ミンコフスキーの幻想交響曲 | geezenstacの森

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ミンコフスキーの幻想交響曲

 

曲目/ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14 

 1. 夢、情熱    16:01

 2. 舞踏会    6:18

 3. 野の風景    19:34

4. 断頭台への行進    6:26

 5. 魔女の夜宴の夢    9:18

 

指揮/マルク・ミンコフスキ

演奏/ルーヴル宮音楽隊&マーラー・チェンバー・オーケストラ

録音/2002/12 シテ・ド・ラ・ミュジク、グランド・サル、パリ

P:アーレント・ブローマン

E:ゲルノート・フォン・シュルツェンドルフ

 

 

 手持ちのCDは「100 great symphonies」に含まれるもので、幻想交響曲1曲しか収録されていません。市販のCDはもう一曲、ヘルリオーズが二十歳の時に書いた「抒情的情景『エルミニー』」が収録されています。交響曲のセットということで趣旨に合わないということでカットされたんでしょうなぁ。市販のCDは下記のジャケットです。

 

 

 これは評価の分かれる演奏ですなぁ。手兵の古楽オケ、ルーブル音楽隊と、グスタフ・マーラー・ユーゲント管の卒業生からなるプロ・オケ(モダン楽器)、マーラー室内管弦楽団による合同演奏の形を採用した演奏になっています。解説によると、オケは全員で85人で50人がマーラー室内管弦楽団の構成になっています。で、元は全員現代の弦を採用していて願っと弦ではありません。楽器配置は第2ヴァイオリンが右側の両翼型ですが、低弦のコントラバスは右側に配置された録音です。そして、金管のコルネットとトロンボーンはピリオド楽器、太鼓は子牛の皮を貼ったもので、第4、第5楽章ではテューバではなくむ当時のオフィクレイドを使用しています。言って見れば現代のオーケストラに金管の古楽の響きが味わいを添えているというスタイルです。さらに、第1楽章と第4楽章は呈示部の繰り返しを実施しています。まさに新旧を取り混ぜたスタイルの演奏と言っていいでしょう。


 演奏は、ミンコフスキのエネルギッシュでいて斬新な音楽作りが全編に横溢したもので、幅広いテンポ設定の中で第2楽章などは意外な内声の強調や、パート・バランスの設定がおこなわれていて驚かされることもしばしばです。古い楽器と新しい楽器が混在していた時代の響きが見事に再現されていると言ってもいいでしょう。ただし、この音に慣れるまでにはちよっと時間がかかります。それだけ普段耳にしている響きとは異なります。


 一例を挙げれば、「断頭台への行進」ではバス・トロンボーンを野卑に響かせるなど、元管楽器奏者ならではのこだわりぶりですし、「ワルプルギスの夜」での絶妙な管の鳴らしっぷり、霊妙な鐘の音色など、ミンコフスキの手練手管が洒脱なまでに発揮される痛快な聴きものとなっています。


 録音はシテ・ドゥ・ラ・ミュジックにおけるライヴ録音で、第1楽章のコーダでは異様に長い残響が耳につきます。しかし、全体ではホールの響きを生かした冷涼感のあるクールな響きというイメージです。ライブですが客席ノイズはほとんどありません。

 第1楽章はノンヴィブラート奏法ではない響きですが、通常聴き慣れた響きとはやや異質な響きです。通常は透明感のある響きで音楽がスムースに流れるのですが、ここではやや粘りのある響きで最初から幻想の世界の中のイメージを醸し出しています。そう、冒頭から特異でグロテスクな世界の音楽になっています。その中での夢と情熱ですから最初からハリーポッターの世界です。

 第2楽章も冒頭のハープの響きからしてやや魔界の響きです。ワルツのリズムもアクセントのつけ方でこうもイメージが違うものかという響きで、それが対向配置の左右から奏でられる響きで魔界の音楽と化しています。

 第3楽章は異常に遅く、20分弱の音楽になっています。ひと呼吸ひと呼吸、大事に大事にひっそり音楽を仕上げていて、全休止の無音を効果的に使っています。これだけの遅さでは古楽のノンビブラートでは間が持たないでしょうなぁ。
う。

 第4楽章はホルンのゲシュトップを伴い開始されますが、ここにティンパニの乾いた音が不気味に響きます。そこにオフィクレイドのビリビリ音が面白い効果を出して加わり、魔界の響きがホールを包みます。この楽章もう少し遅いテンポだともっとおどろおどろしさが増したのではないでしょうかねぇ。

 最終楽章もおどろおどろしさが継続します。先にも書きましたがここで登場する鐘の音は音程感もあり良い音で響き渡ります。
そしてここでも、怒りの日のオフィクレイドのこもった音色が味わいがあります。この楽章は9分台で駆け抜けています。魔界での疾走感があるんですなぁ。そんなことで終わってみればこれはこれでファンタジー感満載の演奏であることがわかります。まあ、聴いて みてください。