第73回 正倉院展 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

第73回 正倉院展

 

 

 チケットを手に入れるまでの手続きがめんど臭い「第73回 正倉院展」ですが、多くの人が来場しているのはそれに勝る魅力がこの展覧会にあるのでしょう。まいとし、この時期に正倉院の虫干しも兼ねての展覧会ということで期間が半月ほどしかないことも、展覧会としての稀少性を高めているのでしょう。何しろここでしか鑑賞できないのですから。

 


 今年の正倉院展には、ヤコウガイなどでインコの姿を描いた四弦の楽器「 螺鈿紫檀阮咸らでんしたんのげんかん」やガラスの器「 白瑠璃高坏はくるりのたかつき」 、極彩色に彩られたお香の台座「  漆金薄絵盤うるしきんぱくえのばん 」といった至宝55点が並びます。今回の特色は豊富な文房具が出展されていることで、正倉院に唯一伝わる のほか、筆、墨、紙などを通じ、奈良時代の書の文化が紹介されています。驚いたのは筆や紙で、当時使われていた筆や、硯、そして奉納品としての紙には絵入のものが存在していたということです。それも面だけでなく裏面にもモカようが描かれているといった税が尽くされていたのです。墨書は現代でも読み解くことができる文字として残っています。欧米にはなかった墨の文化が正倉院という一級のタイムカプセルとしての博物館の中で眠り、現代にその姿を残しているというのがすごいですなぁ。

 

 当然写真撮影はできませんでしたが、ネットにアップされている写真を借用して記憶を整理してみました。

 

刻彫尺八

 

 最初に展示されていたのが楽器としての「刻彫尺八」です。竹の表皮を彫り残すことにより、唐装の女性像や樹木・草花などの文様が刻まれています。会場ではその音色も聴くことができました。鄙びたその響きは、夢枕獏氏の「陰陽師」で源博雅が吹く「葉二(はふたつ)」の音色を想像してしまいました。この笛の音と螺鈿紫檀阮咸の調べの一部が下記の映像で流れています。アクセスしてみてください。

 

 

螺鈿紫檀阮咸

 

 聖武天皇の遺愛品で、円い胴部をもつ4絃の琵琶。胴部背面はヤコウガイやタイマイ、コハクなどを象嵌した螺鈿細工で、2羽のインコが描かれています。この楽器が今年のポスターのデザインに採用されています。

 

 

金薄絵盤  

 

 蓮の花をかたどった台座。金箔や多彩な顔料を用いて、種々の文様が華麗に描かれる。仏前にそなえる香炉の台として用いられたと考えられています。

 

 

『国家珍宝帳』に記載された花鳥文様の鏡。背面には、ブドウの枝をくわえた2羽のインコが描かれています。鎌倉時代に盗難に遭い大破したそうですが、明治27年(1894)の修理の際、銀製のかすがいでつなぎ止められるなどして、現在の姿となって蘇っています。

 

絵紙  

 

 絵入りの紙です。ちょいと見難いですが、表は飛雲中を駆ける 麒麟を赤色色料で描き、裏は全面にわたり飛雲のみを白色色料で描いています。紙のベース色も何種類かあり、すでに色彩感豊かな時代であったことが偲ばれます。

 

  曝布彩絵半臂 

 

 上着の一種で、そでが短く、すそに飾りが付いています。様々な鳥や蝶の絵が、赤、青、緑、黄の諸色や金泥で華やかに描か儀式などで使われたさまが思い浮かびます。

 

 

 筆記用の毛筆。筆管は表面にまだら模様が表れている斑竹材で、上下には銀が巻かれています。ふたを伴い、尾端は象牙を用いた塔形で装飾されています。下のビデオではその制作風景が収録されています。現代でも息づいている筆です。

 

白瑠璃高坏

 

 黄色味をおびた透明ガラスの高坏です。中近東ないし地中海東岸で作られたローマンガラスもしくは初期イスラムガラスで、当初の形と光彩を今に伝えるシルクロージ伝来の逸品です。東大寺の大仏開眼会に奉納されたことが知られている。

 

 今回の3日間の旅行のメインの目的はこの正倉院展でした。1300年の歴史を有する宝物が現在も最良の状態で見ることができね貴重な展覧会です。一生に一度は訪れておいても損はないと思います。