マックス・ルドルフの「英雄」 | geezenstacの森

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マックス・ルドルフの「英雄」

 

曲目/

Beethoven: Symphony No. 3 in E flat major

1.Allegro con brio    15:03

2.Marcia funebre. Adagio assai    14:03

3.Scherzo. Allegro vivace    5:43

4.Finale. Allegro molto    11:56

Felix Mendelssohn Bartholdy: Symphony No. 5 in D major*

1.Andante - Allegro con fuoco    10:51

2.Allegro vivace    5:41

3.Andante    3:35

4.Choral "Ein feste Burg ist unser Gott"

 Andante con moto - Alle gro maestoso    9:16

 

指揮/マックス・ルドルフ

演奏/シンシナティ交響楽団

 

録音/1967/12/20-22

   1966/12/07*

 

MCA  MCD80115

 

 

 今日紹介するマックス・ルドルフ&シンシナティ交響楽団による写真のCDはほとんど日本では流通していないのではないてとしょうか。レーベルはMCAです。1990年代にあってはほとんどクラシックとは縁がありませんでした。やがてユニウァーサルに吸収されるのですが、最初は米国デッカとして設立されました。それを1962年にMCAが買収しています。この時デッカの商標権を所有した関係で日本ではデッカレーベルは使えなくなり日本では「ロンドン」レーベルを名乗ることになります。米MCAは次々とレーベルを買収し、ABC、モータウン、ケフィン、RGPなどを抱えていました。まあ、ジャズやソウルに強いレーベルだつたんですなぁ。クラシック関係ではコマンドも吸収しています。そう、この録音は元々はコマンと・クラシックから発売されていたのです。1990年代は松下電器が映画事業とともにMCAを買収していました。当時の発売窓口はビクターだったのですが、スター・アーティストのいないコマンドは全く無視されました。記憶では日本盤はCDでは発売されたことはないでしょう。

 

 ただ、レコード時代はキングレコードから1000円盤で大量に発売されています。ここでは、「Millennium Classics」シリーズの一枚として発売されました。このシリーズではこんなものが発売されていました。ただ、この時代の演奏は呈示部の繰り返しがありません。

 

 

 

 

シェルヘンやロジンスキー、ボールト、ピアノではバレンボイムやバドゥラ=スコダの初期の録音も含まれています。

 

 さて、指揮をしているマックス・ルドルフ(Max Rudolf/1902~1995)はドイツ出身(フランクフルト生まれ)の指揮者です。1940年に渡米、その後アメリカ国籍を取得、1958年から70年までこの「シンシナティ響」の音楽監督を務めた人です。シンシナティ響は1895年にオハイオ州シンシナティに創立された全米で5番目に古い歴史を持つオーケストラです。歴代音楽監督にはレオポルド・ストコフスキー、フリッツ・ライナー、ユージン・グーセンスなどそうそうたる顔ぶれが見られるのてすが、それほど録音には恵まれていません。トマス・シッパースが急設したのが響きましたねぇ。ただ、ポップス・オーケストラとしてのシンシナティ・ポップスは大躍進しました。ただ、こちらもカンゼルが死去し発売元のテラークも活動を休止したのでまた、低迷しています。今の常任はルイ・ラングリーですが、知っている人は少ないのではないでしょうか。

 

 この録音はマックス・ルドルフとシンシナティ交響楽団が初来日した年の翌年に行われています。コンビの最晩年の録音ですからなかなかしっかりとした演奏に仕上がっています、

 

 第一楽章から骨太の演奏で冒頭の和音の打ち込みはどっしりとしていて気持ちがいいものです。なかなかここまでしっかり和音を鳴らしている演奏には巡り会えません。テンポはやや遅めでリズムの刻み方が前アクセントで音楽に推進力があります。それでいて演奏時間は15分台ですからじっくり音楽を奏でているのがわかります。ただ、この時代は呈示部の繰り返しは省略されていますし、コーダの部分のトランペットの処理は現代的に改定しています。そういう部分ではいかにも旧タイプの録音ということはできます。このマックス・ルドルフという指揮者は指揮の教則本を書いているほどの人物ですから、音楽の造形はしっかりしています。

 

 第二楽章はやや速めのテンポで淡々と葬送行進曲を進めていきます。旋律線は丁寧に処理していて、このオーケストラの当時の演奏水準の高さを窺い知れます。ドイツ系の演奏に比べて深みという点ではちょっと物足りない部分もあるのが欠点といえはそうなのでしょう。

 

 第三楽章はテンポは中庸です。第二楽章のテンポからするとあまり変化が感じられないところはマイカスでしょう。また、ホルンの音がオーケストラの中に埋もれてしまっていてあまり強調されていません。このホルンの響きを堪能したい人には物足りなさを感じるのではないでしょうか。

 

 第四楽章は堂々とした音作りで、全体としての音楽作りはまとまっています。行ってみれは終わり良けれはすべて良しというかんかくでしょうか。とにかく音の一音一音がしっかりと弾き込まれているので音楽に張りがあり、現在の速めのテンポでさらりと流れていく音楽とは違います。音楽に句読点がはっきりとしているのでどっぷりと音楽の中に浸ることができます、

 

 1960年代の録音に慣れ親しんでいる小生にとって久し振りな味わうこの充実感は、これがベートーヴェンの原点だなぁと再認識させるものでした。この録音は改めて、マックス・ルドルフという名を再認識させたものです。まあ、聴いてみてください。

 

 

 このCDにはもう一曲、メンデルスゾーンの交響曲第5番か収録されています。いわゆる「宗教改革」と呼ばれている作品です。曲のモチーフにルター作曲のコラール『神はわがやぐら』、そしてドイツの賛美歌『ドレスデン・アーメン』が用いられているのがそう呼ばれる所以でしょう。

 

 ルドルフの解釈はここでもリズム感を全面に押し出した骨太の演奏になっています。たた、全体に四角四面の解釈による演奏でメンデルスゾーンの持っている歌心がほとんど感じられません。まあ、このCDは「英雄」を楽しむことができれはそれで満足しましょう。

 

 残念ながら、彼の指揮する録音は伴奏ものしか流通していないようです。