ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番/レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」(田中希代子/NHK交響楽 | geezenstacの森

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ナクソス・ミュージックライブラリー

田中希代子のベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番

レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」

 

曲目/

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op. 58

1. Allegro moderato 17:42

2. Andante con moto 04:54

3. Rondo: Vivace 09:49

4.レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」* 14:53 

 

ピアノ/田中希代子

指揮/岩城宏之

演奏/NHK交響楽団

マスタリング/石井 亘 (音響ハウス)

録音: 1966/04/13, オオサカフェスティヴァル・ホール

   1966/04/04 東京文化会館

 

 

 田中希代子さんは1932年2月5化に生まれ、1996年2月26日になくなっています。今日はその命日ということもありこの録音を取り上げています。

 

 この音源はパッケージとしては販売されていません。小生の住む愛知県の件図書館ではこの音源である「ナクソス・ミュージックライブラリー」を視聴することができます。そこでの視聴を元にこの記事を書いています。なを、この音源は「ナクソス・ミュージックライブラリー(AAC/128kbps)」と「e-onkyo music」で聴くことができます。「e-onkyo music」は「flac 96,192/24bit、wav96,192/24bit」のフォーマットです。

 

 ただし、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番はそれ以前にも一度CD化されています。1987年にアダム・エースというところから第5番「皇帝」とカップリングされて発売されていました。その時のマスタリングはどんなものかわかりませんが、このナクソスのCD化の時の経緯はこちらで知ることができます

 

 それによると今回は6mmテープをスチューダーのA820テープレコーダーを使い2トラック/ステレオ・データを読み取っています。

 

スチューダーのテープデッキ「A820」

 

経年変化で劣化し剥離したテープ

 

 さて、田中希代子さん(1932~1996)は、フランス留学を経て、数々の国際コンクールで日本人初入賞を果たした後、世界的な活躍をしたピアニストです。難病の膠原病によって全盛期での引退を余儀なくされた(その後は教育に専念)ため、彼女の活動期間は残念ながら長くはありませんでしたが、この録音はその間に残された貴重なもので、発病の前年、日本に一時帰国した際の演奏会のライブです。この時代にこれほどの水準で、これほど感動的な演奏を成し遂げていた日本人がいたことは、もっともっと知られてもよいのではないでしょうか。この音源はNHKのラジオ放送のものがマスターで、冒頭には、当時のラジオ番組のアナウンサーの紹介部分も合わせて収録されています。この部分で当時の再生レベル合わせの信号が左右、中央と流れます。そういえば昔はみんなこういう仕様で放送されていましたなぁ。

 

 岩城宏之氏はベートーヴェンの交響曲全集はセッション、ライブともに残していますが、協奏曲のセッションはこのしていません。それだけに貴重な音源です。また確認したわけではありませなが、この当時田中千香士氏はすでにN響のコンサートマスターに就任していたはずですから、降り番でない限り共演していることになります。

 

 ピアノは淡々と弾きだすスタイリッシュな演奏ながら、軽やかによく動く指はさすがフランスの流れを組んでいるなあと感じます。それに対して岩城氏は当時のN響の性格のままのドイツ的はどっしりとした響でバックを支えています。それでは違和感はあるかと言われればそんなことはありません。非常に純度の高いレベルの演奏が繰り広げられています。ここで取り上げようという気になったのもそんなところにあります。

 

 

 この第二楽章は囁くような響きが特徴的です。日本人で初めてショパンコンクールに入賞したピアニストでもある田中さんはリリシズム溢れたタッチで音楽を紡いでいます。

 

 

 この第三楽章では指揮者との丁々発止のやりとりが聴き取れます。久しぶりに充実した協奏曲第4番を聴くことができました。

 

 

 その田中希代子さんの人となりを知る映像がYouTubuにありましたので貼り付けておきます。余談ですが、この映像でNHK交響楽団の元コンサートマスターの田中千香士氏がこの田中希代子さんの弟だったことを初めて知りました。

 

姉:田中希代子(1932-1996)、弟:千香士(1939-2009)

 

 

 さて、もう一曲はレスピーギの「ローマの噴水」です。こちらはフェスティバルホールの前の録音になります。4日と5日に演奏されていますが、NHKは大抵初日に収録しますからここではデータを4日としています。実際はこの音源データには日にちの記載はありません。

 

 レスピーギの「ローマ三部作」の中でも多分一番演奏機会の少ない作品ではないでしょうか。まあ、三部作の一番最初に作曲された作品ということもあるのでしょう。

 

 実際には4箇所の噴水を1日かけて巡るという時間的経緯を盛り込んだ作品ということで結構大編成のオーケストレーションがなされています。ただ、最後の「メディチ家の噴水」で夜の帳が下りるのでひっそりとして終わってしまうのは何か物足りなさを感じてしまいますわな。

 

 岩城宏之は「ローマの松」としては2種類の音源が残されていますが、「ローマの噴水」はこの録音だけでしょう。1960年代としても日本で最高のオーケストラをドライブしての演奏で、見事というほかはありません。