです。 今では考えられませんけどね。
このグリークも味めて接する録音です。ただ、聴いてみると、この演奏自体は民族色が希薄で、冒頭の全奏もあまり迫力は感じられません。テンポも特徴がなくサラリとしています。今回、録音スタッフは調べきれませんでしたが、明らかにラフマニノフとグリークでは音の捉え方が違います。こちらの方が大人しすぎます。音の作りは丁寧ですが、テンポを揺らし気味にピアノを弾くペナリオに対してラインスドルフは常に冷静でインテンポを守り崩れません。そのせめぎ合いが一歩引いたところで繰り広げられるので聴いている方はちょっと腰の座りの悪さを感じてしまいます。録音は悪くありませんがスケール感がないので曲に浸る楽しさはあまり感じられないのが残念です。多分こちらはCDかもされてないのではないでしょうか。