カラヤン/ベルリン・フィルの新世界
曲目/
ドヴォルザーク/交響曲 No.9 ホ短調 Op.95 「新世界より」
1. Adagio - Allegro molto 9:44
2. Largo 12:57
3. Scherzo. Molto vivace 8:13
4. Allegro con fuoco 11:02
ドヴォルザーク/スラヴ舞曲 No.8 ト短調 Op.46-8* 4:34
ベルリオーズ/ラコッツィ行進曲** 4:15
指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音/1957/11/28,29、1958/01/6,7 1958/05/18-20 グリュンネヴァルト教会、ベルリン
1979/01/02,03* フィルハーモニー、ベルリン
1978/12/29,31、1979/01/03** フィルハーモニー、ベルリン
P:ウォルター・レッグ
ミシェル・ゴルツ*,**
E:ホルスト・リンドナー
ウォルフガング・グーリッヒ*,**
EMI 512096-2
手元にあるのはEMIから発売された「カラヤン・ザイフェルトエディション」第収録の一枚です。この「新世界より」はレコード時代は色々な組み合わせで散々発売されましたが、同じEMIに1974年に再録音されたこともあり、現在ではほぼ忘れ去られた演奏になっています。カラヤンの「新世界より」はセッションとしては5回録音されていますが、そのうちの4回はベルリンフィルと録音しています。面白いことに、手兵だったフィルハーモニア管弦楽団とは録音していないんですなぁ。今回初めて気がつきました。
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界から」 |
第1楽章 |
第2楽章 |
第3楽章 |
第4楽章 |
合計 |
カラヤン/ベルリンPO 1940/03 |
0:9:47 |
0:13:11 |
0:7:27 |
0:9:47 |
40:12:00 |
カラヤン/ベルリンPO 1957/11 |
0:9:44 |
0:12:57 |
0:8:13 |
0:11:02 |
41:56:00 |
カラヤン/ベルリンPO 1964/03 |
0:9:18 |
0:13:06 |
0:8:13 |
0:10:58 |
41:35:00 |
カラヤン/ベルリンPO 1977/01 |
0:9:36 |
0:13:03 |
0:8:21 |
0:10:54 |
41:54:00 |
カラヤン/ウィーンPO 1985/02 |
0:9:53 |
0:12:21 |
0:8:31 |
0:11:21 |
42:06:00 |
小沢/サンフランシスコ 1976/05 |
0:12:36 |
0:12:00 |
0:7:45 |
0:9:56 |
42:17:00 |
小沢/ウィーンフィル 1996/01 |
0:12:36 |
0:12:29 |
0:7:48 |
0:11:52 |
44:45:00 |
オリジナルは、「新世界より」とスメタナの「モルダウ」のカップリングでしたが、この組み合わせで初めて発売されたのが、このカラヤンのレコードだったそうです。その後の指揮者はこぞってこの組み合わせで、レコーディングしたものです。
1950年台はEMIはイエスキリスト教会では無く、このグリュンネヴァルト教会を使って録音していました。しかし、最初のステレオ録音となるこのセッションはディスコグラフィによると非常に多くの時間を費やして収録されていることがわかります。そして、最初のセッションの日付の日にはヒンデミットの「画家マティス」も収録されているのです。で、こちらはこのセッションだけで収録は終わっています。ところが、「新世界より」はその後も日を改めてセッションが持たれています。カラヤンがじっくり試行錯誤して納得がいくまで演奏を練り直したあとが伺えます。
巷ではこの「新世界より」のディフェクトスタンダードは1964年のDGへの録音のようで、普通に検索するとその録音が最初に表示されます。その第1楽章は以下のような演奏です。
でもって、この1957-59の演奏は以下のようた演奏です。
冒頭の元の女装のあとのホルンの押し出しが全く違います。ホルンの2泊目を強調しています。この時代のベルリン・フィルのホルンの主席はベルンハルト・クロルです。でもってDGの1964年はゲルト・ザイフェルトが主席になっています。この違いが表現の違いになって現れているのでしょうか。まあ、一般的な表現は後者の解釈が多いようですが、楽譜でこんな表記になっています。つまり2拍目はになっています。そのまま解釈すればクロルの奏法なんですなぁ。で、個人的にはクロルの表現のほうが個性的で好きです。まあ、エディションの違いと言ってしまえばそれまでですがね。
ただ、このEMIの録音ちょっと残響過多なんです。それがマイナス点ですが、ティンパニも固めのマレットで打ち込んでいますからDGよりは締まって聴こえます。
有名な第2楽章はラールゴですが、これはアダージョとともにカラヤンの十八番でしょう。ここでの歌いまわしは独特と言っていいほど味があります。また、第3楽章はおしなべてじっくり腰を据えたテンポでことさら突っ走ることなく、ちゃんと手綱を引き締めて音楽を作っていきます。この各楽章のテンポ配分は絶妙です。このテンポだからこそ第4楽章が生きてきます。もうこの時代カラヤンは全体をレガート気味に音楽を紡いでいます。名曲だけにハンガリー系の指揮者に名演も多いのですが、その中では
ドイツ系指揮者としては名演の部類になるのではないでしょうか。下はその全曲の演奏です。