アンサンブル木蔭
第59回定期演奏会
今年の定期演奏会は、いつもの会場のウィルあいちが9月1日から2023年いっぱいまで工事に入り舞台が使えなくなるため、例年は10月ごろの開催なのですが、今年は2~3ヶ月も早い開催になりました。この会場は地下鉄市役所駅から名古屋城方面ではなく、反対の大久手方面へ歩きますのであまり知られていません。
すぐ北側には名古屋市市政資料館があります。
今回のプログラムは以下のようになっていました。
第1ステージはマンドリンのためのオリジナル作品が演奏されました。最初はラッファーレ・カラチェの「ジェノヴァ序曲」です。楽曲としては急ー緩ー急にイタリア式女装のついた形式で、マンドリン属の持つ優美な旋律と響の軽快さを楽しむことができます。ただ、最初の曲ということでやや音量が小さく十分曲の魅力が伝わってこなかったのが残念でした。
続くコペルティーニの「夜曲」もマンドリン合奏用の作品です。基本「ノクターン」ですから静かなメロディが流れます。
第1ステージ最後の曲はイタリアの作曲家「ファルボ」の組曲「スペイン」です。組曲ということで4つの曲から構成されています。ただ、2曲目と3曲目は続けて演奏されます。
1. Serenata Castigliana(カスティーリャのセレナータ)
2‐3. Jota e Canzone(ホタとカンツォーネ)
4. Bolero(ボレロ)
この曲あたりからエンジンがアタたまつてきたようで、ダイナミックな演奏になってきました。
第2ステージは尺八の後藤晴彦氏がステージに登場し日本の伝統楽器とマンドリンのコラボが実現していました。
違和感があるように感じますが、実祭の演奏はそんなこともなく下のような演奏に仕上がっていました。ただ、安全を期してテンポが思ったよりゆっくりで下の演奏ぐらいのテンポなら良かったのになぁと思ってしまいました。
残念ながら尺八とマンドリンの共演は珍しいようでYouTubeには他の音源は上がっていませんでした。当日は演奏が録画されていますのでいずれアップされるのではないでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。
なをアンコールには尺八のソロで「アメージング・グレース」が演奏されました。元々はバグパイプで演奏されるものですが、単音のアメイジング・グレイスの響きもいいもんです。
休憩でホワイエに出てこられた後藤晴彦氏
第3部はクラシックの名曲をマンドリン合奏のために編曲した曲が演奏されました。レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲」です。大曲ですが、リュート自体がマンドリンの親戚みたいな楽器ですからこのアレンジは違和感がありません。
そして、最後はスメタナの「モルダウ」です。普通これぐらいの曲になると最初の出だしはフルートを使うのがスタンダードですが、今回は全てマンドリン属の楽器で管楽器のパートもカバーしていました。もちろん通奏低音的にコントラバスは入ります。
それでも、細かいニュアンスまでマンドリンで表現されていて圧巻でした。最後の方にはトライアングルやシンバルなども活躍しますが、そういう部分はコントラバス奏者の一人が打楽器に楽器を持ち替えて対応していました。こういう曲はアレンジが全てですから最小限の打楽器で原曲のニュアンスを導き出していたのには感服です。ネットには金管やティンパニまで使って演奏しているものがほとんどです。今回の編曲版は是非ともYouTubeにアップしてもらいたいものです。
さて、最後にもアンコールが用意されていました。今のご時世を反映してウクライナのひまわり畑を見事に映像に取り込んだヒットリオ・で・シーカの名作「ひまわり」が演奏されました。この曲には尺八の後藤晴彦氏も再び登場して、尺八との合奏版で演奏されました。1970年に公開されたソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニが主演した映画でしたが、戦争の悲惨さをシリアスに描いていました。音楽はもちろんヘンリー・マンシーニです。いい曲で締めてくれました。