レコード芸術1972年12月号
その4
当時の広告を掘り起こします。
フィリップスは目立った神父はありません。ヘルマン・プライの「冬の旅」が目玉ですが、同月はフィッシャー・ディスカフのものが発売されてぶつかっています。ただ、ピアノがサヴァリッシユが引いているというところがミソでしょうか。インバルがニュー・フィルハーモニア管とシューマンの交響曲全集を録音していたとは知りませんでした。一般的にはコロムビアに入れたフランクフルトとの録音の方が知られていますからねぇ。この月はさりげなくメンゲルベルクの「第九」が発売されています。友人がこのレコードを持っていて借りて聴いたものです。アンチフルトヴェングラーだった小生にはこのメンゲルベルクの第九は驚かされました。第九の4楽章のコーダでこんな演奏をする指揮者は皆無でしょう。フィリップスの広告は打ち出す戦略がピンボケです。レコ芸では大きくコルゼンパのバッハを取り上げていますが、広告はひっそりと掲出しているだけです。新進のオルガン奏者として久しぶりに登場したのがこのダニエル・コルゼンパです。
ビクターはいろいろな形で広告を出していて、まとまりがありません。先に紹介したヴィンシャーマン利「音楽の捧げ物」もモノクロのページて゛ひっそりと告知しています。一応、謳い文句ではユニークな解釈と注釈をつけていますが、配列については告知していません。こんな広告では見向きもしませんわなぁ。ハンス=マルティン・リンデも懐かしい名前です。個人的にはハルモニア・ムンディでよく見かけた名前ですが、古楽の世界ではよく耳にしましたが、ビクターからもレコードが出ていたことはこの広告で初めて知りました。
1000円盤では後発でしたがリビング・ステレオシリーズの名盤をどんとつぎ込んだRCAは12月にさらに20枚を追加しています。小生は第1弾は甘触手が動かなかったのですが、この第2弾には飛びつきました。ドラティ/ストックホルムのシベリウス、ストコフスキーのワーグナー、ミンシュの「ダフニスとクロエ」、シェリングのスペイン交響曲、そして、ビーチャムのオラトリオ「メサイア」と他社のレパートリーにない曲目を中心に買い漁りました。「メサイア」なんて今でも愛聴しています。
こんなシリーズもどさくさに紛れて発売されていました。しかし、ヒストリカルものはコロムビアで千円版が出始めていたので、触手の動くものはありませんでした。たらねばですが、これが千円盤で出ていたら多分飛びついたでしょうなぁ。
見開きでは看板スターのアシュケナージとメータを見開きで訴求しています。アシュケナージは来日記念盤という位置付けです。このラフマニノフの2番は2回目の録音にるもので、プレヴィン/ロンドン響と組んでいるところがミソです。メータの方は毎月のように強力な新譜を発売していますが、この時はブルックナーの交響曲第4番を持ってきました。メータ初のブルックナーでロイスホールを目一杯鳴らした録音は本当にこのコンビの全盛期を思わせます。
コーガントリヒターの組んだこのバッハのヴァイオリンソナタはこの時の来日記念盤として発売されました。原盤はオイロディスクで当時はキングが発売窓口だったんですなぁ。デラックス仕様のSLA規格でスコア付きで発売されています。もちろん当時は指をくわえて見ていただけですが、のちに廉価盤で再発された時は躊躇なく購入しました。ただ、スコア付きではなかったです。
この当時はキングはマリナーが一番売れていたのでしょう。本来は1月新譜のショルティのマーラー交響曲第8番をもっと告知すべきところなんですが、売上が欲しいのでマリナーのモーツァルトをトツプに持ってきました。
そして、年末企画盤の「ロンドンGT2000シリーズ」を前面に打ち出しています。ロンドンレーベルでの単品の1000円盤はまだ発売されていません。年が明けて、カラヤン盤が1000円で登場したのが始まりです。その先駆けがこのシリーズでした。ただ、異様的にはイマイチで、カップリングに魅力がなかったので触手は動きませんでした。ただ、すでにこの中にカラヤンのブラームスとハイドンが投入されていたのは知りませんでした。
別の鳥シリーズでも年末新譜で2枚組2000円盤が出ています。こちらは全く記憶にありません。ベートーヴェンなど1,2,4番を除いて揃ってしまいます。アンセルメのベートーヴェンが出ていたんですなぁ。
こちらはロンドン以外のバークレイ原盤も含めての告知です。アーティストの名前もかすかに記憶がある程度です。ただ、フォンタナローザはその後レコードを入手しています。
この当時は「エース・オブ・クラブ」がまだ発売されていたんですなぁ。のちにこちらは「エクリプス」シリーズに組み込まれていきます。「エース・オブ・ダイヤモンド」も徐々に消滅していき、「SPA」シリーズになっていきます。ただ、このあたりの区分はいい加減で「エクリプス」シリーズにはステレオ盤もラインナップされているものもあり、アンセルメなどはその例です。
徳間音楽工業は徳間書店が親会社でしたが、東独の「エテルナ」と契約してこの当時ようやく活動を始めています。アンネ・ローゼ・シュミットも懐かしい名前です。マズワはドレスデンフィルの常任もしていましたからその関係で録音したものでしょう。モーツァルトのピアノ協奏曲全集のみが際立っていますが、こんな録音もあったのですなぁ。
てっきりCBSとの契約は終了していたとと思っていましたが、こういう録音が後からポツポツ発売されました。でも、バーンスタインがこんな全集を録音していたとは思いませんでした。あまり話題にはなりませんでしたからねぇ。
ソニーは手を替え品を替えワルターの録音を発売しています。没後10周年の企画ですがモノラル編は日の目を見ませんでした。この時まで、ソニーは1000円盤は出していませんでしたが、市場から取り残された感があり、急遽規格変更でこの後、ワルターのモノラル録音を廉価盤に投入します。ヒストリカルものとして売り出そうとしたんでしょうなぁ。
ソニーは独自の4チャンネル規格でしつこくレコードを出しました。バーンスタインのミサ曲もそうやって録音されています。ただ、所詮マトリックス方式ですから小生は手を出しませんでした。ただ、木になる新譜があり、左下に海野義雄によるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集を告知しています。これも国内盤ながらSQ方式の4チャンネル録音で発売されています。注目は偽作と言われる第6番と第7番も収録されているところです。この録音は多分一度もCD化されてないのではないでしょうか?
ソニーのギフトパックがこの年も発売されています。1971年のものは赤いパッケージでしたが72年は普通の白いパッケージで発売されました。ボックスというぐらいで厚紙の棒杭に入っていました。初年度と曲目的にはあまり目新しさはありませんが、演奏者の入れ替えで、ブルックナーとマーラーのセットなど初年度はワルターでまとめられていましたが、この年はマーラーの「巨人」がバーンスタインに変わっています。そんなこともあり、触手は動きませんでした。
つづく