おわかれはモーツァルト
著者:中山七里
出版:宝島社
2016年11月。盲目ながら2010年のショパンコンクールで2位を受賞したピアニスト・榊場隆平はクラシック界の話題を独占し人気を集めていた。しかし、「榊場の盲目は、自身の付加価値を上げるための芝居ではないか」と絡んでいたフリーライターが銃殺され、榊場が犯人として疑われてしまう。事件は深夜、照明の落ちた室内で起きた。そんな状況下で殺人ができるのは、容疑者のうち、生来暗闇の中で暮らしてきた榊場だけだと警察は言うのだ。窮地に追いやられた榊場だったが、そんな彼のもとに、榊場と同様ショパンコンクールのファイナルに名を連ねたあの男が駆けつける――! 累計160万部突破の『さよならドビュッシー』シリーズ最新刊。…データベース…
先月から『さよならドビュッシー』シリーズを集中的に読んでいます。時系列的には、この物語は先の「合唱」の直後の出来事になっています。要するに天生の弁護で無罪を勝ち取ったあとです。そして、今回は「いつまでもショパン」でショパンコンクールを戦った榊場隆平を通して物語が進んでいきます。
シリーズですからここでも殺人事件が発生します。そして、その重要参考人が榊場隆平なんですなぁ、何しろ殺人現場が榊場の練習室なんですから。ただ、前作とパターンが似ているなぁ。岬洋介の登場の仕方も、榊場が岬にSOSメールを送ります。すると、コンサートをキャンセルして帰国していた岬は即座に駆けつけてきます。前作の続きですからねぇ。そして、ここでもVSOPです。
「友人を助けるのに、理由は必要でしょうか」とね。
そして、欠点でもある自信を失って弱った榊場のメンタルもしっかり支えます。この小説のもう一つの側面は榊葉の成長の物語でもあります。さらに、与えられた才能は、自分以外の人間のために使うべきで、人のためなら、案外頑張れるものですよ、と諭します。うーん。talentとgiftの違いですねぇ。詳しくは第4章を読んでくださいね。
そうそう、この巻では榊場はモーツァルトのピアノ協奏曲を引っさげて全国ツアーをすることになります。ピアノ協奏曲20番、21番、23番というオール・モーツァルト・プロです。場所は東京上野の文化会館、バックを務めるのは東京都交響楽団、指揮は矢崎ゆかりという設定です。この設定で行くとこの女性指揮者は都響を振っているということで三ツ橋敬子さんでしょうかねぇ。
ストーリーは、その最初のコンサートで野次を飛ばされダメージを受けてしまうところから大きく動きます。そして、次のコンサートは延期となります。で、その後に殺人事件が置きます。このタイミングで岬が登場するんですなぁ。事件にはいろいろ伏線が張られていますが、こいつが怪しいなぁ、と思った人物がやはり怪しかったです。これだけシリーズを読んでくると大体読めてきます。(^_^;)
さて、この本の巻末にこうありました。
次回、『いまこそガーシュイン』(仮題)をお楽しみに
ということですが、まだ単行本としては発売されていないようです。ショパンコンクールでファイナリストにアメリカ人がひとり入っていましたので、彼をメインに描かれるのでしょうが、岬洋介との接点はあまりなかったような気がしますけど、彼の兄が奇跡の7分間に関係していたので、そこから引っ張るんでしょうかねぇ?