ウィーンフィルの
ルドルフ・ケンペ
曲目/
シューベルト/ロザムンデの音楽D.797
Ⅰ.序曲 10:25
Ⅱ.間奏曲第三番 変ロ長調 6:58
III.舞踏音楽 第2番 ト長調 4:57
グルック(モットル編):舞踏組曲 第1番
Ⅰ:序曲~快活なアリアーレント~快活なアリア 5:07
Ⅱ:精霊の踊り 7:15
Ⅲ:ミュゼット 2:10
Ⅳ:快活なアリア~シチリア舞曲~快活なアリア 4:48
メンデルスゾーン:序曲”フィンガルの洞窟” * 10:33
ウェーバー:歌劇”オベロン”序曲* 9:50
ニコライ:歌劇”ウィンザーの陽気な女房たち” * 8:50
指揮/ルドルフ・ケンペ
演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1961/12/11.12.14-18 ムジークフェライン、ウィーン
P:ビクター・オロフ
E:フランシス・ディルヌット、ピーター・アンドリュー*
新星堂 SAN-12(原盤EMI)
これは「新星堂」が一番元気があった頃に発売されたCDです。そうです、販売店で最初にオリジナルCDを手がけたのはタワーレコードではなく「新星堂」だったんですな。1990年に発売されています。このシリーズ1000円盤の走りでもあり、それまで、「新星堂」などでCDを買ったことがなかったのでびっくりしたのを覚えています。手元の資料ではこのシリーズ30枚発売されています。
ご覧のようにかなりマニアックな内容になっています。ここら辺が、レコードメーカーと小売店のセンスの違いなんでしょう。
これはケンペがウィーンフィルと残した録音したアルバムからチョイスされた録音です。
このCDの冒頭には、シューベルトの「ロザムンデ」の音楽が収録されています。ルドルフ・ケンペはオーボエ奏者でもあったことから、内声部に沈みがちな木管楽器をセンシティヴに鳴らす独特のバランス感覚を持つ指揮者でした。その特長は正統的、標準的な演奏で、しかもオーケストラは十分歌っています。ドイツ人らしく重厚で、しかも若々しい力もあります。ただ、聴衆をうならせる圧倒的な個性の迫力が乏しかったようで、当時の日本でのレコード批評の関心事には向かなかったよです。しかし、歌劇場での活動に支えられた劇的表現といった積極的要素に富んでいて説得力の高いものです。
さて、2曲目はグルックの作品ですが、モットルが編曲しています。フェリックス・モットルと言う名前はほとんど忘却の彼方に沈んでいるのですが、19世紀にはワーグナー作品の有能な指揮者として名を馳せた人物らしいです。また、作曲活動も行い、「アグネス・ベルナウアー」や「王様と歌手」「エーベルシュタイン伯」「ラマ」などの歌劇や多数の歌曲を作曲し、その他にも2曲の交響曲や同じく2曲の弦楽四重奏曲を残しているようです。
しかし、それらは現在ではほとんど演奏されることはなく、かろうじてこのグルックの作品を下敷きにしたこのバレエ組曲が記憶に残っているくらいです。また、ワーグナーの「ヴェーゼンドンク歌曲集」を管弦楽用に編曲したこともかすかに記憶に残っているようで、どうやらアレンジャーとしての才能は高かったようです。
このグルックの作品の下敷きにしたバレエ組曲も古風な感じはするものの、疑いもなくバロックの音楽をロマン派の音楽に仕立て直しています。
ちなみに、モットルが選んだグルックの作品は以下の通りです。やはり、何といっても2曲目の「精霊の踊りが有名ですね。
後半は序曲周からの抜粋です。最初はメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」です。ここでのケンペはあまり劇的な表現は狙っていません。淡々としながらウィーンフィルのアンサンブルの美しさを前面に出した演奏を心がけているようです。この一連の録音はヴィクター・オロフが担当しています。彼は元々はデッカのプロデューサーでした。アンセルメ/スイス・ロマンドの録音はステレオ初期は彼が出がけていましたし、自らも指揮したものも残しています。そのオロフがHMVに移籍してこの一連のケンペの録音を手がけています。もちろんデッカのゾフィエンザールは使えませんからウィーンフィルの本拠地、ムジークフェラインでの録音です。反対にそういう意味では、デッカを知り尽くした男がEMIにその響きの名残を残した響きを届けていたとも言えます。
ウェーバーの「オベロン」は当時のLPの再生音で懐かしく聴くことができます。
最後はオットー・ニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」の序曲です。これらの序曲は1958年のステレオ初期の録音です。これらの序曲周はオロフとピーター・アンドリューというデッカコンビEMIのために録音しています。多分カールショーの台頭が地滑り的にこういう移動を引き起こしたんでしょうなぁ。
さて、演奏は冒頭ややゆっくり目のテンポでケンペはウィーンフィルの弦の響きを十分歌わせています。やや時代色を感じる演奏ですが、これはこれで聞き惚れます。
これらの録音は2021年にタワーレコードからSACDの形で復刻されました。ただ、小生はSACDには興味がありませんので未だにこの録音を愛聴しています。
下はSACDのものです。