マゼール/フィルハーモニア「ツァラトゥストラはかく語りき」
ジュリーニ/フィルハーモニア「火の鳥」
曲目/
リヒャルト・シュトラウス:
1.交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』 op.30
ストラヴィンスキー
2.組曲「火の鳥」
指揮/ロリン・マゼール 1
カルロ・マリア・ジュリーニ 2
演奏/フィルハーモニア管弦楽団
録音:1962年6月19,25,28日、ロンドン、キングズウェイ・ホール 1
1956/10/2-3 アビー・ロード第1スタジオ
P:ウォルター・レッグ
E:ダグラス・ラーター
東芝EMI AFRC535
フェーマス・レコード・クラブのアルバムの中でもこの一枚は出色のものです。この組み合わせでは市販されたことはありません。マゼールの「ツァラトゥストラ」は初出は「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」とカップリングされて発売されていましたし、ジュリーニの「火の鳥」はビゼーの「子供の遊び」、ドビュッシーの「マザーグース」の組み合わせて発売されていました。で、この原盤はA面はこのアルバム用にマザーが制作されていて、番号もAFRC−535をそのまま使用しています。B面は原盤のYAX79を使用しています。
マゼールの演奏はオリジナルの組み合わせでセラフィム名曲シリーズの初期のロットに投入されていて、AA−5055で発売されていました。でも、この一枚は全く記憶にありませんでした。そもそも「ツァラトゥストラはかく語りき」は映画「2001年宇宙の旅」で有名になった曲で、それまでにオーマンディ盤とカラヤン盤ですでに所有していたので、レパートリーの充実を優先させていた学生としては3枚目は選択外のレコードだったのでしょう。
オリジナルジャケット 英コロムビアSAX2647
そんなことで、マゼールの「ツァラトゥストラはかく語りき」は未聴のまま現在に至ったわけですが、これが中々の聴きものなのでした。当時はまだ30代の若々しいマゼールは幾分くすんだ響きを持つこのオーケストラから重厚さとシャープさを引き出しつつ、スケールの大きな音楽を作り上げています。ほとんど忘れられている録音ですが、これは掘り出し物でした。多分、本来はレコードの両面にまたがる演奏が、ここでは片面に詰め込まれています。そのため、音楽の緊張がそのまま継続されているのも良いのかもしれません。多分、レコード時代こういうカッティングの市販レコードは無かったのではないでしょうか。
下は2014年3月20日の最晩年のマゼール/フィルハーモニアのロイヤル・アルバートホールでのライブです。
さて、このレコードB面にはジュリーニの「火の鳥」がカップリングされています。おそらく、こういう組合せも市販レコードではなかったと思います。ジュリーニといえば、後にEMIにはシカゴ響と組んだ当時話題になった録音がありますが、フィルハーモニアとこんな録音があったこともこのレコードで始めて知りました。録音が1956年ということで、EMIとしては最初期のステレオ録音でしょう。今となっては全く忘れられているといってもよいのではないでしょうか。
オリジナルジャケット 英コロムビアSAX2279
オリジナルのカップリング曲もぶっ飛んでいて、ビゼーとドビュッシーなんて誰が考えついたのかは知りませんが謎としか言いようがありません。ところでこの「火の鳥」音質は後年のシカゴ響のものには及びません。もともとジュリーニの火の鳥は好きでシカゴ響の演奏も所有していますから、聴き比べもできるのですが、基本的な解釈はほとんど変わりません。ジュリーニは結構レパートリーが狭い人でしたから好きな曲は何度も録音しています。ストラヴィンスキーの三大バレエ曲ではペトルーシかとこの火の鳥は録音していますが、「春の祭典」は録音していないんですなぁ。変わった指揮者でした。そういう意味ではカラヤンは逆に「春の祭典」は録音していますが、「火の鳥」と「ペトルーシか」は録音していませんからどっちもどっちですかね。