フィエルスタッドのグリーグ
曲目/グリーグ
劇音楽《ペール・ギュント》
1.前奏曲(第1曲) 5:16
2.朝の気分(第13曲) 4:39
3.オーセの死(第12曲) 4:33
4.アニトラの踊り(第16曲) 3:34
5.山の魔王の宮殿にて(第7曲) 2:47
6.イングリッドの誘拐と嘆き(第4曲) 3:54
7.アラビアの踊り(第15曲) 4:45
8ペール・ギュントの帰郷(第19曲) 2:40
9.ソルヴェグの歌(第11曲) 5:55
10.山の魔王の娘の踊り(第8曲) 2:00
ピアノ協奏曲イ短調*
1.Allegro Molto Moderato 12:46
2. Adagio 6:05
3. Allegro Moderato Molto E Marcato 10:28
ピアノ/クリフォード・カーゾン
指揮/エイフェン・フィエルスタッド
演奏/ロンドン交響楽団
録音/1958/02/17−19、1959/06/22,23
キングスウェィホール、ロンドン
P:クリストファー・レイバーン、エリック・スミス
マイケル・ブレムナー、ジョン・カルショー*
E:ゴードン・パリー、アラン・リーヴ
シリル・ウィンデバンク*
DECCA 4785437-48
レコードでも所有していますが、ここでは「DECCA SOUND THE ANALOGUE YEARS」として発売されたCDで取り上げます。このボックスセットの解説書を改めて眺めていたら、グリーグの「ペール・ギュント」はこのフィエルスタッドの演奏で収録されていたんですなぁ。デッカにはカラヤンがウィーンフィルと録音した録音も存在するのですが、それよりもこちらが選ばれています。でもって、グリーグのピアノ協奏曲はこのセットには別にラドゥー・ルプーの演奏も収録されています。もっとも、こちらは「ペール・ギュント」のおまけという形でカーゾンとフィエルスタッドが共演したものが収録されています。2018年にはこの形で、「デッカ創立90周年」の【デッカ銘盤1200 The Best】という形で国内版も発売されました。
それにしても、本家のセットにこの録音がアナログ時代のメモリアルな一枚として取り上げられたのは録音データを確認していて納得しました。この2つの録音にはデッンの録音クルーの主だったメンバーが関わっているのが確認できました。プロデューサーには、クリストファー・レイバーン、エリック・スミス、マイケル・ブレムナー、ジョン・カルショーという大物が関わっています。デッカ肝いりの録音だったことが来れんらも感じられます。
さて、このCDに登場するエイフィン・フィエルスタッド(1903年5月2日– 1983年10月16日)はノルウェーの 指揮者兼ヴァイオリニストで1921年にヴァイオリニストとしてデビューしました。そして、10年後にはベルリンでクレメンス・クラウスに師事し、帰国後はオスロで指揮者としてのキャリアを開始し、第二次世界大戦後の1946年にはにはノルウェー放送管弦楽団の指揮者になりました。 1958年から1960年の間にはノルウェー国立オペラバレエ団の芸術監督に就任しています。 1962年、彼はヘルベルト・ブロムシュテットとともに、オスロフィルハーモニー管弦楽団の指揮者としてオッド・グリューナーヘッゲを引き継ぎ、戦後のノルウェー音楽史上最も影響力のある人物の1人になりました。
フィエルスタッド
このCDはそういう意味では彼の大評判といってもいいでしょう。「ペール・ギュント」は通常の組曲の形ではありません。かといって戯曲のストーリーの順番でもありません。そういう意味では組曲にはない「山の魔王の娘の踊り」を持ってきているのはなかなかユニークです。おらが国の音楽という自負があるんでしょうかねぇ。今となっては音質は最新のものにはかないませんが、このCDに詰まった音楽はデッカの最高のスタッフが作った音が感じられます。
カーゾンの引くピアノ協奏曲もスケールな演奏です。けだし、フィエルスタッドの指揮で、かなり癖のあるサポートになっています。じっくり聴くと冒頭一瞬カーゾンの声が聴こえます。テンポは中庸でオケは序盤で弦楽の刻みが強調されたりと普段あまり聴こえない音が聴こえたりします。所々金管が強く鳴り過ぎの気もしますが、これは意図したもののように感じます。
カーゾンのピアノはさほど北欧の香りのする演奏ではないかもしれませんが、端正ながら引き締まった響きのピアノと意欲的な表現のオケとのハツラツとした表現が聴かれる好演です。フィエルスターッドは随所にテンポ設定やダイナミクスに独特の解釈を見せ、最近の凡百の演奏と比べると非常にユニークで面白いものです。終盤でもダイナミックな劇性と力感に富んだスケールの大きな表情で豪快にまとめ上げています。
これは1960年前後の時代でなければ生まれなかった演奏でしょうなぁ。