タール&グロートホイゼン
メンデルスゾーン/八重奏曲
曲目/メンデルスゾーン
八重奏曲 変ホ長調 Op.20 (orig. 4vn,2va,2vc,1825, arr. P-duo by composer)
1. Allegro moderato con fuoco 14:10
2. Andante 7:08
3. Scherzo. Allegro leggiero 4:13
4. Presto 6:04
交響曲 No.1 ハ短調 Op.11 (1824, arr. P-duo,vn,vc by composer) *
1. Allegro di molto 9:30
2. Andante 6:32
3. Intermezzo 3:46
4. Finale. Allegro vivace 7:30
ピアノ/ヤール・タール&アンドレアス・グロートホイゼン
ヴァイオリン/オリバー・ヴィレ*
チェロ/ミカエル・ハクナザリャン*
録音/2008/09/09-12 フンク・スタジオ
P/マレーネ・ウェッバー=シァファー
E/マーチン・ボーグル
SONY 88875165872
2023年、年明けに聴いたCDはタール&グロートホイゼンのメンデルスゾーンでした。メンデルスゾーンの八重奏曲は好きな曲の人ですが、それを2台のピアノで弾いているということで注目したものです。
タール&グロートホイゼンの名前を知ったのは「のだめ」がプームの時でした。ソニーからのだめ関連の楽曲のCDが発売された時、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタK.448」の演奏でこのタール&グロートホイゼンの演奏が収録されていました。別のサントラのようなアルパムはテレビで使われていた第1楽章しか収録されていなかったのですが、ソニーの別のアルバムではこの演奏が全曲収録されていました。このCDについては下記で取り上げています。
なことで気になっていたアーティストでした。で、ソニーから発売されたタール&グロートホイゼンのボックスセットが出た時には、迷わず購入してしまいました。下記です。限定生産だったらしく既に市場からは消えています。
今日取り上げるCDはこのボックスセットの9枚目に収録されているものです。びっくりしたのはこれが作曲者自身が2台のピアノのために編曲した楽譜を残していたということです。もともとは、この曲はメンデルスゾーン自身が第3楽章だけはオーケストレーションしていて、多くの指揮者が管弦楽曲版を残しています。このブログでもミュン主/ボストン響の演奏を以前取り上げています。
個人的にはメンデルスゾーンの作品の中で室内楽作品としては一番好きな作品です。イスラエル出身の女性ピアニスト、ヤアラ・タールと、ドイツ出身のアンドレアス・グロートホイゼンの2人。タールはテル・アヴィヴの音楽院を経てドイツに留学し、ともにペーター・ホイフトヴァンガーやルートヴィヒ・ホフマンに学びました。このデュオは、高い芸術性を持つピアノ連弾曲、あるいはピアノ二重奏曲の発掘と紹介に務め、均質な音色と完璧にタイミングの一致した演奏は高く評価されています。
第1楽章から軽快なアレグロで演奏されています。メンデルスゾーンはこの作品のスコアに、「この八重奏曲はすべての楽器でシンフォニックなオーケストラ スタイルで演奏されなければならない。ピアノとフォルテは厳密に守られなければならず、この特徴の作品では通常よりも強く強調されなければならない」と指示しています。
作曲者自身のピアノ譜があるということですから、ごまかしはききません。ただ、元が八重奏曲といってもパート的にはヴァイオリンとヴィオラ、そしてチェロという構成ですからそれほど複雑な本局にはなりませんわな。ここでは二人の息のあったピアノでしかも響が同質ということでは内声部まできっちりと音がシンクロしています。
この曲で一番有名なのは第3楽章のスケルツォでしょう。この楽章はメンデルスゾーンはさらに弦楽合奏用に編曲しています。トスカニーニの残された録音では彼はさらに手を加えてコントラバスも含めた編曲版で録音を残しています。
もともとがメンデルスゾーン16歳の時の作品ですが、若書きにしては完成された作品です。屈託のない明るさに満ちた音楽で親しみやすいメロディとともにここでもコロコロと転がるようなテンポで音楽が進んでいきます。
第4楽章は集大成的な楽章でそれまで使われてきた旋律がここで繰り返し登場します。構成的にはフーガの楽章でその流れの中で第3楽章のテーマが後半登場してきます。このフーガの構成を聴いているとモーツァルト交響曲第41番のフィナーレを連想してしまいます。
この音源、YouTubeで見つかりませんでしたからアップしてみました。
さて、もう一曲収録されているのが交響曲第1番です。こちらも作曲者自身が室内楽用に編曲したバージョンが存在するのだそうです。で、ここでは二人のピアノとヴァイオリンのオリバー・ヴィレ、チェロのミカエル・ハクナザリャンとの四重奏で演奏されています。メンデルスゾーン15歳の時の作品ですが、それまでの弦楽のための交響曲とは違うしっかりした作品に仕上がっています。演奏会でもほとんど取り上げられることがない、全集を製作した指揮者が録音しているぐらいの曲で、さらに弦楽四重奏の形で演奏されたものはYouTubeにも皆無という作品です。
でも面白いことにメンデルスゾーンはこの交響曲の第3楽章は間奏曲が書かれていますが、形式的にはスケルツォが良いのではということで、八重奏曲の第3楽章をオーケストラ版に編曲したものを差替えで使用するようにしたということなんです。で、ここでも第3楽章はスケルツェの方が採用されています。これがめちゃ楽しいです。そうそう、ゲテモノ好きのアバドは第1番の第3楽章はこのスケルツォも第1番の録音にプラスして録音しています。
P.S.
メンデルスゾーンの交響曲第1番の音源は記事のアップに間に合うように製作準備していたのですが、年末にiMacを更新したことによりOSが新しくなり、今まで使っていたソフトが使えなくなりアップが滞ってしまいました。ようやく、四苦八苦の末なんとか18時過ぎにアップできました。聴いていただくとわかると思いますが、上の八重奏曲は更新前のOSで製作していますが、音質の違いは歴然です。
これまでに取り上げたメンデルスゾーンの八重奏曲の記事