カラヤン/フィルハーモニア
ビゼー/アルルの女、カルメン
曲目/ビゼー
「アルルの女」 組曲 No.1 (1872)
1. Prelude 6:57
2. Minuetto 3:15
3. Adagetto 3:00
4. Carillon 3:59
ビゼー 「アルルの女」 組曲 No.2 (1872,ギロー編1879)
1. Pastorale 6:23
2. Intermezzo 5:21
3. Minuetto 4:09
4. Farandole 3:31
「カルメン」 組曲 (1875)*
1. 第4幕間奏曲 2:22
2. 第3幕間奏曲 2:58
3. 第2幕間奏曲(アルカラの竜騎兵) 1:35
4. 第1幕前奏曲 2:20
指揮/ヘルベルト・フォン・カラヤン
演奏/フィルハーモニア管弦楽団
録音/1958/01/14,15
1958/01/16* キングズウェイ・ホール、ロンドン
P:ウォルター・レッグ
E:ロバート・ベケット、ダグラス・ラーター
ロバート・グーチ*
日本コロムビア OSー3020
このレコードは1961年8月に発売されています。この当時はEMIの中でも英コロムビアの発売権はまだ日本コロムビアにあったのですなぁ。ジャケット右上にはコロムビアとEMIのロゴがデザインされています。ちなみに、東芝が英EMIのコロムビアと日本コロムビアが契約終了により英コロムビア音源の発売権を得たのは1962年です。ということではほとんど最高期のコロムビアでの発売盤ということでしょうな。この当時、東芝はすでにエバー・クリーン・レコードという帯電防止材を添加した、いわゆる赤盤を発売していましたからこのカラヤンのコロムビア発売盤は貴重です。ちなみにこんなレーベルになっています。レーベルにはコロムビアの表記だけです。
ということでこのレコードは日本初出盤ということができます。ジャケットデザインはゴッホの「糸杉のある麦畑」のデザインが使われています。この絵はレコード時代は後々まで踏襲して使われています。
さて、肝心な演奏です。カラヤンとフィルハーモニア管としてはもう末期のレコーディングになります。1950年代の後半は、カラヤンはフィルハーモニア管との録音は小品が目立つようになります。
最初に「アルルの女」組曲が収録されていますが、これが録音順です。この日本盤の解説は岡俊雄氏が書いています。曲の解説はもちろんですが、最後に囲み記事で、カラヤンの演奏について書いています。再掲すると、
ヘルベルトフォンカラヤンは、今や名実ともにフルトヴェングラーの後継者として、ドイツ楽壇に君臨しているばかりでなく、ウィーン国立歌劇場、スカラ座の音楽監督も兼ね、指揮者としての最高の地位を占めている。カラヤンは広いレパートリーの持ち主で、レコードにおいても、彼の手がける範囲はモーツアルトからバルトークくまでまことに広い。その中で、比較的少ないのはフランス音楽であった。カラヤンにとってフランス音楽が得意ではなかったと言うのではなく、録音する機会が少なかったと言うべきであろう。そういう意味で、このビゼーの録音はレコード愛好家にとってありがたい録音である。「アルルの女」における緩やかなテンポの叙情性、「カルメン」におけるダイナミックスと緩急の妙趣。最近のカラヤンの幅の大きな感情と劇的表現が、このレコードに間然とするところなく見られる。
と書かれています。このフィルハーモニア管との録音の特徴をよく捉えています。「アルルの女」は前奏曲から歯切れのいいリズムで弦のアンサンブルが際立っています。中間部のサキソフォンも独奏者のクレジットはありませんが、しっとりとした響きで全体の音色は華やかでベルリンフィルの録音より音が明るい印象があります。多分録音会場のキングスウェイホールがいいんでしょうなぁ。
第2組曲の「パストラーレ」はのちのベルリンフィルの録音より遅いテンポで演奏されています。冒頭のホルンを中心とした管楽セクションと弦の掛け合いは面白い対比が聴けます。この部分の歌い方はフィルハーモニアに軍配が上がります。テンポもこちらの方が遅く、テーマ旋律をくっきりと打ち出していて好感が持てます。
カルメン組曲は、ビゼー自身が選曲をしたのではなく、ホフマンによって構成されたものです。一般的には以下のような構成になっていて、厳密には「ホフマン版組曲」と呼ばれるものです。
第一組曲 Carmen Suite No.1
前奏曲 (第1幕への前奏曲の後半部分)
アラゴネーズ (第4幕への間奏曲)
間奏曲 (第3幕への間奏曲)
セギディーリャ
アルカラの竜騎兵 (第2幕への間奏曲)
トレアドール(闘牛士) (第1幕への前奏曲の前半部分)
第二組曲 Carmen Suite No.2
密輸入者の行進
ハバネラ(恋は野の鳥)
夜想曲(ミカエラのアリア)
闘牛士の歌(エスカミーリョのアリア)
衛兵の交代(子どもたちの合唱)
ジプシーの踊り
しかしながら、この組曲はビゼー自身の手になるものではないと言うこともあって、この形のままで演奏されることは滅多にないようです。指揮者によって、その順番が変えられたり幾つかの曲が削除されるのが一般的です。ここではカラヤンは基本的に第1組曲を演奏しています。とはいえ、第4幕から下がっていって、最後に前奏曲を持ってきたカラヤンの配列はかなり変わっています。
これが1970年録音のベルリンフィルハーモニーとの演奏では全く曲順が逆になっています。いや、こちらの方が本来のスタイルでしょうな。
で、演奏はベルリンフィルの方がややアップテンポで演奏されているように感じます。第1幕への前奏曲なんか、小生にはシンバルの音がうるさすぎます。まあ、こういうドンシャリの音が嫌いで、レコード時代はDGのカラヤンは触手が動きませんでした。
まあ、これはウォルター・レッグとハンス・ヒルシュというプロデューサーのレコード会社のサウンドポリシーだったんでしょうなぁ。世間ではベルリンフィルの録音がもてはやされていて、大評判のような扱いを受けていますが、音楽的に纏まっているのはフィルハーモニアのような気がしてなりません。何となれば、最近のレコードブームで復刻されているのはこのフィルハーモニアとの録音ですからなぁ。
こちらはレコードになります。