東海学園交響楽団
第39回定期演奏会
プログラム
ベートーヴェン/ピアノコンチェルト3番
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」
アンコール
エルガー/威風堂々第1番
指揮、ピアノ/下坂元潤生
演奏/東海学園交響楽団
今年度最初のコンサートでした。コロナに翻弄されて、ここ2年余りは活動停止期間があったりして十分な練習時間が確保できていなかったようです。
この東海学園交響楽団は学校法人東海学園の私立中学校・高等学校の男子校からなるオーケストラということで全員男子で構成されています。中学1年から高校2年生までが正式団員ということで活動しています。そして、5年毎に海外遠征もしているのです。最近では2019年にチェコに出かけています。進学校としても有名な学園で、中高一貫教育の中でオーケストラ部が存在し活動しています。で、代々学生がオーケストラの指揮も担当しているということです。
それだけでも珍しいのですが、今年は前半のプログラムでピアノも弾いているというところです。つまりは弾き振りを高校2年生が担当しているということになります。今回はこの大役を2年生の下坂元潤生くんが担っていました。過去のプログラム穂紐解くと、最近メキメキと頭角を現している指揮者の角田鋼亮しもこの学園の卒業生で、在学時代にはこのオーケストラの指揮者として活躍し、コンサートでは自作のピアノ協奏曲も発表しています。まあ、そういう伝統のある珍しいオーケストラといえます。
さて、YouTubには彼のピアノの演奏がアップされているのでその実力のほどがわかろうというものです。
普通弾き振りというと下のバレンボイムのような配置で演奏することが多いようです。
でも今回はこんな配置でした。
曲は違いますがこんな感じでしょう。
これくらいの巨匠たちが弾き振りをするなら分かりますが、高校2年生がベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を弾き振りです。まあ、たまげました。実はこのコンサート、売りはドヴォルザークの「新世界」でしたが小生的にはこちらの方が興味を惹かれました。なんのてらいもなく登場し、一礼するとオーケストラを見回し着席してオーケストラを指揮しだします。配置的にいってセカンドヴァイオリンやホルンセクションは指揮が見えにくいにもかかわらず、素晴らしいアンサンブルで指揮者についていきます。これは規模的に精鋭のメンバーが演奏しているのも一因でしょう。
楽譜は陽譜面台には置いてありますが、譜めくりのアシスタントはおらず、インテンポで淡々と曲を進めていきます。第二楽章のテンポなどは、自分のペースで心地よい演奏を繰り広げていきます。小生などは少々夢見心地になってしまいました。(^_^;)
下手な大学のオーケストラよりははるかに充実した演奏を堪能することができました。
後半は「新世界」です。定番の曲目のようですでにこのオケの定期で三度目の登場です。練習がつけやすいということもあるのでしょう。毎年メンバーが入れ替わっていきますから5年経てば知っている学生はいなくなるわけです。前回は2014年の定期で取り上げていました。
こちらも一応譜面台に楽譜は用意されていました。最初はちゃんと譜面をめくりながら指揮をしていましたが、次第に譜面をめくるのをやめ棒振りに集中していきました。こちらも早めのインテンポでの演奏です。新世界はこのテンポで演奏してもテニオハがはっきりしていれば曲になります。
ただし、こちらは練習不足が明らかに露呈してしまい、弦の序奏は問題なかったのですが、冒頭のホルンの和音から乱れてしまいます。なかなかソロ楽器の演奏が決まらず、管楽器は音は飛んだり、ひっくり返ったりで混乱しそうですが、早めのインテンポなのでグイグイオケを引っ張っていきます。大きく乱れることはありません。
第二楽章はラールゴでちよっと遅めのテンポが心配でしたが、ここでもきっちり指揮棒で店舗を合わせていきますから、音の不安定なホルンなんか何のその、無事乗り切っていきます。逆に第三楽章は抑え気味のテンポで音楽を壊しません。そして、おきまりのように第四楽章へはアタッカでそのままなだれ込むように突き進んでいきます。大きな破綻はなく武士コーダまでたどり着きました。この指揮者の統率力は見事でした。
この後全員でアンコールの「威風堂々第一番」が演奏されました。男子学生だけのオーケストラも珍しいので、会場には若い女性がたくさん来場していました。久しぶりの会場に溢れる観客にこのままコロナが治ってほしいもまだと感じた演奏会でした。来年は血や胃コフスキーの交響曲第5番がメインということですが、金管には頑張ってもらいたいものです。