ショスタコーヴィチ評判記
著者:中川祐介、安田寛
出版社:株式会社アルファベータ
名盤だけでは、ショスタコーヴィチは語れない。いいも悪いも、聴いてみないと分からない。2005・2006年に新発売のショスタコーヴィチ作品約120タイトルすべてを聴き破った2人のマニアが熱く語る、ショスタコーヴィチの時代。9人の指揮者の交響曲全集についても語る。---データベース---
ショスタコファンならご存知の通り2006年が生誕100年記念の年で、同じ年がモーツァルトの生誕250年で世間ではモーツァルトにばかり注目が行ってるせいで「たまにはショスタコーヴィッチの事も思いだしてあげて下さい」と言うそんな年でした。これに合わせてクラシックジャーナルが2005年夏(2005年はショスタコーヴィッチ没後30年)から2006年暮れにかけて出たショスタコーヴィッチ関係のCD全曲を聴きながらそれについて語ろうと言う企画がまとまって本になったものです。
これを実施したショスタコ・ビューローは中川右介・安田寛の二人で構成されています。いや~、こんな本を出されちゃ困るなあ、CDを買いたくなるから。特にこの評盤記はCDレーベルに追従する様な事はせずダメなものはダメと切り捨ててる所が痛快です。例えばロストロポーヴィチもショスタコの交響曲全集を完成させていて、小生もその一部を所有していますが、テンポ設定やルバートの掛け方が恣意的すぎるし感じたものです。その点をこの鼎談の中で安田氏がやはり指摘しているんですなぁ。また、それに関連して、クーベリックがチェコの自由化後に帰国して「わが祖国」を演奏して世間では話題になりましたが、この演奏も個人的にはあまりいい演奏ではなかったと感じていた部分を同様に指摘しています。そんなことで、なかなか共感してしまうわけです。ですから、逆に褒めている盤を聴きたくなると言う困った事になります。
この2008年ごろには確かにCDはショスタコーヴィチものが次々と発売されていました。小生もこの時代前後にマリス・ヤンソンスとオレグ・カエターニの交響曲全集を二つ購入しています。かたやベルリン・フィル、ウィーン・フィル、バイエルン放送響、フィラデルフィア管、サンクト・ペテルブルグ・フィル、ピッツバーグ響、ロンドン・フィル、オスロ・フィルという世界各国の8つのオーケストラを指揮して完成させた国際色豊かなものでて、カエターニはミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団を演奏したものでまとめられています。この二つの交響曲全集もリアルタイムでこの本で取り上げられておりその鮮烈な批評に一喜一憂したものです。
まあ個々の評判は実際に本を読んで貰うとして、ふたりのうち安田寛は対話の中身から大層まじめな堅物かと思ったらバーンスタイン指揮でショスタコの6番・9番のDVDが出たと言う所で日本語版は日本語と英語しか入っていないくせに国際版の4カ国語入りより高いのは許せない、日本語版はどうせなら声優に語らせればよい、バーンスタインには清川元夢か西川知道をあてればよいと書いてあったのを見てびっくりです。
この鼎談の期間中に、こんなにもショスタコの作品のCDが発売されていたのかとびっくりするぐらいの録音が世に出ています。協奏曲しかり弦楽四重奏曲然りで、既に廃盤になっているものも多いのですが、この本に共感したついでにコツコツと集めてみようかなと思っています。
そうそう、この本自体も絶版です。