ドゥダメル マーラー/交響曲第5番 | geezenstacの森

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ドゥダメル

マーラー/交響曲第5番

 

曲目/マーラー:交響曲 第5番 嬰ハ短調 

1. 葬送行進曲(正確な速さで。厳粛に。葬列のように)    12:42

2. 嵐のように荒々しく動きをもって。最大の激烈さを持って。    14:27

3. スケルツォ(力強く、速すぎずに)    17:21

4. アダージェット(非常に遅く)    10:46

5. ロンド - フィナーレ(快速に、楽しげに)    14:09

 

指揮/グスターボ・ドゥダメル

演奏/シモン・ボリヴァル・ユース管弦楽団

 

録音:2006/02 ベネズエラ中央大学、カラカス

EP:クリスチャン・ラインス

P:シド・マクローラン

E:バスティアン・シック

 

 

 ベートーヴェンの交響曲第5&7番で衝撃的なデビューを果たしたドゥダメル&ベネズエラ・シモン・ボリバル・ユース・オーケストラのデビューの第2弾となったのがこのマーラーの交響曲第5番でした。ただし、録音時期は同じです。冒頭のトランペット・ソロや第3楽章のオブリガート・ホルンをはじめ、きわめて高い機能性を要求され、あらゆる部分が難所とも言えるマーラーの第5番を採り上げたのは、 彼らの自信と持ち前のチャレンジ精神の現れに他ならないでしょう。

 

 上のジャケットは単売発売されている物ですが、手元にあるのは「100 great symphonies」というボックスセットの中に含まれている物です。この録音は2009年に発売された「グラモフォン111」というボックスセットにも含まれていました。最新の録音がセットに投入されているところを見ると話題にはなったも売れてはいなかったということなのでしょうかねぇ。手持ちの「100 great symphonies」「は2014年に発売されたセットですが、その中にもこの録音が使われていますからねぇ。DGにはバーンスタインを初め、アバドやカラヤン、シノーポリ、ブーレーズと名盤揃いの中でドゥダメルがチョイスされたのはただ、単に録音が新しいということだけなんでしょうかねぇ。

 

 第1楽章は全体的にスマートで切れ味鋭い表現でスケール感も十分ですが、やや表現にこなれていない部分が散見されます。ライブの映像で確認してもすごいパワフルな演奏で、Dレンジの広い響きが展開されます。しかし、音楽の表現がそのパワフルさにちょっとついていけてないのか響きが単調になることがあります。葬送行進曲をここまでパワフルにする必要性をあまり感じられず聴いていてやや疲れてしまいます。ただ、弱音部のフレージングに凝った表現があり、意外に粘らない感じはします。

 第2楽章でも凄まじい突進力とパワフルなアンサンブルで突き進んでいきます。弦は通常の編成よりかなり多そうですが、トレーニングは行き届いているのかよく揃っています。このテンションの高さは若さすがです。初期のレコーディングにこの作品をチョイスしたドゥダメルの意欲を感じることが出来ます。ここでは弱音部の丁寧な作りが光ります。

 第3楽章は全体に速く軽い仕上がりです。冒頭のホルンはなかなか聴かせる演奏です。8分音符がつまるような独特なフレージングを効かせる箇所が面白い演出になっています。

 聴かせどころの第4楽章は表現がやや淡白で、弱音が弱音でしかないのが気になります。艶や深みのある音色には遠い感じ
がして、音楽に没入できないのが残念です。この楽章ではドゥダメルの若さが露呈していると感じてしまいます。


 編成が大きいので、第5楽章はパワフルな響きでひたすら外へエネルギーを放射するような演奏です。弦楽器は見事ですがかなりメカニック的な響きです。テンポ感はいいのですが、ちょっと交通整理ができていないような音楽のまとめ方で、もう少し機が熟してからこの曲を録音したほうがよかったのかなぁという印象を持ちます。発売まで一年半ほどの時間を要したというのは、それだけ編集に手こずったということでもあるのでしょう。下の演奏はライブですが、この演奏の方が音楽は習熟しています。それにしても編成の大きな演奏です。