村上春樹の音楽図鑑 | geezenstacの森

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村上春樹の音楽図鑑

 

著者:小西慶太

出版:ジャパンミックス

 

 

 村上春樹ワールドのBGMをすべて教えます!「風の歌を聴け」「レキシントンの幽霊」まで小説の中に流れる、ジャズ、クラシック、ロックなどすべてピックアップ、写真満載で徹底解説!村上春樹の新しい魅力に触れる音楽ガイドブック。---データベース---

 多分この本は村上春樹の作品に登場する様々な音楽についてのデータベース的な解説書の第1号なのでしょう。出版が1995年ということで、その時までの村上作品を取り上げています。この本を俯瞰すると村上作品には膨大な音楽が登場しています。まあ、自身がレコード店でアルバイトをしたり、ジャズ喫茶を経営していたということで、音楽に造詣が深いことは知っていました。まあ、クラシックからジャズ、ロックまで幅広く音楽を聞いているということでは小生と共通点も多いので居ぅ見部書くこの本を読んだ次第です。

 この本のまえがきにもありますが、作品の中では曲名やアーティスト名がストーリーの背景として書かれているだけでその音楽そのものについての言及はほとんどされていません。そんなことでデータベース的に著者の小西慶太氏が楽曲とその当時の時代背景を折り込みながら解説するというスタイルを取っています。
 
 ただ、村上氏の作品は膨大で時代的にも1960−70年台を中心にした作品群が多いので自ずから取り上げられる音楽も作品によってダブルという現象が出ています。一つひとつの作品についてはそれでもいいかもしれませんが、一冊の本となると同じアーティストがダブって登場するという減少が起きてしまい、いきおい、解説も同様に複数の箇所で同じアーティストがとうじょうすることになって、ちょっと読みにくいことになっています。
特に「ノルウェーの森」に代表されるビートルズの作品については頻繁に登場していますのであちこちにビートルズが登場します。
 
 また、氏の作品に登場するアーティストはどうしても西欧ポップミュージシャンで、日本人のポップスターは坂本九と松田聖子それにあだ名としてのマッチこと近藤真彦の三人しかいません。さらに登場するクラシックの楽曲は曲名だけしか記載がないということで、バッハならグールド、ロッシーニはアバド、とやや固定したアーティストが取り上げられています。しかし、この記述がいい加減で、「1973年のピンボール」に登場するヘンデルのリコーダー・ソナタで「ハンス・マルティン・リンデ」を紹介しているのですが、彼をヴァイオリニストと紹介しています。この時代なリコーダーの第一人者なら「フランス・ブリュッヘン」を取り上げるのが妥当と思うのですがねぇ。
 
 また、マーラーの項目ではブルーの・ワルターの演奏を取り上げていますが、彼がマーラーの交響曲全集を残していると堂々と記載されています。まあ、中西氏はポップスには造詣が深いのでしょうが、クラシックは門外漢のはずですから、ここはそのすは~時の人にチェックしてもらったほうが良かったのではないでしょうか。
 
 村上作品には下記の本が取り上げられています。

目次

風の歌を聴け
1973年のピンボール
羊をめぐる冒険
中国行きのスロウ・ボート
カンガルー日和
蛍・納屋を焼く・その他の短編
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
回転木馬のデッド・ヒート
パン屋再襲撃
ノルウェイの森〔ほか〕

 

 この本、最後にアーティスト名と曲名で索引がついています。しかし、これもいい加減でポップスのアーティストはきっちりと表示されていますが、クラシックはいい加減でグールドはちゃんと紅蓮・グールドと表記されていてそれでけんさくできますが、ポリーニはポリーニのままで掲載されていて、フルネームのマウリッツオ・ポリーニでは検索できません。バックハウスも同じです。作曲家もそうで、シューマン、ヴェルディという名前でしか検索できません。ちょっと知勇と半端という印象は拭い去れません。残念な一冊です。

 

 今では村上春樹自身が書いた「村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー)」や村上ソングズ (村上春樹翻訳ライブラリー)などがありますが未読です。