ヴェンツィンガー
「水上の音楽」
曲目/ヘンデル
水上の音楽 全曲
第1=へ長調HWV348・・・1715年成立、弦、ホルン、オーボエ
Ouvertüre
Adagio e staccato
Allegro-Andante-Allegro
(Minuet)
Air
Minuet
Bourrée
Hornpipe
(Andante)
第2=ニ長調HWV349・・・1717年成立、弦、トランペット、ホルン、オーボエ
(Allegro)
Alla Hornpipe
Minuet
Lentement
Bourrée
第3=ト長調HWV350・・・1736年成立、弦、ピッコロ、フルート
(Minuet)
Rigaudon 1&2
Minuet 1&2
Country Dance (Gigue) 1&2
指揮/アウグスト・ヴェンツィンガー
演奏/バーゼル・スコラ・カントールム合奏団
録音/1965/09/20-24 チューリッヒ ノイミュンスター教会
P:マンフレッド・リヒター
ぃけペーター・シュヴァイクマン
アルヒーフ MA 5037(1198 365)
最近捕獲したレコードで、ヘンデルの「水上の音楽」を聴いています。この曲はメジャーなわりには、結構「くせもの」であるといってもいいでしょう。現在、新ヘンデル全集(レートリヒ版)によれば、調や楽器編成によって、この曲は3つの組曲から構成されている、と考えられています。ここで採用されている版です。バルヴ構造のなかった当時の管楽器を考えると、これらを一度に演奏した、とは考えられないからです。3つの組曲から構成されていますが、成立年代や楽器構成からこれは当然と言えるのではないでしょうか。
小生か最初に耳にしたのは近代管弦楽版とも言えるはへティの編曲による演奏でした・ただ、これは曲数としては6曲しかなく、最も有名な曲をピックアッブしています。で、最初に聴いた全曲版はパイヤールによる演奏でそこでは「クリュサンダー版」が使われていました。今ではこちらは旧ヘンデル全集版ということになっています。
1960年代に発売されたものとしては、G.レオンハルト登場前の頃で、今日聴きなれたピリオド演奏の一歩前といった感じですが、それでも当時最先端の古楽演奏で最高の「水上の音楽」といっていいでしょう。ただ、このころの古楽演奏は管楽器は別として、弦楽器は既存のボディにガット弦を張って演奏するというスタイルであったと思われます。
第一組曲ヘ長調の序曲を聴くと今日のピリオド演奏とはさすがに違う、古楽器とはいえ弦はヴィブラートをかけ、渋く厚みを帯びます。ちょっとデッドな響きかと錯覚しますが、バロック・オーボエがクリアに鳴ると好録音であることがわかります。それに対して管楽器は直線的なストレートな響きで、ナチュラル・ホルン&トランペットの幾分粗野で豪快な響きには魅了されます。
ホルンの入るアレグロはゆっくりめのテンポでナチュラル・ホルンのトリルを大らかながらきちんと聴かせてくれます。曲間を繋ぐオーボエやヴァイオリンのソロも趣味がよく、音楽的に実直で妙な飾りっ気はなく、ニ短調のブーレー(アンダンテ)も味わい深い演奏です。
第二組曲の序曲ではゆったりとしたテンポでトランペットが入りパっと華やぎますが、ナチュラルトランペットの最高の輝きを感じることができます。この頃のアルフィーフの録音は一本ポリシーが通っており、適材適所の録音が聴けます。エラートのように冷たい感じがするわけでもなく、左右に拡がった弦楽、少し奥から聴こえるオーボエや金管、音場の立体感もあり、通奏低音はハープ、リュート、チェンバロが入りゴージャスで各楽器をしっかり捕えています。
最近の古楽は奇をてらった演奏が多く、初めて聴くぶんには新鮮なのですが、繰り返し聴くと飽きてしまうものが多いように思います。その点このヴェンツィンが/バーゼルの演奏は繰り返し聴いても飽きがこない演奏でホッとします。
夏の日の夜に聴くにこの「水上の音楽」はぴったりです。