椙山フィルハーモニーオーケストラ
第55回定期演奏会
2022年12月27日(火) 開場17:30 開演18:30
愛知県芸術劇場コンサートホール
曲目/
1.A・ボロディン
歌劇「イーゴリ公」より「だったん人の踊り」
2.G・マーラー
交響曲第7番 ホ短調 (夜の歌(Lied der Nacht))
アンコール
3.ヨハン・シュトラウス/ラデツキー行進曲
4.エルガー/威風堂々第1番
指揮: 中村 暢宏
演奏: 椙山フィルハーモニーオーケストラ
このオーケストラは椙山女学園という女子校の中学と高校生で編成されたオーケストラです。上部組織に椙山女学園オーケストラがあり、こちらは大学生のオーケストラです。そちらの方は極めてオーソドックスな曲目が演奏会で並ぶのですが、こちらは意欲的で、カリンニコフの交響曲第1番やショスタコーヴィチの交響曲第12番、第7番などの曲目に果敢にチャレンジしています。そして、今回はマーラーの交響曲第7番という大曲にチャレンジです。正直言って期待半分、不安半分でした。
オーケストラとしては、学園祭の秋のオータムフェアで一度披露しているということなので破綻はしなかったのですが、やはり曲としてはソロパートで音落ちやアンサンブルの乱れが散見されました。80分にも及ぶ大曲を一気に演奏する集中力を維持するのはなかなか大変なんでしょうなぁ。
プログラム前半はボロディンの「ダッタン人の踊り」です。合唱を省いたオーケストラだけの演奏は定番です。ただ、多分朝からリハーサルをしていたのでしょう。この日はたくさんのお客さんが入っていましたのでホールの温度はかなり上がり、気になったところでは最初のチューニングからして揃っていませんでした。これがひとつ残念でした。
休憩後のマーラーでもそのチューニングの合わせがしっかりできていなくて、せっかくの演奏が半分興ざめの状態です。競争部分はそれほどでもないのですが、弱音の部分でのアンサンブルは微妙な音のズレが気になりました。以前どこかのオケの演奏で、楽章の間でも指揮者がチューニングを促し、アンサンブルを整えることがありましたが、こういう学生のオーケストラの場合そういうことは必要でしょうなぁ。
編成的に学生のオーケストラは金管のパーツが多めということで、金管が咆吼するマーラーの曲ではさらにそれが強調され、弦楽によるオブラードが効きにくいという側面もあり、マーラーの精神分裂症的な響きが増幅され、少々うるさい演奏になってしまっていました。特にこのコンサートホールのように音の良いホールでは残響が長いのでそういう金管のうるささが出てしまっていたのは残念でした。
技術的に曲を演奏することは今の学生のレベルでも可能でしょう。ただし、そこに人に聴かせるレベルで音楽をまとめるということに関しては難しいものがあるのではないでしょうか。
メインプログラムは今ひとつのレベルでしたが、アンコールで演奏されたラデツキー行進曲は楽しいものでした。最近はこの曲がアンコールで取り上げられることが増えた気がします。客席と一体になって手拍子で盛り上げるイベント性が受けているので週なぁ。また、最後の「威風堂々第1番」はこのオーケストラの十八番という曲で、この曲を演奏しないではコンサートを締めくくることができないようです。そのぶん演奏し慣れているということでは全員が楽しんで演奏していました。
来年も年末にコンサートを開催することは決まっているようです。大曲を演奏する気力と実力は保有しているのですから来年はチューニングをしっかりとして一段とレベルアップして演奏を披露してもらいたいのです。