公事宿 裏始末3 濡れ衣奉行 | geezenstacの森

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公事宿 裏始末3

濡れ衣奉行

 

著者/氷月葵

出版/二見書房 二見時代小説文庫

 

 

 材木石奉行瀬能一之進の一人娘・綾音は、伝馬町の牢に送られる父の駕籠にすがりつき、なんとしても濡れ衣を晴らすと叫んでいた。折しも通りかかった、公事宿で筆耕の仕事をしている若き侍矢野数馬は、綾音を公事宿に連れて行った。濡れ衣で切腹させられた義父の無念と奉行が重なったからだ。はたして公事師たちの手助けで奉行の濡れ衣は晴らせるのか!

 

   武家の事件に、果たして街中の一介の公事師が公事として関わることができるとは到底思われないのですが、ここではそれが可能というストーリーで進んでいきます。そして、木材石奉行は大岡越前時代3名いましたが、配下に手代や同心が30名以上いたということですから、こんなに簡単に材木石奉行が罷免ではなく島流しになるという設定はちょっと解せません。

 

 まあ、そういうディティールにこだわらないで読み進めば、それなりに面白いストーリーです。男と女の複雑な関係が時間の根底に深く関わっているところは、今の時代でも変わりません。ただ、表の仕事と裏の仕事のキレがあまり芳しくなく、ちょっと消化不良を起こします。

 

 さて、主人公の秋月藩の動きとしては、矢野一馬の素性も国家老の仲間内には知れるところになります。そして、実の父ともなる大殿にも間近で接することになります。もう、こういうストーリーの進展では大団円が近いと感じさせずにはおられません。

 

 次巻では少々寄り道をしますが、一気にラストまで突き進むことになります。