ラインスドルフのワーグナー | geezenstacの森

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ラインスドルフのワーグナー

 

曲目/

ワーグナー/

1.歌劇「楽劇「ワルキューレ」-第2幕前奏曲 *   2:05

2.ワルキューレの騎行 - 魔の炎の音楽(編曲:エーリヒ・ラインスドルフ) 15:17

3.歌劇「ローエングリン」 - 第3幕への前奏曲    3:00

4.歌劇「タンホイザー」 - 序曲    13:04

5.歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 - 「徒弟たちの踊りと親方達の入場    5:54

6.歌劇「神々の黄昏」 - 「ジークフリートの葬送行進曲」    7:22

7.モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲**   5:48

8.ポンキェルリ/歌劇「ジョコンダ」−時の踊り   8:21

 

指揮/エーリッヒ・ラインスドルフ

演奏/ロンドン交響楽団*

  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団**

  コンサート・アーツ交響楽団

録音/1957/11/01,03 ロス・アンジェルス

   1961*、**

 

Documents 600237-16

 

 
 このCDは30枚組の「the Great Conductors 30」という2015年に発売されたボックスセットの中に収録されている一枚です。で、不思議なものでこのCDの元となっているレコードも2015年に入手していました。
 
 
 レコード時代のジャケットはこちらのデザインで、手元にあるのは発売元が「東京芝浦電機」となっているので時代を感じさせます。1957年の録音ですから、ステレオ盤も存在しますが、これはモノラルで発売された物(2LC-31)です。その時の記事ではコンサート・アーツ交響楽団はラインスドルフが組織したと書きましたが、どうも実際はレナード・スラットキンの父親のフェリックス・スラットキンが組織したオーケストラらしいという記事も散見されます。ただ、そこでの表記は「コンサート・アーツ管弦楽団」となっていて、ここでの「concert arts syhmpony orchestra」という表記とは違います。ここら辺の経緯は複雑なようで、カーメン・ドラゴンが演奏したハリウッド・ボウル交響楽団も含めて混乱があるようです。詳しくはこちらをご覧ください。
 
 それはさておき、指揮者の中の指揮者と称賛され、作曲家の弁護人とまで言われた大指揮者エーリヒ・ラインスドルフですが、日本での評価はさほど高いとは言えないことが惜しい限りです。けれんみの無い音楽作り、またオーケストラビルダーとしても知られたラインスドルフは独墺系中心に幅広いレパートリーを誇りますが、1957年にメトロポリタン歌劇場に復帰した彼は、ディミトリ・ミトロプーロスと2人体制で上演を盛り上げます。この時期のラインスドルフはEMI系のレーベルにステレオでセッション録音を行っており、米キャピトルに、ロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団とドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』、チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』、ドビュッシーの『海』、ラヴェルの『ダフニスとクロエ』第2組曲、リヒャルト・シュトラウスの『死と変容』、ワーグナーのオペラ『タンホイザー』の「ヴェヌスベルクの音楽」、そして臨時編成、もしくは覆面オーケストラの「コンサート・アーツ交響楽団」とワーグナー管弦楽曲集、リムスキー=コルサコフの『シェエラザード』など有名管弦楽曲を録音、英COLUMBIAには、フィルハーモニア管弦楽団を指揮してリヒャルト・シュトラウスの管弦楽作品集、ブラームスの交響曲第3番、序曲集を、独ELECTROLAにはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とシューベルトのミサ曲第6番を録音しています。
 
 ここではそのラインスドルフがキャピトルに録音したワーグナーものを中心に編集されています。ただ、最初の一曲目はデッカに録音した「ワルキューレ」第2幕前奏曲です。どうもこれは彼がデッカに録音した「ワルキューレ」全曲盤から抜き出したものではないかと思われます。1961年の録音ですが、曲はやや唐突な終わり方をします。

 

 

2曲目は「ワルキューレ」から「ワルキューレの騎行」と「魔の炎の音楽」で、ここからはキャピトル原盤のコンサート・アーツoとの1958年録音となります。その「ワルキューレの騎行」はショルティ/VPOによる全曲盤のような迫力には及ばないものの、速めのテンポで颯爽とした演奏は、どこか清々しさを感じます。そして「魔の炎の音楽」も速めのテンポながら情感たっぷりの演奏で、予想以上に素晴らしい音楽を聴かせてくれます。初期ステレオではありますが、キャピトルの優秀な「フル・ディメンション方式の録音も大きく寄与しているところがあります。なを、キャピトルは1950年代当初はデッカと提携していました。1953年から1955年にかけては、のちに有名になるジョン・カルショーがデッカから出向、アドバイザー的な立場でクラシック・レパートリーの構築を手伝ってもいます。わずか2年ですが、このカルショーの存在がデッカツリーとの近似性を感じさせます。

 

 

 「ローエングリン」第3幕前奏曲は、ここでもキビキビとした音楽を聞かせてくれますので、爽快感に満ち満ちた気分になることができます。

 

 

 「タンホイザー」序曲は、やや速めではありますけれども、たっぷりとオーケストラを鳴らしています。98名を要する陣容でしたからサウンドも厚く、アンサンブルも見事で、この長い序曲でも聴き応えたっぷりです。

 

 

 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から「徒弟たちの踊りと親方達の入場」はこれを聴いていると、コンサート・ピースの演奏というよりはオペラの一部分を聞いている気分になります。舞台の情景が目に浮かぶようで、やはりオペラ指揮者なんだなぁと思えてしまいます。この音源はレコードから拾っています。

 

 

 「神々の黄昏」から「ジークフリートの葬送行進曲」はやや速めのテンポでちょっと即物的に音楽を進めて行きます。そういう部分では音楽への感情移入がついていけない部分もあり、意外に面白くなかったのがこの曲です。金管の響きもやや安っぽいものとなっていて、オペラを演奏し慣れていないなぁと感じてしまいました。

 

 

 本来のレコードとしては以上なんですが、このCDにはさらに余白に2曲収録されています。最初がモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」序曲です。VPOとの1961年録音と記されています。しかし、ウィーンフィルとのこんな録音は存在しません。多分1957年録音の全曲版からのピックアップでしょう。抜粋版としてのレコードが1961年に発売されていますからその音源を使ったのかもしれません。

 

 

 二番目がポンキエッリの「ジョコンダ」から「時の踊り」です。再びコンサート・アーツ交響楽団との演奏で、1958年の録音と記されています。これは、前半はなんとも愛想のない音楽ですが、後半の賑やかな音楽になると急に活き活きとしてきます。

どうもラインスドルフという指揮者はゆったりとしたテンポの曲は苦手みたいです。