レコード芸術1972年12月号
その5
これが12が都合の裏拍子でした。実際のジャケットはあまりにイメージからかけ離れていたのでメータの顔を大きくあしらった広告が使われていました。
テイチクは1ページ広告でしたが、英パイレーベルのバルビローリのアルバムを追加して発売しています。マーラーの巨人は唯一のセッション録音です。宝物のようなレコードがこの時期まとまって発売されています。
DGGの新譜は極めて渋いものが並んでいます。この月フイッシャー・ディースカウのシューベルト3部作はEMIからも旧録音が発売されており、DGは4枚組、EMIは3枚組での発売です。エッシェンバッハはこの頃はまだピアニストでした。
クラーヴェスもポリドルが発売権を持っていましたがメイン以外は白黒ページ扱いでした。
アルヒーフも同様の扱いで、リヒターのバッハカンタータ州の第1巻がアルヒーフ25周年記念盤として登場しています。
DGからようやく1000円盤が登場です。ただ、このラインナップあまり魅力はありません。ベームのものはモノラル録音でようやく擬似ステではなく本来の形で発売されました。全てオリジナルの形での発売ですが、収録曲数が少なく、触手は動きませんでした。
合いも変わらず、EMIはカラヤンものをメインに取り上げています。ただねオペラがメインでは勝負にならないと旧譜をドンとつぎ込んでのアピールです。
ちなみに新譜ハイライトは地味なものばかりです。
年末ということで、プレヴィンの「くるみ割り人形」が大きく打ち出されています。右下のシャピラによるブルックナーの交響曲第0番がひっそりと発売になっていますが、これは世界初録音となったものです。多分CD化されていないと思います。それにしても、EMIは打ち出し方が下手です。
各メーカーの新譜の俯瞰は以上ですが、この号にはEMIのロンドン郊外にオープンした新工場を紹介した記事が掲載されています。その全記事を掲載します。
この工場は今でも稼働しているようで、マザー・マスターはきっちり保管されているようです。
この年、ミシェル・ルグランが来日していました。本誌の最後の方で野口久光氏が取り上げていたのを見過ごしました。野口氏のスケッチも大したものですが、このコンサート2夜に渡って開催されており、この時は、17名の帯同の演奏者プラス日本側の弦楽セクションをくわえて、総勢52名のオーケストラを率いて、全て自作を編曲、指揮、ピウリ演奏、さらには歌声まで披露というマルチの活躍のコンサートだったようです。小生もルグランの歌うアルバムも所有していますが、なかなか味のある歌声を聴かせてくれます。写真の女性歌手はヴィクトリア・リドル(イギリス人)で、シェルブールの雨傘をデュエットしています。また、ピアノの演奏ではジャズの披露とともに、曲名はわかりませんがバッハの協奏曲も演奏しています。まあ、クラシックのアルバムも出しているほどですからさもありなんでしょうなぁ。
最後に、国内レコーディング・トピックスです。
ランパルはこの年もコロムビアに録音しています。今回はコロムビアの誇るPCM録音での収録でした。
こちらはジャパン・オーディオ・ラボラトリーへ「コダーイ・カルテット」が録音しています。普通の流通ルートでは発売されなかったようで、ほとんど知られてないのではないでしょうか。
チェリストの安田謙一郎氏は東芝に小林道夫氏とベートーヴェンとショパンの作品を録音しています。これもCD化されてないでしょうなぁ。