ジョン・ウィリアムズ
スター・ウォーズを鳴らした巨匠
著者/神尾保行
出版/音楽之友社
スター・ウォーズをはじめE.T.やジョーズなど、数々のヒット作を手掛ける映画音楽作曲家ジョン・ウィリアムズ。彼の映画音楽をはじめ、コンサート作品、提供作品、トリビュート作品等をCDとともに紹介。---データベース---
2000年の12月に出版された本です。ジョン・ウィリアムズは、映画『スター・ウォーズ』、『ジュラシック・パーク』、『ホーム・アローン』などの最も象徴的なテーマ曲を書いた作曲家であることは百も承知でしょう。ただ、ジョン・ウィリアムズは、単なるサウンドトラックの作曲家ではなく、誰もが認める映画音楽の巨匠と言えるでしょう。また、ポスト・ロマン主義のスタイルを持つクラシックの現代音楽の作曲家であり、偉大な指揮者、ピアニストでもあり、ジャズ好きで、そのキャリアの初期にはヘンリー・マンシーニの「ピンクパンサー」ではピアニストとして参加していました。
90歳になった今年、映画音楽作家としてはインディ・ジョーンズシリーズの最終作で筆を置くと発表しました。スティーヴン・スピルバーグとの長年にわたる関係と同様に、ジョージ・ルーカスとの仕事も皆が知るところですが、それ以外にも様々な監督とコラボして魅力的な作品を残しています。これまでに米国のアカデミー賞を5回、ゴールデン・グローブ賞を4回、英国アカデミー賞7回に、グラミー賞では25回の受賞を果たしています。この本は2000年までの彼の足跡をその作品を紹介しながら辿っています。
目次
第1章 少年時代、キャリアの開始
第2章 ハリウッドのオーケストラへ
第3章 映画音楽作曲家へ
第4章 60年代後期~人間ドラマとミュージカル映画
第5章 70年代前半~パニック映画の時代
第6章 アルトマン/リット/そしてヒッチコック~個性的な監督との共演
第7章 スピルバーグとの出会い
第8章 前衛的なサスペンス・スコアの時代
第9章 SF映画時代の到来~『スター・ウォーズ』への参加
第10章 シンフォニックな作風への移行、そしてボストンポップスの監督に
第11章 E.T.の大ヒット、そしてオスカー受賞
第12章 三本の異色作とオリヴァー・ストーン作品、そして恐竜の音楽
第13章 クラシック系作品へ
第14章 新たなる挑戦 ミレニアムへ向かって
この章立ての他に6つの「コラム」記事が掲載されています。このコラムがまた読み応えがあります。ウィリアムズはアメリカ人ですが、先祖がアイルランドからの移民なのでそこにルーツがあるようで、イギリスの作曲家ヴォーン・ウィリアムズやウォルトンの作風にかなり影響を受けているようです。また、同業者ではバーナード・ハーマン、作曲家ではジェリー・ゴールドスミスをリスペクトしているようです。
一般にはやはり、ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」が起爆点になっていると思いますが、小生的には、1969年の「チップス先生さようなら」や1971年の「屋根の上のヴァイオリン弾き」なんですね。しかし、ルーツを辿るとTVシリーズの「1965年の「うちゃう家族ロビンソン」や1966年の「タイムトンネル」も彼が音楽を書いていたんですなぁ。当時はジョニー・ウィリアムズ名義でクレジットされていましたから気がつきませんでした。まあ、全話を担当したわけではなくいくつかのエピソードを担当したようですがね。
「屋根の上のヴァイオリン弾き」ではヴァイオリンをアイザック・スターンが独奏しています。
あげたらきりがないのですが、スペクタクル作品で最初に知ったのは1972年のジーン・ハックマン主演の「ポセイドン・アドベンチャー」でした。曲はエンド・クレジットですが、ヴォーン・ウィリアムズの南極交響曲を彷彿とさせるサウンドが繰り広げられています。
1974年の「タワーリング・インフェルノ」もポール・ニューマンとスティーヴ・マックインという2大スターが登場した大作でしたが音楽はややストリングスが貧弱でがっかりしたものです。
翌年の大作、「大地震」は今度はチャールトン・ヘストン主演でしたが、オーケストラとピアノをうまく絡ませていましたが、やはりイージーリスニング並みの安っぽい響きが残念でした。
そういうチープさをうまく逆手に取ったのはやはり、「ジョーズ」でしょう。コントラバスの低音をうまく利用してここに
パーカッションの打音をぶつけるという手法で緊張感と恐怖を作り出しています。この曲でアカデミー賞を受賞したのもうなづけます。
そして、1977年には「スター・ウォーズ」にたどり着きます。ここでは編集作業をルーカスがイギリスでやっていたということもあり、サントラの収録にロンドン交響楽団を使っています。ストリングスは13-13-10-10-6という編成にプラスして、オーボエ2、クラリネット3、ファゴット2、ホルン8、トランペット4、トロンボーン3、チューバ2、ティンパニ1、パーカッション2、ハープ2、ピアノ2の83人編成で演奏しています。録音はアンヴィル・スタジオで3月5日から始められました。そうそう、当時はこのロンドン響、音楽監督を務めていたのはアンドレ・プレヴィンでした。彼も1970年にはロンドン響で「ジーザス・クライスト・スーパースター」のサントラを録音していましたからねぇ。
この録音は3月5日、8日〜13日、15,16日と8日間かけて収録されています。メイン・タイトルは5回録音されそのすべてのテイクが特別編のサントラにはすべて収録されました。
さて、ジョン・ウィリアムズがボストン・ポップスの音楽監督になったというニュースにも驚いたものでした。実はアーサー・フィードラーの後任選びはエリック・カンゼルやミッチーメミラーなどがメインの候補であり、ウィリアムズは末席に名前があっただけでした。で、当初確定したのはジョン・コヴァリエというフリント交響楽団の指揮者でした。しかし、就任までに1年ほどブランクがあり、アンドレ・プレヴィンなどの後押しもあり、その間に聴衆受けの良かったウィリアムズが契約を勝ち取ったようです。1980年1月11日の新聞各紙はその就任を伝え、発表会では小澤征爾が彼を紹介しています。
ボストン・ポップスとしての仕事は5月初めから7月初めまでと、12月にクリスマス・ポップスを3週間行なっています。まあ、この仕事とボストン交響楽団としての仕事があるわけですからオケは大変で、自由ライはボストン交響楽団から主席が抜けたものがボストンポップスと言われていましたが、実際には別働隊のボストン・ポップス・エスプラネード・オーケストラが活動しているようです。こういうような裏話までこの本にはかかけています。
裏話といえば、ウィリアムズは作曲はしますが、オーケストレーションはオーケストレーターに任せているようです。このウィリアムズの陰で活躍しているのはハーバート・スペンサーという作曲家で、彼のリタイア後には1992年の「フック」からジョン・ニューフィールドが後を継いでウィリアムズと二人三脚で仕事をこなしているようです。
この本は作品的には1999年の「スター・ウォーズ・エピソード1/ファントム・メナス」までしか取り上げられていません。ジョンはこの後も、「A.I」、「ハリー・ポッター・シリーズ」、「ターミナル」、「宇宙戦争」、「リンカーン」などやシリーズ物の作曲を続けてゆくわけですが、この本の続巻が望まれたところです。しかし、それは叶わぬものとなってしまいました。
神尾保行氏とジョン・ウィリアムズ
そうなんです、作者の神尾保行氏は2017年ごろ無くなっていますから続編はありません。それが残念なところです。映画音楽ファン、ジョン・ウィリアムズファンなら絶対に読んでも損をしない本です。
この本は絶版になっていて、中古はプレミアム価格で販売されているようです。
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