目白台サイドキック 五色の事件簿
著者 太田忠司
出版 KADOKAWA(角川文庫)
若手刑事の無藤太郎は、伝説の探偵刑事、南塚と出会って以来、不可思議な事件と縁が深い。南塚の盟友で名家の当主・北小路とも協力し、事件を解決してきたが、彼のもとに届いた一通の手紙が、新たな事件の扉を開く。それはなんと、自分は幽霊だと名乗る男からの依頼。道路のカーブで事故を起こす赤い幽霊の話を聞き、半信半疑ながらも調査を始めた無藤と北小路だが…。オカルトと本格ミステリの理想的融合!仰天の結末を御覧あれ!---データベース---
シリーズ第三作目です。色に関わる連絡短編集となっています。この作品は書き下ろしではなくwebマガジンに発表されたものを加筆、修正して出版されたものです。ですから第1巻と2巻とは趣が結構違います。何よりもここで無藤とコンビを組むのはこれまでの南塚とは違い北小路なのです。ということは、話の内容が普通の事件ではなく、どんどんオカルトチックになっていき、無藤はゴーストバスターズとして活躍するようになっています。
タイトルの「サイドキック」はフィクションに登場するキャラクターの役割の一つであり、ヒーローと行動する相棒や親友を指します。この小説ではそれは無藤の役回りですな。
サブタイトルに「五色の事件簿」とありますが、それが短編5作の色になっています。
1.死神の衣は赤色
2.復讐の薔薇は紫色
3.断罪の乙女は桃色
4.偽りの密室は黄色
5.悪夢の幻影は緑色
この色にまつわるエピソードが連作のような形で一つのストーリーに収斂していくのですが、対峙する相手は全て幽霊です。これがこれまでの刑事ものと大きく違うところです。そのために、無藤は大きく悩みもするのですが、結局は幽霊相手に事件解決に邁進していきます。
ところでエピソード2には紫色の薔薇が登場するのですが、ここで使われている「紫炎」という薔薇は残念ながら実在しません。
ちなみにあらすじの仰天の結末は…ちょっと理解に苦しみます。なんか途中の経過を一編省いたような急転直下の展開で、簡単には入れない北小路家になぜ、敵の一味が侵入しているのかという説明もありません。そんなことで端折った感が漂いますし、ここでも一人を取り逃がしています。ということは次作品の可能性があるわけですが、もうこの先は100%オカルトの方向性しかないわけで、推理小説という側面はなくなってしまうのでしょうなぁ。