第20回プランタン管弦楽団演奏会
[日時] 2022年7月3日(日) 13:00開場 13:45開演
[場所] 愛知県芸術劇場コンサートホール
(地下鉄栄駅より徒歩3分)
[指揮] 中村暢宏 [オルガン] 吉田文 *
[曲目]
L.v.ベートーヴェン バレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲
O.レスピーギ 交響詩「ローマの松」 *
C.サン=サーンス 交響曲第3番 「オルガン付き」 *
<アンコール>
フランク 天使の糧
猛暑が続く名古屋ですが、この日は朝からかなりの雨が降り、気温も30℃を下回り久しぶりの過ごしやすい1日となりました。しかし、日本はまたぞろコロナの感染者が増えつつあります。そんなことで、この日は絶妙なタイミングのコンサートでもありました。
昨年は頃中と言うこともあり無料で開催されたコンサートですが、今年はまた有料のコンサートに逆戻りしていました。我が家へは案内状が届いたので、曲目も魅力的なプログラムだったので出かけることにしました。20周年記念コンサートと言うことで、今回はプログラムがクリアケースに入っていると言うなかなか洒落たものでした。
今回のコンサートのオーケストラ配置図です。下手にはチェレスタやハープピアノが並びます。また今回はオルガンを使う曲と言うことで、オルガンブースにも照明が当てられています。
また、2曲目に坂田演奏を伴う曲が配置されていますので、上手3階席にはバンダ席が用意されていました。
オープニング曲は、小ぶりな編成のベートーベンの「プロメテウスの創造物序曲」でした。実はこの曲は結成記念演奏会で演奏された曲目です。設立当初は楽団員の数も少なかったので、こういう曲目が選ばれたのでしょう。演奏そのものはキビキビとしたテンポで、20年間の進歩の跡が伺えるものでした。中でも、ティンパニーは固めのマレットを使った打ち込みでなかなかシャープな響きをもたらしていました。こういう演奏は、以前、ハーデイング指揮のマーラー室内管弦楽団の来日演奏会を聴いた時以来で、それを思い起こさせました。
2曲目はレスピーギの「ローマの松」です。この曲にも実はオルガンが使われています。そんなことで、オルガンをたっぷり楽しめる構成になっていました。記憶では、この曲の演奏でオルガンを使ったものは初めて聴いたような気がします。もともとオーケストレーションの華やかな曲ですが、オルガンが入ることによってもっときらびやかで壮大な音楽に仕上がっていました。テンポは早からず、遅からずの安定のテンポできらびやかなレスピーキリの世界が描かれました。まあ、クラリネットがひっくり返るというアクシデントはありましたが、全体はサウンドがブレンドされ、バンダが突出して特に目立つこともなく、オルガンの響きとともにホールが音楽に満たされました。興味深かったのはティンパニが曲の前半と後半ではマレットを持ち替えて後半は硬い響きの中で壮大にティンパニを鳴らしていたことです。
休憩の後はサン・サーンスの交響曲第3番ですが、この曲は実は第10回目のコンサートでも演奏された曲です。この10年の進歩の後が伺えた演奏と言えるのではないでしょうか。前半の第一部は、かなり遅めのテンポでじっくりと音楽が紡ぎ出されていました。レコード時代にはオーマンディの演奏を聴いていましたがどちらかと言うとかなり早めのテンポで音楽を作っていましたので、最近のこういう遅いテンポの演奏は久しぶりに実演で聴くような気がします。
冒頭の導入部の弱音もきっちりと揃っていますし、実に美しいアダージョです。個人的にはオーマンディのテンポが一番好きなのでどうしてもそれと比較しながらということになってしまいますが、この曲はあまり遅いテンポだとサン=サーンスらしい軽快さが消えてしまうのです。中村氏の指揮はそのギリギリのところで軽快さも維持していますし、全体的には素晴らしいバランスで音楽が鳴り響きます。このオーケストラも上手くなったものです。創設当時から地元ですから聞いていますが、最初は聴けたもんではありませんでした。ネットに第11回定期のフィデリオ序曲がアップされていますが、冒頭からホルンが不安定な音でびっくりしてしまいます。
さて、第1楽章の第2部のオルガンの登場の場面はゾクゾクしました。このホールのオルガンはいつ聴いても包み込む感じのオルガンの響きに酔いしれてしまいます。オルガンの響きに乗って弦が全体で歌うのですが、本当に美しいです。中間部の練習番号Sの4章節目は圧巻で、1stVnと2nd Vnだけの掛け合いがあり、ある指揮者曰く、「この曲はこの部分が最高なんだ」そうです。確かに、シーンと静まり返った中での、この部分はなんとも言えなく美しく響きます。天使の降臨のようですな。
第2楽章は前半は、アレグロ・モデラートでテンポも上がり、情熱的な主部では弦楽器群と管楽器群が激しいバトルを繰り広げます。音楽に流れがあり素晴らしい演奏です。中間部のプレストの木管とピアノがめまぐるしく活躍するのですが、ややピアノの音が聴きとりにくいところがあったのは残念です。オケにこれだけピアノが目立つ曲はロマン派では珍しいですですからねぇ。
第2部に入ってからのオルガンと4手連弾のピアノの部分でもそのことがいえます。まあ、この曲ではオルガンはソリストの名前がクレジットされますがピアノは残念ながらオケの一員としての位置づけです。コラール風のメロディにカノン風の技法が重なってまさにサン=サーンスの華麗な音楽が花開きます。指揮者は第2部のテンポはやや早めの進捗で盛大にオケを鳴らしています。ティンパニのアタックも強く、ここでも硬めのマレットを使っていました。最後はオルガンとオーケストラが一体となり、壮麗な音の大伽藍の中で全曲が締めくくられます。最後のクライマックスもすばらしいものです。生で聴いていると、 「ブラヴォー」と叫びたくなる部分で、今回もややフライイング気味に拍手が始まったのがちょっと残念でした。
カメラが何台か入っていたのでいずれYouTubeに音源がアップされるかもしれませんが、20年の成長の跡が伺える演奏が確認できるでしょう。
第10回でもオルガンは吉田文さんが担当していました。
アンコールはフランクの「天使の糧」が演奏されました。元々はミサ曲Op.12の中の一曲です。もともとは、オルガン、チェロ、ハープの伴奏にテノールの独唱と言う編成の曲ですが、ここではオーケストラ編曲されたもので演奏されました。もちろんオルガンも参加していました。