同 級 生
著者/東野圭吾
出版/講談社 講談社文庫
同級生の宮前由紀子は俺の子を身ごもったまま、そして俺の愛が本物だったと信じたまま事故死した。俺にできる償いは本気の関係だったと皆に告白することと事故の真相を暴くことだけだった。やがてある女教師が関わっていたことを突き止めるが、彼女の絞殺体が発見されるや、一転俺は容疑者にされてしまう。---データベース---
東野圭吾さんの通算23冊目となる1993年に発表された学園ミステリーの異色作です。この時代設定が憎いですねぇ。まだ携帯電話は一般には不祈雨しておらず、ここでは登場しません。そんなことで主人公と仲間のやり取りは家電か相対でのやり取りが中心になります。まさにこの時代でないと成立しない展開です。
学園ものですが、冒頭いきなり妹の晴美の心臓に穴が空いているという公害問題が登場します。この短いプロローグは後半の展開に重要な意味を持ってきますが、この時点では関連性がわかりません。そして、本編はいきなり野球部のマネジャーである宮前由希子がトラックに轢かれて死亡した事件で幕を開けます。
この亡くなった由希子は妊娠していました。そして、相手は同じ修文館高校三年生の野球部キャプテンの西原壮一だということがすぐに明らかになります。壮一があることでヤケになっているときに、前から壮一に好意を持っていた由希子と一夜を共にすることになり、その結果彼女は妊娠したのでした。しかし壮一は、この事故があるまで彼女が妊娠していた事実を知利ませんでした。それを告げたのは天文部の水村緋絽子でした。
成りゆきで由希子と肉体関係を持ち妊娠させたことが今回の事故の元々の原因でもあったことに後悔と責任を感じた壮一は、事故の直接の原因を調べることにします。まあ、こうして交通事故からその背後にある不思議な謎を追うことになります。生活指導の女教師・御崎藤江は壮一のクラスで変死を遂げます。こうして警察が事件に関与しだします。もちろん最大の容疑者は西原壮一ということになります。自分が容疑者ということで壮一は野球部仲間の川合一正と楢崎薫と一緒に真犯人を追い始めます。
まぁ、ここからは事件が二転三転し、主人公の本当の恋人が明らかになったり、事件の真相がひっくり返ったりといういつもながらの東野マジックに翻弄されるわけですが、妹の病気の原因となる話は、中途半端な展開に終わってしまい何処か歯切れの悪さを感じないわけにはいきません。
展開的には高校生探偵と刑事が事件の真相を突き止め、それを刑事が謎解きという形で終盤を迎えるわけですが、いつもながらのキレがなく、終わってみれば何だったの?という結末です。妹の件は解決したわけでなく、タイトルの「同級生」という含みも決してハッピーエンドの風は吹いていません。
時代の流れを読んだ学園もの推理小説としてはテーマが中途半端で終わってしまったなぁという印象です。