静おばあちゃんと要介護探偵 | geezenstacの森

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静おばあちゃんと要介護探偵

 

著者:中山七里

出版:新潮社文藝春秋社

 

 

 大学でオブジェが爆発し、中から遺体を発見。詐欺師を懲らしめるため2人は立ち上がった。父が認知症で悩む男性の相談に乗ったら…。同級生が密室で死亡。事故か、他殺か、自殺か。高層ビルから鉄骨が落下、外国人労働者が被害に。『さよならドビュッシー』でおなじみ、玄太郎おじいちゃん登場。介護、投資詐欺、外国人労働者…難事件を老老コンビがズバッと解決!日本で20番目の女性裁判官で、80歳となった今も信望が厚い高遠寺静。お上や権威が大嫌いな中部経済界の怪物、香月玄太郎。2人が挑む5つの事件。

 

 作品としては、作者のデビュー作、「さよならドビュッシー」であっという間に死んでしまう香月源太郎ですが、そこで描かれた強烈な個性が光っていたために、サイドストーリーとしてその前段に当たる作が、「さよならドビュッシー前奏曲、要介護探偵の事件簿」として主役で登場しました。まあ、中山ワールドはいろいろな作品が絡み合っているのですが、タイトルにあるもう一人の主人公高円寺静も別シリーズで登場していたもので、ここで二人が名古屋という中部地方の大都市で合体して活躍します。なことで時代的にはさよならドビュッシーの前奏曲よりもさらに前の時代のストーリーとして組み立てられています。章立ては以下のようになっていますが、

 

【第1話 二人で探偵を】大学構内でオブジェが爆発、その中から遺体が発見。

【第2話 鳩の中の猫】老人たちを騙していた投資アドバイザーを懲らしめるため、静おばあちゃんと玄太郎おじいちゃんが立ち上がる。

【第3話 邪悪の家】静おばあちゃんが、認知症の父親が徘徊して悩んでいるという男性の相談に乗ったところ…。

【第4話 菅田荘の怪事件】静おばあちゃんの同級生が、一酸化炭素中毒で死亡。事故なのか、他殺なのか。それとも自殺なのか。

【第5話 白昼の悪童】超高層ビルから鉄骨が落下事故して、玄太郎おじいちゃんが……。


 というもので、今作品は連作短編集ですが、老人をテーマに『老人がしやすい犯罪・老人が逢いやすい犯罪被害・老人が両方の意味で抱える問題』を扱っており、一方的に老人を擁護する事もなく、老人の抱える問題や、老いの悪い面に関しても触れつつ、勧善懲悪ではない奥深い面白さを備えた作品に仕上がっています。


 第1話はちょっと有り得ないなぁという設定ですが、静が登場ということで仕方のないところもあります。警察を手玉に取るというところは痛快ですが、その地位を利用して旁若無人に振舞うさまは、ちょっと共感はできません。ぢ、元裁判官だった静との対比という部分では絶妙な掛け合いになっていて面白いです。これもシリーズ化されるでしょうなぁ。